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ぼく地球② ~鋼鉄の処女~

『処女懐胎』の果たす"機能"とは。即ち、母マリアとの属人的な繋がりを断つことで、『イエス・キリスト』の聖性を極めるため。これは仏教、神道のいう"化生"にも通ずる。加えて、生物的・家族的な繋がりを遮断することで、後にキリスト教がグローバル宗教へと変貌する、核となる教義『隣人愛("カリタス"英;charity)』(=家族親族ユニット・民族ユニットを部分的に制限・解除し上書きする)を導入するための"default"(初期値)を用意する。

問題は、イエスの聖性を際立たせる"ギミック"でしかない『処女懐胎』が、時を経るにつれ独り歩きし、"聖母マリア"として奉られていく。"聖母像"か"十字架"か、という二極にリージョンを分かつほど、処女(膜)信仰は、予期せぬ帰結としての『聖性』を獲得してしまう。無論、背景には男性優位社会による"女性人格の物格化"の地平が拡がっており、男性の所有物に資する『処女信仰』の隆盛は、予期せぬどころかむしろ妥当な結末とも言える。

先にイエスは"化生"の産まれと書いた。これは"ぼく地球"作中における「ザイ=テス=シ=オン(輪)」に相当する。"戦争孤児"の設定だが、"リアルな戦争を擬らえる"ものとは想定し難く、名前("ZION"=還るべき場所)を参照しても、ネグレクトや"lost orientation"に類する"寓意"と解すのが妥当であろう。

処女、もしくは処女信仰の象徴である、キチェ・サージャリアンこと「モク=レーン(亜梨子)」。上記『聖母マリア』信仰の成り立ちを経由することで、シ=オンとモク=レーンの"姦通問題"を紐解く端緒を見出せる。つまりはイエスの聖性を担保するための、辻褄合わせに過ぎない『処女懐胎』、或いは『処女"膜"信仰』とは、後講釈的に祀り挙げられる男根主義者の妄想"sub-effect"にすぎず、"#MeToo"運動(第4波"feminism")の萌芽すらないあの時代、日渡早紀の静かな告発は、敏感なものたちに共振を引き起こした。

"シ=オン"は、"シウ=カイドウ"の開発するワクチンにより、皆より多く生き長らえる。シ=オンは、『母』であるモク=レーンの言い付けには逆らえない。自殺すれば転生出来ない、という楔のなか、"シウ=カイドウ"その他により『磔刑』に処され、皆より9年遅れの転生を余儀なくされる。"シウ=カイドウ"こと『使徒ルカ』により仕込まれる、"マリアとイエス"の青写真は、転生後の世界において、"亜梨子と輪"に転写される。

#ネタバレ

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