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映像作品の原稿を書くことは、ある意味で野球に通じている。

僕の職業は放送作家です。

ストーリーを構築したり、ナレーションを考えたり、演出のアイデアを出したりして、番組(映像)のクオリティを上げるのが役割です。

中でも、重要な仕事のひとつが原稿(=構成=台本)の作成。

映像制作における原稿って、見たことはありますか? 人によってフォーマットは違うのですが、僕の場合はこんな感じ(↓)。

左の欄に〝画の指定〟
右の欄に〝音声〟
その間に〝尺〟を書き込んでいます。

放送作家にとっては、右側の〝音声〟が主戦場です。

「N」マークが打ってある文はナレーション、網掛けしてある部分は「ON」=登場人物が話した言葉です。

さて、僕はこの原稿を書く作業、あることに通じると思っているんです。

あることとは……、

野球でいうところの〝配球〟です。

配球とは、投手と捕手(バッテリー)が、打者をアウトにするためにどんなボールを投げるか組み立てること。

直球か、変化球か。
変化球だとして、どの球種か。
コースは内か、外か。
はたまた高めか、低めか。

配球が巧みだと打者に的を絞らせませんが、逆に単調だと打者に気持ちよくスイングされてしまいます。

原稿も同じ。こちらをご覧ください。

実際に映像化してみるとわかりますが、これってとても単調なんです。

リズムに注目。

N ON N ON N ON N ON

という順番になっていますね? 配球に置き換えるとこんな印象。

直 変 直 変 直 変 直 変
(直=直球、変=変化球)

次に投げるのが直球か、変化球か、実に読みやすいと思いませんか?

ONの長さが画一なのも気になります。単調さをより際立たせてしまっているので。

まるで、変化球がひとつしかないみたい。ほかの球種(長いONと短いON)を織り交ぜたいですね。

あとは、ナレーションの語尾。

途中から疑問形ばかりになっています。同じ語尾が何回も続くと、これまた単調さを感じてしまうんです。疑問形に限らず、過去形、体言止めなどを続けるのも一緒。

こちらは同じコースばかり投げている印象でしょうか。

単調になる原因は、まだあります。

ナレーションを読む速さ、強弱、読み終わりの間。

投げるテンポが単調だと、打者はタイミングを取りやすくなります。そのため、投手はボールを長く持ったり、走者がいないのにクイックで投げたりするのですが、原稿においても工夫が必要なわけです。

僕は「!」「……」などでニュアンスを伝えるようにしています。

もちろん、きょう書いたことはあくまでセオリー。原稿にしても、配球にしても正解なんてありません。だからこそ、奥が深いのだと思います。

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