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10/5開催【スタートアップアカデミー】 「ニューラルポケットが語るIPOに至る思考と実活動とは」 イベントレポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
noteを公開して初めてのイベントレポートとなる今回は、2021年10月5日に行われた、スタートアップや起業家の方々向けのイベント

ニューラルポケットが語るIPOに至る思考と実活動とは

についてレポートしていきたいと思います!

今回は、ニューラルポケット株式会社 (以下ニューラルポケット)の取締役COOの周 涵氏 (以下周さん)にご登壇いただきました。
ニューラルポケットは創業からわずか2年7ヶ月の2020年8月にIPOを達成し、そのスピードには当時非常に大きな注目を集めました。

そこで今回、IPOをはじめとしたイグジットを目指すスタートアップの方々に向けて、周さんご自身のご経験を元に、当時どのように考え、何に注意し、どう事業運営を行ってきたか、スピード上場に至ったその思考と実活動について秘訣と道のりをたっぷりとお伺いしました!

なお今回は聞き手としてNTTドコモベンチャーズより高階、そして共催のRouteX社より塚尾さんにも本セッションに入っていただき、様々な会話を繰り広げました!

周 涵氏プロフィール

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周さんは大阪大学 経済学部を卒業後、外資系コンサルティング企業であるマッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、ニューラルポケットへ2019年に取締役COOとして参画されました。

現在は同社にて「エッジAI」を用いた各種ソリューションによる展開を推進されています。エッジAIに関しては以下詳しくご紹介させていただきます!

ニューラルポケット株式会社について

ニューラルポケットは、AIによる画像認識技術と、スマートシティ、デジタルサイネージ(広告)、ファッション等幅広い事業領域を組み合わせることによって、新たな価値を創出しています。その事業活動を通じて、同社のミッションである「世界を便利に、人々を幸せに」を実現することを目指しておられます!

ニューラルポケットのもつコア技術の一つが「エッジAI」と呼ばれる先進技術です。

エッジAIとは、端末近くにAIを搭載し、学習・推論させる技術のことをいいます (詳しくはLedge.aiの記事を参照)。従来のAIは、端末から得られる情報を全て元データとしてクラウド上に集積し、大規模なサーバー上で解析をする「クラウドAI」という形式である一方で、エッジAIではクラウドへと集積する前に一度端末自体でリアルタイムに解析処理をし、メタデータと呼ばれるコンパクトなデータへと変換します。

その結果、従来のクラウドAIと比べて通信費やサーバーの維持におけるコストを削減することができるだけでなく、解析による遅延や消費電力をも抑えることができます!

このような先端技術を用い、他社との差別化を図りつつ実績を積み重ねることで、2年7ヶ月というスピード上場を達成されたのです。

では実際に周さんはどのような思考を元に事業を推進されていったのでしょうか。そのエッセンスを探るべく、今回は以下3つのポイントから探っていきました!

1. ニューラルポケットへの参画から上場まで、どのように考え、何に注意し、実際にどう事業運営を行ってきたか。

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ニューラルポケットのIPOにおける一番の特徴はやはり2年7ヶ月という驚くべきスピードです。
ではこのスピード感を実現した思考・やるべきこととは何だったのでしょうか?

それは最初から上場を見据えること、にあったようです。

周さんは創業から1年1ヶ月後の2019年2月、前職の先輩でありニューラルポケットのCEOである重松 路威氏 (以下重松さん)からお誘いを受ける形で参画されましたが、その際はたった10名の社員数だったそう。

ただ、参画した時からすでに社内では上場に向けた準備と空気感があり、周さんとしても何も違和感なく、自身のフォーカスである事業開発、会社としての上場準備を淡々とすすめていたそうです。

周さん自身、参画した当初は「本当にそんなに早く上場できるのか」という思いは若干あったものの、重松さん自身がロジカルに有言実行する方であることを前職で理解していたこともあり、自らも「面白そうだからやってみるか!」という思考になったと話していました。

このニューラルポケットのエピソードから、

IPOというスタートアップにおけるゴールの一つを明確に定め、必要な活動を逆算し、それに向けて粛々とやるべきことをやっていく

ということが、「IPOに至る思考と実活動」のエッセンスの一つだと言えそうですね。

2. 特にAIスタートアップとしてニューラルポケットはどのような事業構想を描いてきたか

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AIにはその定義はもちろんのこと、細分化されたどのAI技術を用いるのか、どの事業領域に焦点を当てるのか、何をソリューションとして事業化するのか、などなど、応用領域が広いからこそ、事業として「何をやるのか」というのがAIスタートアップが直面する問題だと考えられます。
AIスタートアップが事業構想を描く上でどのようなことを意識すべきなのでしょうか?

まずニューラルポケットでは、AIへの入力データを画像に絞っています。
人の五感のうち目から受け取る情報が一番多く、人間の活動を代替する技術としてのAIの中でも最もインパクトが大きいであろう、ということ考えに基づいています。

一方で周さんは、AIスタートアップが陥りやすい落とし穴について語りました。
それは、「AI技術の活用自体が目的となってしまうこと」です。
「AIはあくまで手段でしかない、では本当に解決したいことは何なのか」
周さんは、常にこの考え方を念頭におきながらAIスタートアップとしての事業構想を描き、実活動へと落とし込んでいきました。

中にはAIを活用すること自体が目的となっているお客様もいらっしゃったようで、「それはニューラルポケットの目指すべき方向ではないから」と断ることもあったそうです。

これはとても重要な示唆を与えてくれていると感じます。
規模の小さなスタートアップであるほど、まずは売り上げを立てることに目が行きがちです。しかし同時に以下も意識すべきです。

