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新規投資|RevComm

RevComm株式会社(代表取締役:會田武史・以下、RevComm)よりSeries Aラウンドの資金調達を累計15億円でクローズしたとのプレスリリースが配信されました通り、DNX Venturesは、同ラウンドに投資を実行致しました。

RevCommによる資金調達完了プレスリリース

RevCommとは?

RevCommは「コミュニケーションを再発明し、人が人を想う社会を創る」をミッションに、営業組織やコールセンター向けの音声解析AI電話「MiiTel(ミーテル)」を提供しています。

DNX Venturesはセカンド・ラウンドで出資参画。今回なぜ我々が同社への出資を行うことになったのか、その背景や経緯についてご説明していきたいと思います。まずは、マクロトレンドの中で、RevCommがどのような位置づけにいるか、弊社の視点をご紹介します。

巨大市場・営業支援領域に対して新たな情報ソースとしての「音声」を提供するRevComm

① 営業支援領域の市場性
RevCommが位置する営業支援領域は市場が巨大であり、B2B向けスタートアップが手掛ける領域として、2000年代以降、最も注目を浴びてきたといえます。この領域は、1990年代後半から2000年代にかけてSalesforceやHubspotがSFA(Salesforce Automation/営業支援)やCRM(Customer Relationship Management/顧客管理)ツールを広く普及させたところから始まります。そして、2000年代中頃以降にExact Target、 Pardot、MarketoやEloquaなどのMarketing Automationツールが誕生し、その後、2010年代に入ってからは、HighspotやSeismicなど、営業コンテンツやナレッジの効率的な共有を行えるSales Enablementツールが普及しつつあります。また、RevCommが当面のBeachheadマーケットとして位置づけているInside Sales向けのSales Enablement ツールという点では、XANT.aiが有名です。

Gartner(*1)によれば、CRM市場だけでも$48B(2018年)のマーケットサイズがあり、これはエンタブライズアプリケーションソフトウェアの全体の売上の約1/4に相当し、如何に営業支援領域が大きな市場規模かがわかります。RevCommは、厳密には、担当者の電話営業のスキルを可視化し、組織のベストプラクティスとしてチームで共有することができるツールですので、Sales Enablement系ツールとの解釈もできますが、その音声データは広くSFAやCRMにも活用でき、現にSalesforce等とはAPI連携を図っているため、我々はSales Enablement市場(Gartner(*2)によれば市場規模は2019年時点で$1.3B)に留まらない大きな市場を狙って行けるポテンシャルを有しています。

参考文献:
(*1)Market Share: Customer Experience and Relationship Management, Worldwide, 2019 (2020)
(*2)2020 Market Guide for Sales Enablement Platforms(2020)

② Conversational AIの進化と音声解析技術の向上
またRevCommが、日本語×ビジネスという領域において、音声という固有のデータを解析し、独自の自然言語処理の解析エンジンを開発していることについても高く評価しています。これまでの営業支援領域のツールは、原則、営業パーソンが入力する商談情報や顧客情報がインプットデータが中心的でした。

SFAツールでいえば、過去の商談回数、窓口の担当者、決裁者、議事メモ、先方の予算、受注確度、受注予定金額などを入力し、営業マネージャーがDeal flowの進捗状況を把握し、案件の優先順位付け、担当者への割り振りを円滑に行うことを手助けすることで、商談から受注迄のプロセスを効率化します。また、Marketing Automationツールでは、見込み客から商談化のプロセスを、CRMは受注後にアップセル・クロスセルや将来の契約更新のプロセスを効率化しますが、どれも営業担当者が入力した情報がベース、という点では変わりません。また、その後出てきたHighspotやSeismecなどのSales Enablementツールは、効率的な営業資料等の社内共有や社員研修を目指すものですが、元データは顧客管理情報や営業コンテンツ(営業資料や動画)等です。

この点、RevCommは、Sales Enablementの領域に「音声」=商談中の会話という、既存のサービスでは扱われてこなかった(正確に言うならば、議事録という形で人間が介在し、解釈してテキストに落とし込まれる形での情報ソースとしてしか扱われていなかった)情報ソースを持ち込んだというところが非常に革新的です。

また、持ち込んだだけではなく、解析を行い、有用なインサイトを顧客にフィードバックできるようになったことが重要ですが、なぜRevCommのような会社がこのタイミングで成長しているのでしょうか。この背景には、自然言語処理技術が商用レベルまで向上しつつあることが関係していると考えます。RevComm社が設立された2017年には、ちょうどGoogleの機械学習による自然言語処理精度が95%を超え(*3)、一般の英会話については、商用レベルに近づいたと言われた年であり、2017年前後から、音声解析ということを本格的に実装するスタートアップが増えました。米国ではDialpadが買収したTalkIQや、EmergentやMenlo Venturesが投資したObserve.aiなど、RevCommと似た領域のCall centerや営業組織向けVoice AIを提供しているスタートアップが出てきておりますが、日本語・ビジネス会話というセクターにおいては、RevCommが先駆けであり、ユニークなポジションニングが取れていると考えています。

参考文献:
(*3)Google’s ability to understand language is nearly equivalent to humans (2017)

RevCommに注目した理由

これまでマクロ的な話をしてきましたが、次にもう少しミクロな視点で、弊社がRevCommに注目した理由を上げたいと思います。それは、①會田社長のリーダーシップの強さと人柄、②サービスとしての付加価値の高さ、そして最後に、③強力なトラクションによる裏付け、です。

①會田社長のビジョン達成に向けた自信・信念強さと人柄
會田社長とは、一年弱に渡って意見交換を実施してきましたが、面談するたびに圧倒的な努力と思考の深さに裏付けられた自信・信念(我々はConvictionと呼びますが、絶対に成功する、成功しなければならないという信念)を感じてきました。とはいえ、過信では決してなく、様々な人の意見に耳を傾ける姿勢を持ち、”會田社長を支援したい”とついつい思ってしまう、人を巻き込む力もずば抜けています。これまでDNXはSeriesA以降のスタートアップについて、リード以外のポジションで出資してきた例はございませんでしたが、本件フォローでも出資したいとチームが思うに至った背景は、紛れもなく會田さんの人間的な魅力がそこにあったからです。

②サービスとしての付加価値の高さ
RevCommは、MiiTelを通じてクライアントに対し、営業担当者の会話の音声解析を行い、話すスピード、トーン、会話の往復数、かぶり回数、キーワード・NGワードの出現回数などを提示し、成績優秀者や平均値と比較することで、どのような営業担当者でも最適な営業トークができるように手助けをする、また自動的な議事録書き起こし機能、他社への会話の共有機能など、様々な付加価値を提供しています。ただ、その付加価値を脇におき、IP電話サービス提供者として見ても、競合他社と比較し、価格・機能面で圧倒的な優位性を持っており、それだけで十分に導入価値があるという差別性を作り出しています。我々がレファレンスを通じてお客さんへのヒアリングを行なう中でも繰り返しこの点挙げられており、彼らの付加価値の高さに圧倒的な競争優位性を感じました。

③強力なトラクションによる裏付け
RevCommは、製品の本リリース以降のMRRの成長は目を瞠るものが有りましたが、コロナ禍の逆風な中、様々なキャンペーンも駆使していきながら、その成長角度を一段と鋭角にしました。弊社の日本におけるSaaS投資経験の中でもトップレベルのトラクションです。


最後になりましたが、DNX Venturesとして、RevCommの今後のさらなる成長に向けて微力ながら貢献できればと考えております。

(監修・倉林 陽 / 文・向川 恭平)

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