1/11開催【先進セミナー】世界最大のDeep Techカンファレンスで見えてきた最先端のトレンドとは イベントレポート
皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2021年1月11日(火)に行われたイベント
【先進セミナー】世界最大のDeep Techカンファレンスで見えてきた最先端のトレンドとは
についてレポートしていきたいと思います!
本イベントでは、一見分かりづらく足を踏み入れにくい「Deep Tech」について、
先日パリで開催された世界最大のDeep Techカンファレンスに参加されたRouteX Inc. COO 塚尾様に、その内容と世界最先端のDeep Techトレンドについてご紹介していただきました。
また、イベントの冒頭ではDeep Techの産業化と市場化を促進するためのグローバルなエコシステムを構築しているHello Tomorrowの日本拠点、Hello Tomorrow Japan様にもご登壇いただき、その取組みについてご紹介いただきました。
・そもそもDeep Techとはどういうものなのか知りたい方
・Deep Techが起こす世界への大きな影響について興味のある方
に特に必見の内容となっておりますので、ぜひご確認ください!
それでは本イベントの内容をご紹介します!
■Hello Tomorrow Japanの紹介/
Diane DESCHAMPS様、Jean-Dominique FRANCOIS様
最初に、Hello Tomorrow Japanについて
Hello Tomorrow Japan Advisor Diane DESCHAMPS様、
Project Manager Jean-Dominique FRANCOIS様にご紹介いただきました!
<Hello Tomorrow Japan Advisor Diane DESCHAMPS様>
<Hello Tomorrow Japan Project Manager Jean-Dominique FRANCOIS様>
・Hello Tomorrowとは
人工知能、ブロックチェーン、ゲノム編集、3Dプリント…
これらの新技術は「Deep Tech」と呼ばれ、今後20年のイノベーションの中心となることが予想されています。
Hello Tomorrowは、このようなDeep Techにおける技術革新の産業化と市場化を促進し、その影響力を高めるためのグローバルなエコシステムを構築することを目的として2004年に設立されました。
現在、8カ国に拠点を持っており、Hello Tomorrow Global Challengeというピッチコンテストを通じて毎年約5000社もの新たなスタートアップを集め、220以上の大学やアクセラレータのネットワークを構築しています。
既に多くのイベントを通じて数千社ものスタートアップ、投資家、企業を繋ぎ、10社を超える大企業の変革とコラボレーションを推進してきました。
・Hello Tomorrow Japanの活動
Hello Tomorrow Japanが行っている活動は、主に以下の2つです。
①日本のDeep TechコミュニティをHello Tomorrowのグローバルネットワークに連携
具体的な活動としては、
・日本のDeep Techスタートアップを世界のネットワークに紹介
・世界中のDeep Techスタートアップを日本の企業、起業家、研究者、投資家に紹介
が挙げられます。
②日本の研究シーンを刺激して、未来の革新的テクノロジーの育成を支援
具体的な活動としては、
・海外のDeep Tech起業家、投資家、インキュベータと見識を共有、交換する機会を提供することにより、日本と世界のDeep Techエコシステム間における国際的なコラボレーションを促進
・大企業、大学、政府機関と共同し、初期段階のDeep Techスタートアップをサポートする国際的なDeep Techエコシステムを構築
が挙げられます。
昨年度はコロナの影響もあり、活発に動くことは制限されてしまいましたが、今後はより多くのイベントを開催し、多くの日本の技術を世界に羽ばたかせていく構想を描いているそうです。
■世界最大のDeep Techカンファレンスで見えてきた最先端のトレンドとは/
RouteX Inc. COO 塚尾 昌浩様
ここから本セミナーのメインである世界最大のDeeo Techカンファレンスで見えてきた最先端のトレンドについて、RouteX Inc. COO 塚尾 昌浩様にご登壇いただきました!
<RouteX Inc. COO 塚尾 昌浩様>
以下、4つのセクションに分けてご紹介します。
1.Deep Tech/ Hello Tomorrowとは?
・Deep Techとは
Deep Techは、「破壊的ソリューションを生み出すための、独創的かつ複製困難であり特許化された最先端の科学技術を用いたソリューションを持つスタートアップ」
と定義されています。
元々は、20世紀後半より航空宇宙分野にて”Deep Tech”という言葉が使用され始めました。
その後、2011年パリにてHello Tomorrowが設立され、2017年にBCGとパートナーシップを組み、そこでDeep Techが事業形態としてのスタートアップに再定義された歴史があります。
よく勘違いされやすいのですが、
「Deep Tech」はテクノロジー(技術)ではなく、「ソリューション」です。
これはどういうことなのか?
