糖尿病と歯周病

歯周病は糖尿病6番目の合併症

1. 網膜症
2. 腎症
3. 神経障害
4. 動脈硬化性疾患:脳梗塞、心筋梗塞
5. 糖尿病足
6. 歯周病 ← コレ


糖尿病の合併症は3大合併症である網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化性疾患、糖尿病足が有名です。

最近では上記に加えて歯周病や認知症も糖尿病の合併症であると言われています。

今回は歯周病についての説明をしていきます。


内科から歯科への紹介率は低い

歯周病は糖尿病の6番目の合併症でありながら、内科から歯科への紹介率は低いです。

 内科から眼科への紹介 78%
 内科から歯科への紹介 26%

これは35歳以上の80%以上が歯周病を有していることを考えると極めて低い状況です。


歯周病の段階

実際歯周病は次のような段階を経て進行し、最終的には歯を抜く必要がでてきます。

歯肉炎   :歯の周りの組織である歯肉が炎症し始める
 ↓
軽度歯周病 :歯を支える骨が溶け始める
 ↓
中度歯周病 :歯がぐらつき始める
 ↓
重度歯周病 :骨が歯を支えることができなくなる
       最終的には抜歯する必要


糖尿病患者さんが歯周病を検査する必要性

歯周病の検査を糖尿病の患者さんに勧める理由は3つです
・歯を守るため
・糖尿病合併症の進行に関わるため
・歯周病と高血糖は相互関係であるため

そもそも歯周病の有病率は高いのです。 平成28年の歯科疾患実態調査によると4mm以上のポケットをもつ割合(軽度歯周病)は35〜45歳で42.6%と報告されています。

つまり40歳で約40%の方が軽度の歯周病になっていると考えられます。

また、歯周病は成人の歯を失う原因疾患の1位であり、糖尿病が不良だと歯周病は重症化&再発しやすいということが分かっています。 

*糖尿病でも非糖尿病と同程度に歯周病治療効果があります。
他の合併症と同様に、せっかくの治療機会失わないためにも歯科健診が大事です。


歯周病の重症化と高血糖は相互関係

重度の歯周病では糖尿病合併症の発症・進展リスクが増加することがわかっており、歯周病の治療は歯を失わないだけでなく、血糖値や糖尿病合併症の進展にも関わります。 

重度の歯周病 → 糖尿病合併症リスクup
歯周病を治療 → 2型糖尿病の血糖値は改善
血糖コントロールを改善 → 歯肉の炎症改善


当院から歯科への受診勧奨

頻度の高い病気なので。
基本は全員に歯科健診を勧めています。

場合によっては重症歯周病をスクリーニングする質問表を使うこともあります。


歯科における糖尿病スクリーニング

・ 26%以上の歯に深いポケットがある
・ 歯が4本以上抜けている

上記2項目を満たすと、前糖尿病・糖尿病患者の75%です。

これにポイントオブケアHbA1c ≧ 5.7%を追加すると、前糖尿病・糖尿病患者の90%がスクリーニング可能という報告があります。


まとめ

歯周病は頻度の高い病気です。
特に糖尿病では歯を守るため、糖尿病合併症を減らすために歯周病の治療機会を失わないことが重要です。

そのためには医科と歯科の連携を行っていく必要があります。


名古屋糖尿病内科クリニック
糖尿病専門医 平井博之


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