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日本版DMOの基礎的な役割・機能について考えてみる

さて、初回はタイトルになっている基礎的な役割と機能についてです。これらがなぜ必要なのかを書いてみたいと思います。私が感じていることなので、ご覧の方と合致しないこともあるかもしれませんが、そこはご容赦ください。

■ なぜ観光地化に取り組もうとするのか?

まずは大前提の話ですが、観光地であればこの日本版DMOに取り組もうと思うこと自体理解できるのですが、地域全体で観光に取り組むべきなのか?という議論をしていると思えないケースがあるのです。

観光立国と銘打ち、日本全国津々浦々を観光地化することを求めているのが政府の方針です。しかし、それはなぜなのでしょうか?政府が後押しするにも理由があるはずです。

■ 止まらない人口減、生産年齢人口の縮小

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出典元:観光庁「観光立国へのスキーム~地域の資源を活用してツーリズムの確立へ~

将来の止まらない人口減少、生産年齢人口が縮小していくのに対して、65歳以上の人口は変わらない。つまりは社会保障制度の維持に関わっていく問題です。税金が確保できなければ、日本国としての経営に問題が生じてしまう訳です。つまりは国としての生き残りに観光という手段を選択した訳です。現状の現状観光地として成り立っている地域だけでは足りないのでしょう。もっと増やして、観光地を増やしていくことが必要になる訳です。

■ 訪日外国人を増やし外貨を獲得して行く方向に

観光地を増やすとは言っても、国内が人口減になって行くことを考えると、別の切り口が必要になって行くことは理解できます。そこで外国人に来てもらうことを主眼に置いているのです。2016年のデータですが、右肩上がりなことが分かります。世界を見てみれば、フランスやハワイなど国自体が観光地となっている国を目指しているのです。

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出典元:観光庁「観光の現状等について」

■ では、観光地になるとはどういうことなのか?

観光地には宿泊施設、テーマパーク、景勝地などわざわざ遠出をしてでも行く要素があることが必須になります。しかし、これを簡単に作ることは容易ではありません。宿泊施設として代表されるのは温泉。地中から湧いて生まれ、傷を癒すなど長い歴史があってホテルや旅館などがある訳です。新たに観光地として取り組もうとして障壁になる一部に考えられるのは、宿泊施設がないケースです。それを国が法律を作ってまで推進しているのが「住宅宿泊事業法(民泊新法)」なのです。

参照:政府広報オンライン「民泊を利用する人も、民泊事業を始める人も
ご存じですか、新しいルール「民泊新法」」

法律を作ったとはいえ、既存の宿泊施設は異を唱え、名だたる観光地では受け入れられてはいない状況だと感じます。しかし、視点を変えると観光地化されていない地域でこの法律を使って何とか宿泊施設を増やして欲しい狙いがあることが理解できます。訪日外国人に既存の観光地ではなく、新たに生まれる地域に滞在し日本で消費して欲しいという訳です。

となると観光で大切になる目的、そうコンテンツです。ここで地域にある資源をアクテビティ化したり、文化財、農林漁業、国立公園をコンテンツ化して行く業務がDMOにはある訳です。国からの補助金メニューも凄いです。これを見たらお金を取りに組織化しようと考えるのも理解できます。ソフト面として受け入れ側の地域住民への観光地域づくりへの理解をしてもらう業務が発生します。

参照:観光庁「令和2年度予算決定概要」

■ 基礎的な役割ってどんなことを行うのか?

先ほどの流れで、DMOに登録される組織はインバウンドに取り組んで欲しいと思えてしまうのです。そうははっきり言ってなくても読み解いていけばいくほどそう感じます。外国人が来るようになれば、日本人も来るようになると考えているのではないかとも思える訳です。

しかし、運営を行う上で税金が投入され、地域のためにならなければ不要のものとなってしまいかねません。今までの直感的な観光プロモーションのあり方から科学的な検証方法を導入することが地域のためになり、国内観光客も増えていくという表面的な大義名分が必要になっていると感じます。

その上で基礎的な役割を定義していると見方も変わって来ると思います。あくまでも訪日外国人を増やすことが日本国の目的な訳ですから。

(1)「日本版DMO」を中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成

訪日外国人を増やすためには対応できる受け入れ施設を増やしていかなくてはいけない訳です。一部だけで頑張るのではなく、地域全体で取り組むためには?インバウンドという視点で考えると違った見方が出来ます。

また、コンテンツ化すると言ってもDMO自体がする訳ではなく、関係者による観光地域づくりの現場を効率的に動かして行くためのプロジェクトマネジメントを行うことと定義されています。マネジメントを行う項目は下記です。地方でどちらかというと儲けよりも世のため人のために行なっている人たちをマネジメントするというのは大変苦戦するのではないでしょうか?感情で動いている人たちにロジックは大変煙たがられるものです。

・取組の企画立案
・関係者への合意形成
・資金等の必要な資金調達
・予算執行管理
・スケジュール管理
・PDCAサイクルの実施等
(2)各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立

マネジメントを行なって行く訳ですから、当然根拠となるデータ収集と分析を行なって行く必要があります。基礎データがしっかり伴っている地域ってあるのでしょうか?データを保有しているのは、観光協会ではなく、行政だと感じています。だからこそ、行政の協力は必要なのです。

さらには戦略、ブランディングの策定。これは広告代理店など外部に委託しているケースがあるのではないでしょうか?地域の人たちで考え、納得した上で作ったものでなければ、結局作ってドブに捨てるだけになると感じています。作って終わりではなく、継続していく必要があるのです。このテーマはまた別途にしたいと思います。

(3) 関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーション

現状、観光地では、主に観光の部署を持つ行政、商工会議所、観光協会など関係団体がプロモーションを行なっています。首都圏などに赴き、来てください!と呼びかけパンフレットを配ったりしているあれです。これらも戦略的ではなく、昔から行なっているから継続しているケースがただあります。あとは頼まれたから、どこかから声をかけられたから等々です。こういったことを意味があるプロモーションに変えていかなくてはいけないのもDMOに課された役割であると感じています。

■ 国が求めていることと地域に求められているこの違い

国がインバウンドへの取り組みを主眼に置いているのに、必要とされているのはそもそも旧来の観光地のプロモーションをはじめとする誘客活動だったりする訳です。なんとも壮大な課題を課されているのが日本版DMOだなあと感じませんか。

確かに課題は理解できます。しかし、それが結果として短絡的には観光客数が増え、経済産業が活性化されるという既存の事業者に恩恵を与えなければ評価されないという状況に感じています。コンテンツ作って、プロモーションだけしていけば良いわけではなく、訪日外国人を受け入れてもらうためにはどうするかを考えなくてはいけないのですよ。ただでさえ文化が違うのに大変苦労を共にしなくてはいけないのです。

底上げを行なっていかなくてはいけないことも理解していますが、新たな切り口で観光を活性化をするという使命もある、凄い組織だと感じざるを得ません。

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