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ゲイが相席屋へ行ったけど、想像以上にシビアだった話

自分がゲイに生まれて生き辛さを感じたことがある。

友人に好きな女性のタイプを聞かれた時。ストレートの友人に恋をした時。テレビのオネエタレントに対して父親が暴言を吐いていた時。親族に結婚を強いられる時。彼氏が出来ても周りに紹介しづらい時。保険などをパートナーと受けられない時。差別的な発言をされた時。多分挙げればキリがない。

主に思春期に感じる”ゲイの生き辛さ”だが、成長するにつれ自分の中で上手く踏ん切りをつけられるようになって、いつしかどこかへ消えていってしまうように思える。中学校・高校・大学と自分のセクシュアリティに関して悩んできた僕だが、色んな出会いや気づきを経て特に悩むことはなくなった。ゲイだ何だより、自分の就職や生活の方がよっぽど心配だ。

じゃあストレートはどうだろうか。自分がストレートに生まれたから感じる生き辛さはあるのだろうか。

#相席屋 という居酒屋がある。

”婚活応援酒場”という触れ込みで全国展開する、出会い系居酒屋だ。同性2名以上で来店すると、見知らぬ異性を店側がマッチングさせてくれるというシステムになっているのだが、特筆すべきは料金設定である。基本食べ飲み放題で、男性客は30分利用で大体1500円~2000円程度払わなければならないが、女性客は何分利用しても無料なのだ。

「自分がストレートだったら、こういう場所に通って女性との出会いを探していたのかなァ」とぼんやり考えていたのだが、ゲイの友人がどうしても行ってみたいと誘ってきた。まさかゲイの友人に誘われるとは思ってもみなかったが、ストレート男性の生き辛さを疑似体験できるかもしれないと思い、思い切って承諾した。

というわけで、ゲイ2人で相席屋に行ってみた。

今回向かったのは相席屋新宿東口店。新宿に相席屋は3店舗あったが、一番平和そうな立地だったのでココをチョイスした。(歌舞伎町店は何となく怖かった)

相席屋新宿東口店の内装やシステムはココの相席屋紹介サイトが詳しく紹介してくれているので、参考にしてほしい。


ドキドキしながら相席屋に入店。男性スタッフから店の説明を受けるが、正直緊張していて全然頭に入ってこない。「店側にゲイってバレて追い出されたらどうしよう…」と気分は絵踏みをさせられる隠れキリシタン。システムの説明が終わり、早速女性2人が座るテーブルに案内された。パッと見、化粧少し濃いめの20代前半の女性陣だった。飲み物を渡され乾杯をして会話に入る前に、女性陣に言った。

「あのーうちらゲイなんです…」

女性に興味が無いこと、単純に好奇心で来店したこと、でも楽しく女性と食事をしたいこと、もし気に入らなかったら今すぐ席替えをしてもらっても構わないことを伝えた。「ストレート男性の辛さを疑似体験したい!」とは言っても、嘘をつくのは女性に失礼だから冒頭で断りを入れようと2人で決めていた。すると…

「え~そうなんですか!?全然いいですよ!」

何やらこの女性2人、僕たちが来る2時間前くらいから相席屋に来店しており、男性客が来ないからひたすら食って飲んでを2時間していたらしい。そして出会い目的というよりはただ飯ただ酒目的らしく、「むしろゲイだったらコチラも楽」とのことだった。「そういうことなら…」と、謎の相席屋女子会(???)スタート。

結論から言うと、超楽しかった。

詳しい会話の内容は一緒に行った友達が書いているので、みんなすばるの「ライ麦畑のがけ近く」をチェックだ。

僕らが聞いた女性陣の情報はざっくりこんな感じ。

・2人とも22歳、空港関係の仕事をしている。専門学校時代の友人。
・相席屋は2・3回目。出会い目的というよりは、「やることも無いし、ただ飯ただ酒食えるし、相席屋行くか」くらいのノリで来るらしい。
・1人は相席屋の他にも街コンに行ったり合コンに行ったり出会いに積極的だが、もう1人は誘われないと出会い系イベントに行くことはない。

2人とも明るくて話しやすいし、ゲイの僕でも「可愛い!」と思う魅力的な方々だった。ちなみに女性陣に聞かれたゲイに関することはこんな感じ。

・ゲイって本当に女性無理なの?
・自分の友達にゲイだと公表している?
・ゲイだってことで悩んでることはある?
・どういう風に他のゲイと出会ってるの?
・どういう人がタイプなの?
・どうやってセックスするの?

ストレートの人にゲイのことについて聞かれて、ここまで楽に話せたのは初めてかもしれない。それもそのはず、この女性たちとはこれきりの関係だからだ。お互い普段聞かないことを聞き、話せないことを話し(もちろん最低限のマナーは守っていたよ)、言ってしまえば女性陣もゲイ陣も ”その場限りの安全な異文化交流” のようなものを思う存分楽しんだ感じだった。

他のテーブルをチラっと見てみると、盛り上がっているテーブルとそうでないテーブルの差が激しかった。男女が意気投合して一緒に二次会へ行くグループもいれば、席につくや否や会話が弾まずスマホをいじりだし、仕舞いには席替えをするグループもあった。

ちなみに相手を変えたい場合は「ちょっとお手洗い行くね」など言ってトイレへ向かうと、そこに席替えカードなるものがあって、その用紙を記入して店員に渡せば店員が穏便に席替えをしてくれるらしい。用紙がトイレにあるあたり、徹底したシステムだ。

