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【イベントレポ】ポストコロナ時代のSDGsとスタートアップ。

なぜ開催したのか。

DMM.make AKIBA(以下、AKIBA)は600社/4000名以上の会員が活動する日本最大級の総合型モノづくり施設です。

AKIBAでは社会課題の解決に立ち向かうスタートアップも多く活動していることもあり、SDGsについて耳にすることも多くあります。

しかし、実際にSDGsに取り組んでいる企業はそう多くありません。これはAKIBAで活動する企業に関わらず、スタートアップはSDGsへの対応が後回しになっていることが多いのではないか?そう思ったことが今回のイベント開催のきっかけでした。

SDGsの推進活動などを行う未来技術推進協会がAKIBAを拠点に活動していることもあり共催として、SDGsに関心のあるスタートアップや事業会社に向けたイベント「ポストコロナ - SDGsでどう稼ぐ? ~スタートアップから学ぶ、導入から実践まで~」を7月22日に開催しました。


▼DMM.make AKIBAについて



SDGsと日本の現状。

まずはじめに、未来技術推進協会の加藤さんに日本のSDGsの実情についてご紹介していただきました。

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[未来技術推進協会・加藤さん]
「国内で実際にSDGsを認知して取り組んでいる、またはこれから行動する予定の企業・団体が約25%、関心はあるが取り組んでいないのが50%、残りの25%は関心がない、という状況です。

実はまだ1/4の企業しか取り組んでいません。新型コロナウイルス感染拡大に伴う企業活動の変化から、これから取り組もうとしている企業も増えています。しかし、まだ”これから”という企業が多いのが実情です。

世界全体で見ると、今年日本は17 位にランクインしました。しかし去年は15位だったので後退しています。男女の格差や先進国ならでは格差が足を引っ張っています。行政が取り組んでいる取り組みも、民間企業と一緒に取り組むことで解決できることがたくさんあります。

いま”認知をして取り組んでいる企業”と”認知はしているけど取り組んでいない企業”の違いは、社会貢献や評価にだけフォーカスしているか、本業の企業活動と結びつけて考えられているかの違いが大きいと思います。

今回のイベントのタイトルにもなっていますが、SDGsは社会活動とはいえ民間企業が取り組むにはあくまで企業活動なので“稼ぐ”こととも両立させることが必要です。

今回は上手くSDGsを取り入れて企業活動をしているスタートアップ2社をゲストにお招きしてディスカッションしていきます。」



SDGsに取り組むスタートアップたち。

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続いてモデレーターにSDGsに精通する川井さん、ゲストとして株式会社MiL・代表取締役社長 CEOの杉岡さん、株式会社チャレナジー・CSOの水本さんに加わっていただき、トークセッションを行いました。

株式会社MiLは「自分らしい人生を食から実現する」を経営理念にレストランや、乳幼児をもつ家族のための次世代のライフスタイルブランド「the kindest(ザ・カインデスト)」を展開しています。

「the kindest」はリリース開始1年でベビー食品を中心に約60商品を展開しており、国内の赤ちゃん2〜3%のシェアを獲得。年内に150商品ほど展開する予定です。

株式会社チャレナジーは「風力発電にイノベーションを起こし、全人類に安心安全なエネルギーを供給する」をミッションに風力発電機を開発しています。

2018年より石垣島で小型の風力発電機を稼働させており、2020年に量産化予定です。

株式会社MiLはSDGsを起点にビジネスを展開する一方で、株式会社チャレナジー は技術ドリブンでビジネスを展開していたところからSDGsへの取り組みを開始しています。

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SDGsとビジネスを両立させる。

SDGsを起点にビジネスを展開するMiL・杉岡さんにどのような活動をしているのか伺いました。

[MiL・杉岡さん]
「私たちは100%国産、ほぼ全て有機オーガニックの食品を使用しています。出来るだけ地球に優しい農法で生産された食材を仕入れて加工し、お客さまに届けられるかということを重視しています。

SDGsとしては下図のように、「食習慣の乱れによる不健康」「世界的な肉食化」「フードロス」を軸に5つのゴールを目指して取り組んでいます。

また農業は高齢化が進んでいますが、良い食材を育てている農家さんをどれだけ後世に残していけるかということにもコミットしているところです。

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生後5ヵ月から12ヵ月の間は人間が最も成長する期間です。必要な栄養素、食べられる食材、アレルギー等を考慮すると親御さん自ら全て管理するのは難しい。そこで、ドクターと栄養士とタッグを組みサブスクリプションでベビーフードを中心に展開しているのが「the kindest」です。

