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しき:町屋良平:ショッキングな作品名

「しき」(22/2021年)

読み終わって、ちょっと呆然としていたところで、この作品名の凄さに気が付き、震えてしまいました。平仮名なんだよな、平仮名。この作品は、漢字、カタカナ、平仮名が存在する日本と言う場所でしかありえないということに衝撃を受けました。

高校二年の男子三人と女子三人の物語です。男子の方を主軸に物語は展開していきますが、特別な事件やアクシデントに巻き込まれることもなく、驚くほどに「普通」であるかのように書かれていますが、この括弧付の「普通」が事件なのかもしれません。

男子二人はダンスに夢中になるのですが、その夢中になり方の力の抜け加減が「普通」で驚きます。

男子と女子が付き合うのですが、そのキッカケや終わり方がいかにも「普通」すぎて感動します。

男女どちらの三人組もクラスの主流派に馴染むことも無く、かといって極端に浮いた存在でもなさそうな「普通」な空気のなかで学生生活を送っている雰囲気に、ある意味神々しさを感じでしまいます。

でも、この作品には罠があります。たまに、漢字で表現すべき箇所が平仮名に開かれているのです。些細な違和感がズシリときます。とくに意味もなく開かれていると僕は思ったのですが、その不意打ちな表現に、この「普通」は普通ではないのでは、という疑義が生じるのです。

そして作品名です。なんだ、この気持ちは。なぜ、この高校生六人の約一年間は四季ではなく「しき」なのか…ショッキングでした。

ただ、本当に残念なのが、この作品名、検索に弱いんです…が、もしかしたらココも計算してのタイトル付けならば、もうたまりません、感動です。

最後に。町屋良平、全くノーチェックな作家さんでした。たまたま見た「タイプライターズ」というテレビ番組で拝見して、速攻購入したのが本作品でした。タイプライターズに感謝、です。

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