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3/3開催【スタートアップピッチ】注目のカーボンニュートラル分野~再エネ省エネスタートアップ3社をご紹介~ イベントレポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年3月3日(木)に行われたイベント

【スタートアップピッチ】注目のカーボンニュートラル分野~再エネ省エネスタートアップ3社をご紹介~

についてレポートしていきたいと思います!

本イベントでは、最新のテクノロジーやソフトウェアを使ってカーボンニュートラル領域を変革する注目のスタートアップ3社をお招きし、ピッチをしていただきました。

・企業活動から排出されるCO2の削減を目指す最先端の取り組みに興味のある方
・ブロックチェーン技術などを活用した、最新の再エネスタートアップに興味のある方
・不動産業界のカーボンニュートラルにむけた最新の取り組みに興味のある方

に特に必見の内容となっていますので、ぜひ読んでみてください!

以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!

■1社目:アスエネ株式会社

1社目は、アスエネ  西和田 浩平様にご登壇いただきました!

<アスエネ株式会社 Founder & 代表取締役CEO 西和田 浩平様>

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・アスエネ社の事業内容

アスエネ株式会社は、企業の脱炭素をテーマにCO2ゼロのクリーン電力サービス「アスエネ」とCO2排出量見える化・削減クラウドサービス「アスゼロ」の2つのサービスを提供しています!

日本のCO2排出量は年間11億トンにのぼり、世界で5番目にCO2排出量の多い国です。そして、11億トンのうち約80%は企業活動に起因して排出されるCO2だと言われています。政府が掲げる2050年の脱炭素社会・カーボンニュートラルの実現のためには、企業から排出されるCO2を大幅に削減することが必須です。

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・サービス①:CO2ゼロのクリーン電力サービス「アスエネ」について
アスエネでは、企業に対して単なる電力ではなく、再エネを用いたCO2排出量ゼロの電力を供給しています。また、企業の電力購入先に関する情報はブロックチェーン技術を用いたトラッキングシステムを活用して、お客様の企業が地元の発電所や地域を選ぶことで、”地産地消”という企業のイメージUPやブランディングご支援を行っています。


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具体的な導入事例を紹介します。
兵庫県にある二川工業製作所では、自社で所有する複数の太陽光発電所で生産した電力をアスエネ上で売買することにより、地産地消の電力消費を実現しながら、CO2をゼロにし、さらに電力コストも以前より削減できています。

・サービス②:CO2排出量見える化・削減クラウドサービス「アスゼロ」について
CO2関連のデータ収集や排出量の算定は作業が複雑なため、カーボンニュートラルを目指す企業にとって、自社のCO2排出量を正確に把握することは容易ではありません。

アスゼロでは、このような課題を抱える企業に対し、自社のCO2排出量(Scope1*、Scope2*)だけでなく、サプライチェーンのCO2排出量(Scope3*)も含めて、全て見える化できるクラウドサービスと、企業のCO2削減に向けた実行支援を行うSX(サステナビリティトランスフォーメーション)コンサルティングサービスを組み合わせて提供しています。

*サプライチェーン排出量は、Scope1~3に分類されます。
・Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
・Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
・Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

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それでは、アスゼロの特徴を見ていきましょう!

特徴①:データをスキャンするだけで、自動で見える化
Scope1からScope3までのデータをスキャンすれば、AIを通じて自動入力できます。
特徴②:シンプルなUI・UXで業務効率化
使いやすいUI/UXで中堅企業から大企業まで簡単に操作でき業務効率化ができます。
特徴③:CO2削減もまとめておまかせ
アスゼロの最大の強みは、企業のデータ入力やCO2排出量の可視化だけでなく、シナリオ分析、削減要因分析などをふまえて、実際のCO2削減・オフセットまでをワンストップの脱炭素ソリューションを提供できる点です!
企業のCO2削減方法は様々あります。例えば、電気を再エネに変えたり、屋根に太陽光を設置したりすることで、従来の電気の使用料を減らすことができます。また、EV車やLED電球、エコフレンドリーな空調設備に切り替えることで省エネも達成することができます。

また、どうしても削減できなかった排出量はカーボンオフセットをすることで、企業のCO2排出量を完全にゼロにすることができます。
アスエネ社は、各企業に応じた最適な方法で、企業のCO2削減をワンストップで支援できる会社です。

Scope3・サプライチェーンに関するコストデータは入力が複雑で多大な工数を要するため、アスエネ社ではその部分の業務効率化をサポートしています。

現状のユーザー層としては、SDGsに対するニーズが顕在化している大企業が多いですが、中堅企業も一定数存在します。昨今は自社のみならずサプライチェーンにおけるカーボンニュートラルの達成を掲げる大企業も多いため、取引先である中堅企業がCO2削減を求められるケースが増えてきました。