僕らのテーブルはどうかと言ったら、(当たり前ではあるが)それはそれは盛り上がった。二丁目に来たストレート女性は二丁目のゲイに”TVで見るようなゲイまたはオネエ”を期待するが、今回もそんな空気を感じたので、二丁目勤務経験を120%活かして思う存分ゲイゲイしいエピソードで笑いを取った。もちろん相席屋なのでサービスに則って女性陣の為にボトルを入れたし、アイスもご馳走した。

あまり関心された話ではないが、個人的には”ストレート男子が苦戦するフィールドで、ゲイの自分達が大活躍している”という構造が最高に気持ちよかった。ストレート男子に引け目や嫉妬があるわけではないが、中々体験できない経験だけに興奮した。でもその”相席屋”というフィールドはあくまでストレート男子の為のものであるということは忘れてはならない。ちょっと反省している。

30分の予定だったが、気づいたら1時間半経っていた。女性陣と連絡先を交換し、かくしてゲイ2人の相席屋潜入は大成功を収めたのだった。

相席屋を後にして、ゲイ2人はドトールへ。「楽しかったね!」とホクホクしながら感想を一通り話して、最後に2人とも思った。

「ストレート男性って大変……」

ストレートの男友達から「デートの時は男が払う」とか「デートは男が女をリードする」とか聞いていたけど、実際にストレート男性の出会いの場へ行って体験してみると、予想以上に大変なことを実感した。


例えば結婚を前提にした真剣な出会いを求めているとする。まず女性と出会える場所に足を運ばなければならない。今回の相席屋、街コン、合コン、知人の紹介なんかもあり得るだろう(大体この時点で例によって男性の方がお金がかかっている)。そしてココから「自分に下心はない」「真面目な出会いを探している」ことを相手に示し、かつ自分のアピールをしなければならない。さらに相手と自分の相性を長い時間をかけて吟味し、関係を構築していく必要がある。めちゃくちゃ面倒くさい。

現時点の日本で同性婚は認められていないので、ゲイであれば「結婚しなければならない」という圧力が社会からかかり辛い。よってこういう”結婚を前提にした真剣な出会い”を求める機会は少ない。

例えば身体目的の出会いを求めているとする。ストレート社会において肉体関係になることはゲイ社会よりもハードルが高く、まず女性の警戒心を解く必要がある。出会いの場も限られており、出会い系アプリやナンパ、相席屋など後腐れの無い関係を築けるツールを上手く活用しなければならない。最悪高い金を払って風俗に行くことになる。こちらもこちらで面倒くさい。

ゲイ社会において肉体関係になることはストレート社会よりもハードルが高くない…と思う。アプリや発展場、掲示板など様々なツールが用意されているから、セックスだけならすぐ出来ることが多い。

別に「ゲイの方がいい!」って言っているわけではない。ゲイ社会においてストレート社会のような”真面目”な恋愛をすることは難しいし、ストレート社会よりも外見主義の風潮が強いし、冒頭で言った通りいろんな生き辛さがある。

またもちろん「女性は生きやすい!」って言ってるわけでもない。女友達から女性特有のデートの辛さや生活の不便さ、女性しか感じることが出来ない性差を聞いていると、こちらもこちらで「女性って本当に大変…女性じゃなくてよかった…」と思ってしまったりする。


要は皆それぞれ大変ってことだ。


月並みだけど本当にコレ。マジで。自分がゲイだっていう事実が自分の人生に大きく作用していることは確かだ。結婚が無い、育児が無い、相続が無い。思わず「自分はゲイだから」と様々な場面で悲観的に見てしまいがちだが、ゲイに限らず誰もがそういうものを持っているんじゃないか。

容姿、性格、家庭環境、例を挙げればキリがない。だから「自分は○○だから…」と卑屈になったり「アイツは○○だから…」と他人を羨むより、自分も他人も尊重してあげるのが一番なんだと思う。実際に体験できるわけじゃないからお互いの辛さを完全に理解するのは難しいけど、理解しようとする姿勢って本当に大切なんだなぁ…と今回の相席屋潜入でそれを実感できた。

ということで、ゲイが相席屋へ行ったけど、想像以上にストレ―ト社会がシビアだった話でした。

それにしても本当にいい経験だった。明るく可愛い女性陣2人と連れて行ってくれた友人には感謝である。もしこれをゲイの方が読んでいたら、(お邪魔しているという気持ちを忘れずに)一度相席屋へ足を運んで、ストレート社会のシビアな出会いの場を体験してみることをお勧めする。


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サブカルゲイ大学生の覚書き。好きなことを好きなだけ書きます。

コメント5件

>爆弾(ボム) 特に何も勉強はしてないけど、読みやすいかだけはめちゃくちゃ意識してる!でも自分の文章に全く自信ないから、そう言ってくれてちょっぴり安心した笑
すごく読みやすくて勉強(笑)になりました( ´∀`)
自分が前に行った時は満員で入れず、そういう仕組になっているんですね…!
>づんた 趣味で書き始めたけど、なかなか飲み込ませられるような文章書けない…やっぱり表現者だなぁ( ˘ω˘ )
>ミルキク君 反面教師でも何でも、何か感じていただけたなら幸いです!笑 満員ってパターンもあるんですね!今度是非再チャレンジしてみてください!
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