SPACEX社のロケットを例に挙げて見てみましょう。
SPACEX社では、「材料技術」、「ソフトウェア」、「垂直統合型開発」の3つの技術を組み合わせることによって、安価で再利用可能なロケットというソリューションを作り出しました。
このように、複数の技術を組み合わせて作られたソリューションが、「Deep Tech」なのです。
またDeep Techは、各産業に合わせてカテゴリーごとに分けられています。
2021年のHello Tomorrowの取組みでは、モビリティ、製薬、宇宙、食品&農業、データ&AIなど全部で10の産業分野にカテゴライズされていました。
・Hello Tomorrowについて
しかし、Deep Techは技術・資本・市場の3つの領域において以下のようにさまざまな課題を抱えています。
技術:先進技術の開発が必要
資本:大規模な資本が必要
市場:社会実装に長い時間がかかる
このような難しい課題を抱えているDeep Techに対し、Hello Tomorrowはフランスのパリを拠点に、ヨーロッパのDeep Techの促進を包括的にサポートしています。
具体的な活動は、大きく分けて5つあります。
1 Global Challenge
各分野における年次のコンペティション
2 Deep Tech Pioneer
将来性のあるDeep Techの独自の認証制度
3 Global Summit
エコシステムの全プレイヤーを一同に集める年次のカンファレンス
4 Investor Day
投資家とDeep Techによるミートアップイベント。パリ・Station Fにて開催
5 Corporate Challenge
コーポレートの支援によるコンペティション
特に3つ目のGlobal Summitでは、エコシステムの全プレイヤーが集まるため多方面の角度から物事が考えられます。
そして、そこでの議論が今後の世界のトレンドとして非常に注目されています。
今回Global Summitが行われた実際の会場の様子についても、写真を見ながら共有していただきました。
・Deep Techにおけるスタートアップ・エコシステム
「スタートアップ・エコシステム」というのは、スタートアップに関わる起業家や社員だけでなく、投資家や政府関係者、大学関係者などが有機的なコミュニティを持ちながらネットワーク構造を持つことを言いますが、Deep Techの分野で言うと、
・技術かつ人材の源泉である大学、学術機関が重要
・従来の資金提供のスキームが適用できない可能性がある
といった特徴があります。
この特徴を踏まえた上で、ヨーロッパにおけるDeep Techエコシステムについて解説していただきました。
2.ヨーロッパにおけるDeep Techトレンド
・ 政府主導でのエコシステム構築、”Scale Up”に対する注力
Deep Techの中心が大学で動いているアメリカに比べて、ヨーロッパでは、エコシステムの未発達によって優秀な技術系人材がアメリカへ流出してしまっている課題を抱えています。
そのため、政府の介入によって人材を固定化する活動がされています。
具体的には、国家主導のファンドによって特にシード〜アーリー期における資金を充実させ始めているのです。
また、行き来が自由であるEUの強みを活かし、各国を競争させることによってヨーロッパのエコシステムを活性化させています。
つまり、ヨーロッパのDeep Techにおける最新のトレンドとしては「政府が主導権を握っている」と言えます。
実際に、Global Summitは政府がヨーロッパでどのようにスタートアップを成長させるのかを示す政府方針発信の場としても利用されています。
・ Climate Techに対する注目
Deep Techの中でも、今回注目されていたのがClimate Tech分野です。
実際に、会場の中で最も訪れる人が多く注目されていたのがこのセッションでした。
Climate Techへの注目は、2016年にビル・ゲイツが設立した「Breakthrogh Energy」を皮切りに、2021年には約10億ドルのアクセラプログラム「Catalyst Program」にEUが参画したことで高まりつつあります。
またイギリスを議長国としたCOP26も開催されました。
もともと再生エネルギーに注力しているEU・イギリスにおいては、Climate Techを推進する動きが非常に活発なのです。
その中でも特に人気だったセッションのトレンドの内容についてご紹介します。
トレンド①:電動車普及を目指したバッテリー技術
現在の二次電池の中心であるリチウムでは数ヶ月単位での蓄電は不可。
長期間で蓄電できる技術への需要が高まっており、別材料・機構の利用による新規技術が求められている。
トレンド②:核融合による発電
カーボンニュートラルに大きく寄与する。
核融合発電はさまざまな技術の複合体、半導体産業やヘルスケアへの横展開が期待されている。
トレンド③:脱炭素化に向けた方向づけ