ここで、アスゼロを導入している企業や提携先をご紹介します。

1社目:アグリ系東証一部上場企業
同社はアグリ・動物油脂製造事業を展開する東証一部上場企業です。面倒なExcel入力によるCO2排出量の可視化や算出作業、データ参照ソースの信頼性などの課題を解決するためにアスゼロを導入しました。その結果、COP26など世界の最新情報やベンチマーク先企業の取組状況をより正確に把握できるようになり、効率的に自社の具体的なCO2削減目標を策定することが出来ました。
2社目:農林中央金庫 (提携先)
「農林中央金庫」は投融資先のGHG排出量を50%削減する目標を掲げています。アスゼロを活用して、CO2排出量の算定や企業の最新の取り組み事例を調査しながら、農林水産業者の所得増加や日本全体の脱炭素に向けたアクションの推進を共同で行っています。

アスエネ社のサービスは、企業のCO2排出量の見える化だけでなく、その先のCO2削減の達成まで深く踏み込んで支援させている点が非常に興味深かったですね!

■2社目:Tensor Energy株式会社

2社目は、Tensor Energy 堀 ナナ様にご登壇いただきました!

<Tensor Energy株式会社 代表取締役CEO 堀 ナナ様>

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・Tensor Energyの事業内容

Tensor Energy株式会社は、再エネ発電事業者に対して「Tensorプラットフォーム」というサービスを提供しています!

「電力のGX(グリーントランスフォーメーション)とDXを低コストと低リスクで実現するテクノロジープラットフォームをつくる」というミッションを掲げ、再エネ発電所に蓄電システムを導入し、AIとIoTで発電所や蓄電池を自動制御することで、再エネ発電量の最適化を目指しています。

まず、Tensor Energy社の主要顧客である再エネ発電事業者を取り巻く市場変化について簡単に見ていきましょう!

1.国の制度の変更
2022年4月以降、再エネの一部は固定価格買取制度(FIT)からフィード・イン・プレミアム(FIP)* 制度への移行が進められ、パワー・パーチェス・アグリーメント(PPA)** の急速な増加が見込まれます。

*FIPとは、再エネ発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促進する制度です。
**PPAとは、発電事業者と顧客(民間企業等)との間の長期相対契約のことを指します。

現在のFIT制度では、再エネ発電事業者が生産した電力は、電力会社が固定価格で20年間買い取ってくれることになっていますが、2022年4月以降、この制度からFIP制度への移行が進められていきます。この制度下において、再エネ発電事業者は買取先となる企業を自社で見つけなければなりません。


2.発電所数の増加
近年、土砂災害の被害や自然保全の流れをうけ、再エネ発電所は小型化する一方で発電所の数は大幅に増加しています。異なる地域の複数の発電所から収集したデータを一元管理し、発電量をコントロールする必要があります。


この2つの市場変化により、再エネ発電事業者の事業リスクと管理コストは上昇していきます。今後、再エネ発電事業者が事業を成り立たせていくためには、電力価格が高い時間帯に電力を売ること、計画通りに電気を安定供給すること、市場リスクをヘッジするなどが重要なファクターとなってきます。

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これらの課題に対して、「Tensorプラットフォーム」はどのような機能を提供しているのか、詳しく見ていきましょう。

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特徴①:シミュレーション機能
Tensorプラットフォームでは、発電の計画段階から様々なシナリオで発電量や経済性のシミュレーションを行い、不確実性を可視化することが出来ます。
特徴②:発電所データの一元管理と共有
発電所のスペック、各種契約の内容、投資家、需要家、保安管理、発電量等の情報を一元管理し、各ステークホルダーへの連絡や報告もプラットフォームを通じて行えます。
特徴③:発電量と市場予測
AIによる発電量と市場動向の予測によって経済性を最適化し、リスクを最小限にするための売電スケジュールを設定することが可能です。また、各売電先の企業へスケジュールを提出することもプラットフォームを通じてワンストップで行います。
事前の電力計画と実際の送電量に差が生じると、インバランスという形で再エネ発電事業者はペナルティを請求されるので、この発電量の予測システムは非常に重要な役割を果たします。
特徴④:エッジデバイスによる蓄電池管理
発電所にエッジデバイスを導入し、収集したリアルタイムデータをAIで解析することで予測精度を高めるとともに、市場動向を予測しながらの充放電オペレーションを自動化していきます。

マネタイズ方法の仕組みについては、再エネ発電事業者は、基本料金+取引手数料をTensor Energy社に支払います。
基本料金はプラットフォームに接続する再エネ発電所の大きさに応じて、月額の固定費として支払い、取引手数料は販売電力量に応じた手数料を支払います。

来月からFIT制度に代わり新制度が導入されるとのことで、「Tensorプラットフォーム」は今まさに再エネ発電事業者にとって必要不可欠なサービスではないでしょうか!

