すみなれたからだで:窪美澄:性のはなし

「すみなれたからだで」(91/2020年)

あとがきでこの短編集の背景が語られていた。「性」というテーマで書かれた作品が半分とのこと。「性」は「生」を生み出す。そして「生」は必ず「死」にたどり着く。短編なだけに、シンプルに、ギュっと書かれていて、すぐ読めるし。じわじわ沁みていくのではなく、急に針で刺される感じ。気を抜いていると、窪に射貫かれるので要注意。

お気に入りは表題作「すみなれたからだで」かな。こんなにも優しくて日常的なセックスシーン、読んだこと無い、驚いた。そして、すごくいやらしかった。セックスレスの夫婦の話なんだけど、突然、夫から誘われる。なぜ誘ったのか、何度読み直しても、よくわからない。いや、こじつければ、理屈をこねることは出来るかもしれない。娘の「盛り」に触発されて妻のフェロモンが増え、それに夫が反応したとか(笑)。がしかし、そういう気持ちにならないのだ。よくわからないのが心地よいのだ。よくわからないままでいたいのだ。

戦中にセックスにハマる少女の話や、近親相姦的ロリコン、レズビアンの失恋など、ドラマチックな作品もあるし、父親を「捨てに」いく地味な作品もある。「性」「生」「死」に向き合う時のさまざまな光景が描かれています。窪、やっぱ面白い。


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