会社として目指すべき方向と提供するソリューションの価値は何なのか、それがビジネスの本質である。特にAIスタートアップでは、AIを手段として解決できる課題を考える。

これが周さんの考える、AIスタートアップが事業構想時に考えておくべき心得だといえそうです。

3. 結果としてのスピードイグジットを成し遂げた成功ポイントとは。

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結果として非常に早いIPOを達成されたニューラルポケットですが、その成功ポイントはおそらく非常に多くあることでしょう。

その中で、周さんはそのポイントを2つに絞ってお話されました。

1つ目は、「やらなければいけないことを全てやる」のではなく「やらないことを決める」というスタンスのもと意思決定すること。

スタートアップは急速な事業成長を追い求めるからこそ、手をつけるべきことがある意味無限に広がってしまう、このような状態に陥ってしまったスタートアップも多いのではないでしょうか。

周さんが考える成功ポイントはその逆、やらないことを前提に考えるということです。やらないと何を失って、何を得られるのかということを常に考え、最適な意思決定をしていくことが重要だということでした。

2つ目は、「会社のカルチャーセッティング」です。
これはもしかすると意外に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、周さんいわく、成果を出す雰囲気が組織全体に浸透しているか、結果を出すことにコミットメントできる風潮があるか、これが大きな違いを生むとのこと。また成功してる経営者の方は、このカルチャーセッティングをとても重要視しているそうです。

そんなカルチャーセッティングにおいて、周さんは重要なこととして以下の2つをあげられました。

1. 結果に向かってる組織であるか
例えば仲の良い友人同士でスタートアップを立ち上げる場合があるかもしれませんが、友人関係のままでは「仲良しクラブ」になってしまい、結果を求めていく集団にはなりません。
一方で、結果を出すためだけに集中するような組織であると、ただただ殺伐としたお互いに意見を言うことのできない組織になってしまいます。

全ての社員が安心しながらも、会社として進むべき方向に向かって一丸となれる組織を作ることが重要だとのことで、実際に周さんはCOOとして結果に向かうことのできるカルチャーセッティングを意識されているとのことです。

2. 「Can Do」マインドセット
”〇〇すべき、すべきでない” という思考ではなく、何かするために「どうすればできるのか」というマインドセットを常に持ち続けられるようなカルチャー作りを意識されているとのことです。
このマインドセットを持つことで、みんなが大変なことにチャレンジできるようなマインドになります。
どんなチャレンジングな課題でも、何をしたらできるようになるかを考える。自分が何かを捨てればいいのか、それとも株主にお願いすれば良いのか、などなど。
誰かを詰めるのではなく、みんなでアイディアを出し合って、階級関係なくみんなで考える、これができる雰囲気も重要なのです、そう周さんは話されました。

まとめると、

全体を取りまとめる役員として「やらないこと決める」スタンスを持つ、そして社員が結果を出すことに真っ直ぐでいられるような社内カルチャーを作っていく

これがスピードイグジットを成し遂げた成功ポイントだということをお話されました。

Q&Aセッション

ここからは、参加者の質問の中から抜粋してご紹介していきます!

①事業として「筋」があるかどうかを見極めるポイントは?
ニューラルポケットではこれまで数々の事業を行ってきましたが、徐々に精練されて現在5つの事業を軸に経営されています。
これまで周さんは事業に対する「筋」をどのように見分けてきたのでしょうか?

周さんは以下のように話されていました。
「AIを導入したら、どう変わるのかがお客さんがイメージしやすいか、目に見えてわかるかどうかが、事業に筋があるかどうかを見極めるポイントです。」

顧客が自社のサービスを使うことで劇的に変わる、そんなサービスを提供できるかどうかというポイントが、明確に事業に筋があるかどうかを見分けるポイントだということです。

②AIという競争の激しい業界の中で競合に勝つためには?
驚くべきことに、AI業界の間では「この会社を蹴落としてやろう」のようなライバル意識は強くないそうです!
むしろ「仲間」という感覚であり、同じ方向を向いて世の中にAIを浸透させようという状況だそう。
またそもそもAIの業界は非常に大きな市場であり、小さな市場でお互いのパイを食い合う、そのような状況でもないことから、今後もどんどんと市場を拡大させていきたいという思いは各社共通しているようです。

とても大きな可能性を感じる業界ですよね!

③ニューラルポケットの今後のビジョン
非常に早いIPOに成功したニューラルポケットですが、周さんに今後の事業拡大のビジョンをお伺いしました。
「今の状況で、日本に甘んじず、海外に進出しグローバルな会社にすること」
これが現在描かれているビジョンだそうです。
日本から海外への進出に成功したAIのスタートアップはあまり例がなく、そのパイオニアとしての立ち位置を築いていきたいとのことでした。

今後もニューラルポケットの事業拡大には目が離せませんね!

まとめ

今回ニューラルポケットのCOOとしてのご経験を通じて、周さんからたくさんの事業成長のエッセンスをいただくことができました!

IPOというスタートアップにおけるゴールの一つを明確に定め、必要な活動を逆算し、それに向けて粛々とやるべきことをやっていく
会社として目指すべき方向と提供するソリューションの価値は何なのか、それがビジネスの本質である。特にAIスタートアップでは、AIを手段として解決できる課題を考える
全体を取りまとめる役員として「やらないこと決める」スタンスを持つ、そして社員が結果を出すことに真っ直ぐでいられるような社内カルチャーを作っていく

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

次回は10月12日に実施予定の「ヘルスケアスタートアップ特集」についてお伝えする予定です!乞うご期待ください!!

>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベント開催情報はこちら

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