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映画制作録 マテリアル∞ブルー 3.11震災の詩

宮城県仙台市若林区。伊達政宗が築いた若林城の跡に立つのが宮城刑務所と仙台拘置支所である。

宮城刑務所は通称「宮刑」と呼ばれ、LB級と呼ばれる累犯の長期刑受刑者や精神、身体障害者等の処遇困難者を収容している。また仙台拘置支所は死刑場を設備し、かつて東京拘置所の刑場が整備される前は、東日本一円の確定死刑囚の死刑を執行してきたため、「仙台送り」という言葉が彼らの死期が近いことを示す慣用句となっていた。

その宮城刑務所に収容されている男がいる。

男の名は、黒川芳正。

罪名は、爆発物取締罰則違反等。

量刑は、無期懲役。

黒川は、東アジア反日武装戦線「さそり」部隊を率いて連続企業爆破事件に関わった。

1975年に「狼」「大地の牙」メンバーと同時に一斉逮捕、1987年に無期懲役が確定。以来、30年以上を宮城刑務所で服役。

黒川は獄中では印刷工場に出役。公安事件の受刑者なので夜間は独居。テレビや新聞、本を読み、また詩を書く。彼は「牢哲Ω玄龍」というペンネームを持つ。

黒川芳正のもう一つの顔。彼は獄中映画監督でもある。

黒川は下獄直前の1987年、東京拘置所収監中に映画「母たち」を制作した。もちろん制作の実務は獄外の支援者による。黒川は獄中から手紙や面会によりリモートで映画制作を監督した。

そして、今また黒川芳正は映画監督として動き出そうとしている。

その作品が「マテリアル∞ブルー 3.11震災の詩」である。

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2011年3月11日の東日本大震災は、獄中の彼にも強い衝撃を与えた。ことに津波により東日本太平洋側の沿岸は壊滅し、福島第一原発の破局的な事故は日本民族に経験したことの無い災禍をもたらした。

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その衝撃を、黒川は詩にしたためている。また仙台という被災地にありながら、黒川が直に目にすることの出来ない被災地の惨状と復興、その変化、また復興から取り残された現実、あるいは意図的に残された「震災遺構」を映像として記録し、獄中の哲人、黒川芳正の詩と共に次世代に伝えたい。

黒川は、この作品を「民族の共通体験の記録」として捉えている。映画を見ることで忘れてはいけない災害の体験を共有し、次なる災害の「減災」へと繋がるだろう。

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