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remove the tatoo

【2014年9月1日の日記から】

来週、タトゥーを除去する手術を受ける。

直径5センチのタトゥーを皮膚ごと切除する術式で、
数か月かけて、2度にわたって手術する。

タトゥーを入れたのは、2005年の秋。

アルコール依存症の専門的治療を受け始めて約1年が経ち、
飲酒はやめていたものの、
今から振り返れば、かなり不安定だった頃だ。

「この病気で失ったものを、絶対に取り戻す」

そういう決意を、身体に刻み込んだつもりだった。

30代半ばのおっさんが、まったくよくやったもんである。

しかし、当時の僕は真剣そのもので、
そういう行為をする自分を、少しばかり誇りに思ってもいた。
今から思えば、ちょっとした狂気の沙汰である。

念のために言えば、僕はタトゥーそのものが悪いことだとは
思っていない。

文化的な背景のある彫り物から、
ちょっとした思い付きで「彫っちゃった」ものまで、
それぞれが「あり」だと思っている。

むしろ、日本のプールや公衆浴場などで
「シールも含めてタトゥーお断り!」の表示を見かけるたび、
その排他的不寛容さにゲンナリしてしまう。

でも、今の僕には、もうタトゥーは必要ない。

妙な思い込みとかプライドとか、それを誇示する道具とか、
必要のなくなったものは、
どんどん捨てて身軽になりたい。

わざわざ彫ったものを今度は切り取るというのだから、
馬鹿げた遠回りをしているな~と、
自分でもあきれてはいる。

でもそういう後悔や遠回りも含めて自分の人生なのだから、
この経験は捨てたり忘れたりしない。

娘に今回の経緯を説明し、

「お前がもしタトゥーとか入れたくなったら、父ちゃんを思い出せよ」
と言ったら、鼻で笑われた(笑)。

まったく、とんだ反面教師である。

おわり

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