■3社目:株式会社GOYOH

3社目は、GOYOH 伊藤 幸彦様にご登壇いただきました!

<株式会社GOYOH 代表取締役CEO 伊藤 幸彦様>

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・GOYOHの事業内容

株式会社GOYOHは、「不動産から脱炭素と社会インパクト」をミッションに「EaSyGo」というサービスを提供しています!

世界の温室効果ガス排出量の50%以上は不動産と、不動産を起点とする移動や交通から発生しています。そして一例として、一般的なオフィスビルでのCO2排出量においては、不動産オーナーが把握・管理できるCO2は全体の15%程度で、その他85%はテナント企業の活動によって生じています。

カーボンニュートラルに向けた取組が世界的に進む中、不動産オーナーに対しても個人消費者やテナント企業、投資家や金融機関からSDGs/ESGへの関与を強く求められています。

GOYOH社では、このような不動産業界における気候変動対策の流れに対して、グローバルな不動産ファンドがどのような課題を抱えているかを徹底的にヒアリングし連携することで、サービス開発を進めてきました。
その中で、多くの不動産オーナーから聞かれた大きな課題として、CO2削減に関するデータの収集とテナントとの連携があります。
また、ESG活動の観点で不動産オーナーに課せられた役割は、E(環境)の一要素にあたるCO2の削減以外にも、S(社会)にあたる社会や地域への貢献、テナントとの協働やG(ガバナンス)にあたるステークホルダーとの連携、情報開示への対応、ESG戦略の策定など、多種多様な役割を果たすことを求められています。

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このような現状に対して、「EaSyGo」では不動産オーナーがテナントと協調してCO2を削減し、不動産価値を生み出すためのサービスを提供しています。

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「EaSyGo」に入力するデータは、ビルの管理運営データ、テナントに関するデータ、環境に関するデータなど様々なものがあり、それらのデータを一元化し解析することで、包括的にESGの可視化と、最適なCO2排出量を算出できます。
また、それらの情報を不動産のテナント企業と連携して、テナントの行動変容を促すことによって、CO2削減や不動産の付加価値向上に繋ぎます。

「EaSyGo」の特筆すべき点は、「行動変容」「戦略・マネジメント」の2方向から脱炭素化に向けてアプローチしていることです。

「行動変容」とは、不動産の中で起きている多種多様な消費者の活動に対して行動変容を促すことで脱炭素化を図ることを指します。例えば、消費者の移動・交通に関するデータを収集し解析した結果、移動の方法としてエコな移動手段を使用するように促したり、日々の消費生活に関するデータを解析した結果、廃棄物を減らすように行動を促したりすることができます。
「戦略・マネジメント」とは、これまで機関投資家が担ってきた部分であり、不動産を所有し設備投資をすることで、脱炭素化を図って行くことを指します。

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この2方向のアプローチによって、テナントが定着することで空室率が下がったり、ブラント価値が向上することで賃料が上昇するなど、不動産としての付加価値が向上することが想定されます。
そうなれば、主要顧客である不動産ファンドには大きなリターンが発生します。グローバルな不動産ファンドが所有する企業不動産の価値は合計で4300兆円(*GOYOH社の推計)にのぼりますので、1%の不動産価値の上昇でもかなりのリターンが得られます。

GOYOH社の強みは、個々の不動産ではなく、世界的な不動産ファンドに対してサービスを提供し、不動産資産のポートフォリオ運用のツールとして活用してもらっている点です。そのため、一顧客の導入により、そのファンドが投資する数百件の物件にシステムを導入することが出来るので、一気に市場にサービスを展開していくことが可能です。

不動産オーナーに対するカーボンニュートラルの要求が強まる中、今後さらに多くのビルに「EaSyGo」システムが導入される未来が楽しみです!

まとめ

今回は、カーボンニュートラル分野で代表的な3社のお話しをお聞きしました。

世界的に脱炭素社会に向けた取組が加速する中、日本においても国の政策が変化し、それに合わせて様々なスタートアップが誕生していることが確認できました。
CO2排出量の削減は人類共通の課題であり、グローバルレベルで解決しなければならない急務の課題です。今日紹介したサービスは全て、企業活動によるCO2を削減するためのサービスでしたが、我々も一人ひとりがこの問題を意識して日々の生活を送っていく必要があるでしょう!

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

次回は【スタートアップピッチ】世界で広がるSDGs
~様々な”ロス”をテクノロジーで解決する取組をご紹介~についてのレポートです!

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