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ぼく地球③ ~リヴァイアサン~

「テルマエロマエ」のヤマザキマリは、漫画とは"意味の無いコマ"を画く作業、と評する。無論独特の反語表現で、"無意味の地平の有意味性"(="作為的な不作為")を形容している。

宗教とは、"alter-native(~じゃない方)"を措定することで、"native(自生,自明)"を実りあるものとする"bias(※)" をいう。"実部"に"imaginary" を重ね見ることで、「今以て、尚」を彩度ある"有意味"なものへと書き換える"下絵[仏:esquisse]"となる。

[※bias=布目に対し"斜め"に裁断→『織り』の特性により伸縮性が増す〈exp.〉T-shirtの『襟首周り』= "バイアス裁断してある布地" が伸び縮みする]

『複数形』では、すなわち人生で不条理に遭遇しても、つまりは『天国』とか『極楽・浄土』とか(pro-spective)『その他(=basket-category)』で安穏と暮らせるであろう"合理的な虚構"を、名宛先に呼び出すことで、不条理を受け入れる"素地"を醸成する。("mourning-work","grief-process")

『単数形』においては、自らを賦活するための、輻輳的な"眼差し"(=religion)をいう。先祖(retro-spective)を敬うと現世で"御利益"を被るという、いわば位相のズレた視座を経由することで、己を外側から観察する契機を得る。つまり"約束の地(ZION)"や、"天文の軌道"や、"四柱推命"や、"手相"や、"黄色い財布"や、"血液型"や、"消しゴムに好きな子の名前"や、"イタイノイタイノトンデイケー"や、"アロエベラ"等に擬らえて、寓話的に"fic-tion"を仮構、実部に重ね焼きすることで、玲瓏透徹を保つ"func-tion"を実装する。

その意味で、昨今のコンテンツ界における異世界"転生"ファンタジーの隆盛とは、宗教というより、宗教の持つ機能的同等性("functional-equivalents")への希求を物語る。リアル宗教は、身体を伴う現前性(=liveness)や、反復的・儀式的ルーティン("ceremony"=時間軸のcancel)を経て、同一地平の"仲間意識"(=ethos=同じ釜のメシ)を醸成する。その点、コンテンツに棹指す"ファン・コミュニティー"は、『共通言語』を一にする"ゆるい繋がり"があるのみで、命を賭して"信心のため"に殉じたりはしない。(注;"解釈戦争"に巻き込まれることはある)

不一、問題というか気になるのは、"fiction"に没入するだけで"虚部のlayered"としては事足りるはずなのに、更に『"fiction" insert of FICTION 』に入れ子("meta fiction")にするのは何故なのか。

そんな一大ブームである異世界ファンタジーの中にあって、『Re:ゼロから始める異世界生活(©長月達平)』は異質なものを抱えている。メインヒロイン"エミリア"寓する『精霊使い』のモチーフとは、"呼び出される暴力"、即ち"暴力装置"に他ならない。これが"聖剣エクスカリバーを抜く"ことで「超越性」を獲得する等であれば、それなりに"得心"を見出せる。だが「リゼロ」において"精霊"と"精霊使い"は『契約』で繋がり、作中繰り返し言及されるように、両者にとって『契約』は"絶対"となっている。理由の如何問わず、反故にされれば"SEKAI NO OWARI"を意味する。停止条件、つまりはエミリアたんの死により"ゼロ"を発動、セカオワとなる『鍵』は"最終兵器エミリア"に短絡される。"契約が履行"されている間は、『免疫細胞たち(と赤血球と血小板ちゃん) vs 細菌やウイルス感染細胞やスギ花粉や寄生虫やガン細胞たち』との"balance of power"は保たれる。

"勢力均衡"に紐付けて少し迂回すると、『"権力"に直に接続する暴力(=暴力が"権力"を形成する)』を"王権神授"とし、これは当時脅威であったローマ教会を斥ける要請から"自律駆動"(=autonomous)を旨とする。暴力の呼び出しに、"契約及び手続き"を要しない。つまりは絶対王政。T・ホッブズは、この『絶対王政』の"意味解釈フレーム"を更新する。"正統性に担保された手続き"を経て『契約』に服従し、必要に応じて呼び出される暴力を"社会契約論"、つまりは『リヴァイアサン(注;"エコシステム"全体を海獣に譬えている)』とし、今日的な『"civilian control(of the military)"』へと架橋する、蓋し"分水嶺"である。

#ネタバレ

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