二酸化炭素の直接捕捉や再生エネルギーによる水素生産、長期間のエネルギーの貯蔵などが触れられていた。
3.各分野におけるトレンド
次に、どのようなソリューションがDeep Techカンファレンスで輩出されていたのか、注目すべき会社を挙げて紹介していただきました。
・Atrant 3D Nanosystem社/3D Printing
今回のGlobal Summitでグランプリを受賞されたソリューションです。
デンマークを拠点とした会社で、半導体を3Dプリンティングによって製造することでコスト削減を実現しています。
2021年からはNASAと連携し、無重力空間かつ小さなスペースで半導体製造をするための開発を行っています。
・RepAir Carbon Capture社/CO2 Capturing
燃料電池技術を応用した電気化学的手法を用いたCO2捕捉技術を開発しています。
今回のGlobal Summitではファイナリストに選出されていました。
・C12 Quantum electronics社/Quantum Computing
独自のカーボンナノチューブを用いることで欠陥の少ない量子コンピューティングを実現します。
高純度の材料利用と量子ビットとICチップを別個に作成する技術によって大量生産を実現できる可能性を秘めています。
他にも、まだまだ開発が必要ですが非常に夢のあるものから、社会実装まであと一歩のところまで開発されているもの等、大きな期待が持てるソリューションが紹介されていました。
4.まとめ・今後の期待
最後に、本イベントのまとめと考察についてお話していただきました。
・各エコシステムにおける「力学」の把握
Deep Techにおいては、アメリカやヨーロッパ、他の国々でのトレンドを理解しておくことが非常に重要です。
なぜなら、技術・資本・市場に対して何らかの大きな力学がかかった場合に一気に進む可能性があるからです。
そして、日本においてもそのトレンドがどのようであるのかを理解することも非常に重要です。
・コーポレート(企業側)との連携による事業分野の横展開
連続的なDeep Tech創出のためには、複数技術を掛け合わせられる環境が求められます。
ただし、技術の応用範囲は一般的には見えづらいため、Global Summitに見られるようにDeep Techの技術者と企業がアイディアを持ち寄り、課題解決を加速させる活動が必要です。
Q&Aセッション
Q. Deep Techの技術の目利きに限界を感じるが、どのようにやったら良いか。
A. 1. 今後Deep Tech自体が解決しうる課題は、地球規模で解決しなければいけない課題である可能性が非常に高いので、そのような課題解決に対しての技術を目利きしていく、2. 各Deep Techの方にアイデアを求める、という2つのことが重要だと思います。
Q. トレンドとなっているメタバースなどの新技術とDeep Techとの関わりについてどう思うか。
A. 現在トレンドとなっているメタバースやVRは企業側からの発信ですが、それらの企業がDeepTechに耳を傾けることによって、企業側の技術を利用した新たなソリューションが生まれるのではないかと思っています。
Q. 企業にとって大学や研究機関との連携が重要になると理解したが、大学と企業の橋渡しをしてくれるところはあるか。
A. 日本では研究室レベルでの連携、大学発のVCや産業技術総合研究所、国の機関などと連携できます。
ちなみにHello Tomorrowは各大学と連携しています。
Q. 日本ではDeep Techの理解者がまだまだ少なく、資金調達が難しい。
どうしたら良いか。
A. 確かに時間がかかることだとは思いますが、会話の中でビジョンを共有していくことが重要です。
まとめ
今回は、先日パリで行われたばかりのカンファレンスをもとに、
世界最先端のDeep Techトレンドのお話をお聞きしました。
18世紀の産業革命から、21世紀の情報技術革命、そして今後はDeep Techによる革命が来るのではないかと言われています。
これまで技術革新を起こすには、何十年という期間を要しました。
しかし、Deep Techは数ヶ月、数週間という期間で革新を起こします。
そして、それが世界に大きな影響を与えます。
変化が早く、大きな時代の流れに乗っていくためにも、私たちは世界のDeep Techトレンドを常に意識する必要があると思います。
そして、その可能性に期待しましょう。
今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!
引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!
次回は、【先進セミナー】世界最先端テクノロジーを一気見せ!『CES2022』の速報レポート についてお届けします!
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