このような食品を扱うビジネスモデルですと、SDGs〈3.すべての人に健康と福祉を〉〈12.つくる責任 つかう責任〉にフォーカスされる傾向にありますが、これをビジネス化するのは難しいと思います。なぜなら生産量は少ないですし、単価が高くなってしまうからです。

ですが、ベビーフードは美味しさよりも安全・安心さや栄養素の方が大事ですし、EC販売による間接コストの削減により何とか価格を抑えながら実現できています。

SDGsは手段ではなく目的。ビジネスモデルは有機的に変化して色々なものが組み合わさっていく必要があると考えています。」

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SDGsがマーケットを証明してくれる。

続いて、技術ドリブンでビジネスを進めてきたチャレナジーがSDGsに取り組むことでどのようなメリットがあったのか伺いました。

[チャレナジー・水本さん]
「私たちは2011年の原発事故を受けて再生可能エネルギーに着目し風力発電機の開発を始めました。

もともと日本は風力のポテンシャルは高いですがあまり普及しておらず、供給電力全体の数パーセントに留まっています。理由としては風力発電機が強風に弱いため、夏の台風や冬の突風など日本の自然災害に適していないからです。

そこで、自然災害や強風にも強い風力発電機を開発したいと考えました。
SDGsの〈7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに〉という意識は2014年会社設立当初からありましたが、当時それを上手く表現できるものがありませんでした。2015年から世界全体でSDGsへの取り組みが始まったことで対外的に打ち出せるようになったと思います。

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SDGsへの対応としては3つのゴールにコミットしています。

全くエネルギー(電気)にアクセス出来ない人が世界に約2億人、四六時中いつでもエネルギーにアクセスできない人が9.5億人います。この問題と大きなマーケットに対して〈7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに〉に取り組んでいます。

次に産業の発展とCO2の削減の両立を目指し〈9.産業と技術革新の基盤をつくろう〉に取り組んでいます。世界で年間328億トンのCO2が排出されています。私たちの風力発電機を使ってこれを減らしていきたいと考えています。

一番特徴的ですが、〈13.気候変動に具体的な対策を〉に対し貢献していきます。今年も豪雨被害がありましたが、気候変動は年々身近になっています。昨年は世界で自然災害により2,320億ドルの経済被害がありました。気候変動が起こると台風も巨大化していきますが、その中でも電力と通信を供給できること目指しています。

SDGsを使って企業活動を表現できるようになったことで、マーケットが見えるようになったことが大きかったです。投資家からどのくらいの市場規模があるのかと問われることがありますが、SDGsについては国連などからマーケットサイズを数値化され証明されているので示しやすくなりました

また、経済産業省からもグッドプラクティス集が公開されており、当社も紹介されました。SDGsに取り組むことで、日本政府からもお墨付きをいただけるようになりました。

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2014年創業からベンチャーキャピタルや機関投資家から資金を調達していましたが、2019年には第一生命保険株式会社からESG投資として資金調達することが出来ました。

SDGsの指標を元に資金調達することができ、この資金を元にこれから世界にインパクトを与えられる事業を展開していきます。SDGsをフレームワークとして使うことで、事業がどのような人にどのように作用し、どのような課題を解決するものなのかを表現しやすくなりました。

スタートアップはペイン(悩み・問題)を取り除く事業がグロースしやすいと言われている中で、SDGsは世界中のペインが集まっているようなものです。技術ドリブンなスタートアップにありがちですが技術は素晴らしいのにマーケットを発見することや、どう伝えていくか考慮することを怠っていることが多いです。

事業とSDGsを結びつけることで特にスタートアップはマーケットを発見することに繋げることができると思います。」

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SDGsとオープンイノベーション。

SDGsに取り組む2社にオープンイノベーションとの関わりについて伺いました。

[チャレナジー・水本さん]
「当社は衛星通信のスカパーJSAT株式会社と資本業務提携を結んでいます。東日本大震災のときに電源がそもそも止まっているから通信用アンテナを持っていっても通信を供給出来なかったんです。

