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新規投資|エミウム:歯科DXプラットフォーム

この度DNX Ventures(以下、DNX)は、歯科DXプラットフォームを提供するエミウム株式会社(以下、エミウム)の総額2.6億円のシードラウンドをリードさせていただきました。本ラウンドは、DNXの他に著名なエンジェル投資家やキーオピニオンリーダーの皆様にも参画いただいています。

エミウムが解決しようとする課題とは?

日本の歯科業界は長らくDX化が進んでおらず、旧態依然とした業界慣習が未だに残っています。こうしたDX化の遅れを一因として、歯科医院や歯科技工所の方々は異口同音に、「長時間労働、業務効率改善の必要性、高離職率」といった問題を指摘しております。厚労省の研究報告などをもとにしたエミウムの推計では、2026年に歯科技工士人材の需給ギャップが約2.8万人に拡大するというデータも出ており、歯科医療を支える専門人材の不足が近い将来の問題として差し迫っています。

現在歯科領域で起きている問題として、こうした人材不足が長時間労働や離職率の増加を引き起こし、それが更なる人材不足を招き、長時間労働・離職にますます拍車がかかる、という悪循環に陥ってしまっているのが現状であり、DX化による生産性改善が急務となっております。歯科業界では、こうした課題に対するソリューションやプラットフォームが長らく整っておらず、社会課題ともいうべきこのような深刻な歯科業界のペインを解決しようと立ち上がったのがエミウムです。

エミウムが提供する「エミウム 技工センター」とは?

エミウムが提供する「エミウム 技工センター」は歯科技工物のCAD設計・デジタル製造サービスです。従来の 「電話/FAXでの発注」を「ネットでの簡単発注」に置き換えて、技工物製作における作業時間・残業時間を短縮する、歯科技工所・院内ラボ向けの外部委託サービスです。これにより、お客様はより付加価値の高い工程に専念でき、繊細な審美性や高精度な技工技術力を追求できる機会の創出ができます。

「エミウム 技工センター」は以下の通り、いくつかの特徴・強みがあります。

  1. 最短2日納品:
    オンラインで24時間注文を受付しており、最短2日での納品が可能

  2. 残業時間低減+利益率改善:
    自社で在庫を持つことなく、必要に応じて色やサイズなど多様な材料を発注できるため、内製対応するよりも売上増・コスト圧縮に繋げます。また、部分加工品を外注して、自社は付加価値の高い技工物製作や仕上げに専念することで、残業時間を減らすことが可能

  3. 高品質で適正価格:
    国内外の主要メーカーとの取引実績に基づき、適合度や品質の高い素材を提供可能。また、エミウムが多品種材料を一括で仕入れるため、適正価格を実現

  4. 強固なサポート体制:
    歯科医療・技工分野で豊富な経験を持つプロフェッショナルを採用し、カスタマーサクセス部門を開設・運営。万が一トラブルが発生した場合には自社サポートスタッフが対応し、再発防止に向けた取り組みも整備

  5. 高いセキュリティ水準を誇るシステム:
    エミウムでは、「歯科ITソリューションの企画・設計・開発・提供、および、歯科技工業界向けの設計と製造」の範囲において、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO/IEC 27001:2013」及び国内規格「JIS Q 27001:2014」の認証を取得し、国際標準規格に適合した情報セキュリティ管理体制を確立。また、厚生労働省、経済産業省および総務省が定める医療機関向けクラウド・サービスの利活用に関するガイドライン「3省2ガイドライン」に準拠した高度なセキュリティ環境を構築。

今回投資に至った経緯

弊社が今回、エミウムへの投資を決定した大きな理由は、CEOの魅力にあります。CEOの稲田さんは元DNXメンバーでもあり、過去に起業経験もあるシリアルアントレプレナーです。大学院で学んだ人工知能・コンピューターサイエンス領域の知見に加え、3Dプリンティングによるデジタル製造プラットフォームを提供するスタートアップの起業・経営経験があり、歯科領域のDX化を目指すエミウムにおいて、こうしたテクノロジーの強みや過去の起業経験は大きな武器になると確信しております。

また、稲田さんのテクノロジー領域に関する深い知見はもちろんのこと、人を惹きつける人間力、社会課題に挑戦し、業界を変革しようとする起業家マインドなど、DNXが求める起業家像を稲田さんは体現しております。元DNXメンバーということで、お互いを相互に深く理解できていたことが本件を大きく後押ししました。

エミウム稲田CEOからのコメント

この度、弊社エミウム株式会社のシードラウンドの資金調達をリード、ご支援いただき深く感謝しております。

医科・歯科領域は、世界に類を見ない超高齢社会を迎えている日本にとって、生活者一人ひとりのQOL(Quality of Life)に影響を与える重要な業界である一方で、新型コロナウイルスの猛威により医療提供体制における課題やシステム上の構造課題が浮き彫りになった背景も抱えています。そんな中でも医療従事者の方々は、日本が誇る質の高い医療サービスを継続的に提供することに奮闘されてきました。ただ、社会の高齢化が進む中、医療費が高騰し、また医師や歯科医師、看護士、介護士、歯科衛生士、歯科技工士といった医療専門職人材が慢性的に不足している状況でもあるため、日本の限られた財源と人的資源にとっても生産性の向上が益々求められています。

エミウム株式会社は、私が以前立ち上げたスタートアップやエンジニアメンバーが過去10年近くにわたって手掛けてきた第四次産業革命、最近ではIndustry 5.0と呼ばれる製造業のデジタル化・AI技術を応用し、歯科医療・歯科技工の原動力を生み出すインフラとなるプラットフォームの構築を進めております。私たちのチャレンジが業界の変革を促し、生産性の向上や効率化への取り組みを助長するきっかけとなり、日本、そして世界の歯科医療サービスのQOL向上に繋がるよう精進してまいりますので、引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

ーーエミウム株式会社 代表取締役 稲田雅彦

最後に

DX化が遅れている日本の歯科業界を変革すべく、挑戦に立ち上がったDNXの元メンバーである稲田さんの新しい船出を支援することができ、大変嬉しく思っております。日本の歯科業界は、専門医療従事者の不足や長時間労働が常態化し、DX化支援による生産性改善が急務となっております。テクノロジーへの深い知見と社会課題に立ち向かう起業家マインドを併せ持った稲田さん率いるエミウムが、業界のDX化を牽引し、歯科業界を変革してくれることを期待しております。

(文・新田修平)

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