【連載】日本のストリートボール史 vol.12

- 現在へと繋がるイベント乱発編 -
※個人の記憶を奔放に綴った内容ですので、事実と異なる点もきっとありますがご容赦下さい。

あまりに刺激的な2003年の夏を終え、10月には2回目のトライアウトを開催。今回はウェブサイトでの告知のみでしたが、東京、埼玉、そして長野や愛知などから11名の応募があり、2名が練習生としてクルーに加わりました。

そして11月に入ると新たな人物が登場します。
大学までバスケをやり続け、もうやり切ったと福岡への帰郷を考えていた男をCOHEYが踏みとどまらせ、東高円寺練習へ来るようになりました。COHEYの大濠高校時代の同級生・チームメイトだったYOHEIです。彼も一度燃え尽きたバスケへの情熱が、ストリートボールと出会って再燃した人間の一人ですね。

コート上では華のあるプレーをするものの、風体も行動も言動もふわふわしているので、出会った頃は正直“こいつ本当に大丈夫か”と思っていました。しかし、心の奥には誰にも負けない熱いものを持っていることが、一緒に過ごしていくうちに分かっていくのでした。


一方、デビュー後の活動も順調にこなしていたラッパーCHRIS。初の大舞台と言えるイベントが到来します。当時日本で一番有名だったであろう大型のクラブ、六本木「velfarre」で行われた『PIA SUPER LIVE GROOVE』への出演です。

内容はavex傘下のレーベルに所属するHip Hop勢によるショーケースで、錚々たるアーティストの間に新人CHRIS & DJ MASTERKEYで登場。自分がサイドMC、AJ、MATSU、HIDEがショーの途中でパフォーマンスを行いました。

高校時代、まさに擦り切れるほど観たビデオ「さんぴんCAMP」の中で、BUDDAH BRANDが「人間発電所」を披露していたのと同じステージに立てる、しかも背後にいるDJはその時と同じDJ MASTERKEYさん。こんな奇跡があるのかと緊張と感動をしっぱなしでしたね。

CHRISも数日前から昂っていて、“前日からみんなで集まってKUNIOの運転する黒いハイエースで乗り込もうぜ”などと言っていましたが、それは却下で別々に車や電車で当日会場入りとなったのでした。

CHRISのライブにしても、FEBのボールパフォーマンスにしても、これまでの集大成といえる空間。舞台袖に意味深な御札が複数貼ってあるのを誰かが発見し、無駄にそれにもビビりつつ決死の覚悟でステージへ。

4月に“週末だけ活動するんじゃダメなの?”という、的確すぎる助言を下さった大人の皆さまもご招待。子供の発表会に来た父親のように、温かい眼差しでこちらを眺めている姿をステージの上から見付けて少し緊張がほぐれましたね。

そして長かった2003年も師走へ向かいます。この頃ついに代々木公園にNIKE JAPANによるHOOPの寄贈が行われました。最初の段階では陸上競技場側に舗装もない状態で2基のHOOPが建てられていました。

まだ世間に認知もされていなかったので、いつ行っても貸し切り状態。FEBクルー同士や、この寄贈の大きなきっかけを作ったS.H.Uメンバーとピックアップをして、HOOPがある有難みを噛みしめていたのでした。

この当時は、各スポーツブランドのCMが地上波で流れるのが当たり前だった時代。NIKEはあの傑作CM「IS THIS YOU?」の次に、早くも新たなCMをゴールデンタイムに投入していました。

その内容とは、“Stickman”なる黒い棒人間が、実際の人間とバスケットボールを使った奇想天外なMOVEで対戦するというもの。対戦相手には、当時の米国のストリートで最も熱い大会「EBC at Rucker Park」で猛威を振るっていたBone Collector。そして、2001年に作られていた同じくNIKEのCMである「Nike Basketball Freestyle」に出演していたTrikzなどが登場。

さらに使われている楽曲は、一聴して分かる独自の音色、そして本人もヴォーカルで登場するPharrell Williamsが制作。豪華すぎますね。

いま見ても至高であるCM「Nike Basketball Freestyle」をコミカルに進化させたような映像が、2003年の秋からTVでガンガン流れていたのでした。

これはNIKEが本気で“Freestyle Basketball”を世界に浸透させるための一大施策。日本では2004年1月に東京と大阪でメインイベントが予定されており、それに向けてのプロモーションが展開されました。

配布物は数ヶ月前まではVHSだったのに、今回はDVDへと進化。Stickmanによる技紹介まで付いた豪華なものです。
このDVDも配布されたデモイベントが12月に都内で2回行われました。

12月の初旬にまずはラフォーレ原宿の入口にて。そこまで広くないスペースながら、円形のステージを作り、その上でFEBが1日5回のデモンストレーションを行いました。

続いて年の瀬を迎えたタイミングで、池袋サンシャインシティの噴水広場にて開催。

今日もやるぞと意気込んで会場へ到着し、現場を確認後、控室へ通されました。そこで初対面となったのが、この日のイベントMCを務めるAK★さん(現:AKIさん)でした。

エネルギー溢れる声色に声量、日本語と英語を自在に行き来するMCスキル、そして何より全身から発せられるポジティブなバイブスに助けられ、この日のイベントも無事終了。原宿同様に1日5回のデモンストレーションがある長丁場なので、その合間の休憩時間の控室にて会話も弾んでいましたね。

撤収も終わり会場を出た時点で、AJが早速”これから俺らのMCはAKIさんにお願いしよう”と言っていました。そして実際そうなることとなります。

そして人が行き交う池袋駅に到着。別れ際にNIKE JAPANの方に“今日が仕事納めですか?”と聞かれ、そうか社会人になるとそんな表現があるんだなと思いました。まだバイトの予定はありましたが、ストリートボールの仕事は今日で終了。”そうですね”と笑顔で答えました。

これにてようやく2003年が暮れ、まだまだ重要な出会いが待ち受ける2004年が始まります。

つづく

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