被災地に当社の風力発電機があれば、発電を通じて通信も出来るという双方の足りないところを補い合う関係が築けると思い提携に至りました。

オープンイノベーションを通じてSDGsに取り組むということは起こりうると思います。」

[MiL・杉岡さん]
「近年、自社がどういう状況なのか俯瞰して見ることが必要とされるサイクルが早くなっていると思います。この20年の間にもビジネスの強み/弱みがかなり変化しているはずですが、それを顧みない会社が多いように感じます。

変化するスピードが早いので自分たちだけでやるのは難しい。他の組織と協業するのは必然的なことだと考えています。

その点で、共感をつなぐ方向性がSDGsであることが今後増えていくかもしれないですね。」

[未来技術推進協会・加藤さん]
大企業は上層部、管理職、現場でそれぞれSDGsへの意識が異なるケースが多いです。コロナの中だからこそSDGsに絡めて上層部から担当者が同じ意識で進めることが重要だと思います。

ただ担当者が考えたり社内の認識をあげたりするだけでなく、様々なステークホルダーを巻き込んで他の企業とコラボレーションするとスムーズにいくこともあるので柔軟に考えることが大事だと思います。」

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SDGsと人材採用。

SDGsに取り組む企業として人材採用にどのような影響があるのか伺いました。

[チャレナジー・水本さん]
「エンジニアは会社の技術に魅力を感じる傾向にあると思いますが、優秀な人ほど社会課題やSDGsにコミットしたいという人が増えているように思います。

当社もエンジニアの採用を強化しているところですが、外国人エンジニアは特にSDGsに関心を寄せています。

カルチャーフィットと呼ばれますが、ミッションやバリューを掲げているからこそ集まってくる人がいて、パワーが生まれていくのではないかと思います。

採用ルートとしてはWebページへの問い合わせやWantedlyから熱心な方が応募してくれます。採用後にミッション、バリューに共感してもらっていいチームになっている。技術と社会性のバランスが大事なんじゃないでしょうか。」

[MiL・杉岡さん]
「必要なスキルは変化するので、実績を重視するのではなく常に変化に応じて勉強できる人かどうかを見ています。これは、これからの採用市場でも同じことが言えるのではないかと思います。

会社に関わらず、個々人にもビジョンがあると思うので、根本的に採用は共感ありきなのではないでしょうか。

パーパス経営やウェルビーイングが注目されていますが、求められる法人の役割と人の役割がリンクするときに幸福度が高まるのではないかと思います。」

[未来技術推進協会・加藤さん]
「新型コロナウイルスの影響を受けている企業は多いですが、それを悲観することなく先々まで考えられている会社ほど求人が集まっていると感じています。そこにSDGsを絡ませている会社も見受けられます。」

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SDGsと新型コロナウイルス。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う景気後退でスタートアップへの出資額が減少すると言われている中で、どのような影響が出ているのか伺いました。

[MiL・杉岡さん]
「スタートアップは業態によってかなり厳しい状況に置かれていると思います。大企業もかなり影響が出ているので、ネガティブな影響を受けている企業のCVCからの出資は相当絞られると思います。影響を受けていない投資機関の投資額も急激に増加することはないので全体として減少するでしょう。

一方で、投資する側もリターンという稼ぎのことだけではなく、投資先のスタートアップへ共感し応援することと両立するようになってきたと感じています。今後はますます投資家とスタートアップのマッチングの度合いが良くなっていくのではないでしょうか。」

[チャレナジー・水本さん]
「厳しい部分もありますが、チャンスだとも思っています。
コロナ以前は見栄えの良いテクノロジーにお金が集まっていましたが、コロナの影響で本質的に必要なものへの関心が集まってお金が集まるようになってきたと思います。

SDGsに取り組む企業にとってはこれからチャンスになるのではないでしょうか。」


最後に今回ご協力いただいた登壇者の皆さま、ありがとうございました!

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さいごに。

この記事をご覧いただいた皆さまの事業の多くもSDGsの17の目標と結びついているのではないでしょうか。自社の事業をより深掘りして2030年、そしてその先の未来の世界のことを考えていくことが重要です。

自社のいいところは案外気づきにくいもの。社外の人とディスカッションしてみるとまた新たな発見があるかもしれません。

DMM.make AKIBAはスタートアップ150社を含む600社、4,000名以上の会員、スポンサー企業、地方自治体、国内外のパートナー機関、ベンチャーキャピタルなどを含む広いネットワーク・コミュニティを形成しています。

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