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85 早起きは三文の徳(The early bird gets the worm)


はじめに

今日の教育コラムでは、「早起きは三文の徳」ということばを取り上げてみたいと思います。この言葉、皆さんもよく知ることわざですが、意味は「 朝早く起きると良いことがあるということ。」という意味でどうやら江戸時代ごろにはよく使われていた言葉だそうです。
1文の価値が現在の金額にすると約30円ですから、90円~100円程度とくをするといった感覚です。思っていたよりもごくわずかな「とく」を指していることに気が付くのではないでしょうか。しかし、健康にも良いし、それだけ仕事や勉強がはかどったりするのでとくをするという意味で、寝坊をする子どもに対して戒めの意味を込めて用いたようです。

得ではなく「徳」

「早起きは三文の徳」の類義語に、「朝起き千両、夜起き百両」という言葉があります。この言葉は、「朝の一時は晩の二時に当たる」という時の価値についてふれながら、朝の時間の大切さを説いています。
大変良く似た言葉なわけですが、「三文の徳」の方はといいますと、えるという意味の「得」ではなく、「よいこと」という意味での「徳」という言葉を用いています。
類義のことわざは、千両・百両というお金に例えて両方とも価値はあるけれど、朝の方が10倍ほど価値がある様子を表現しています。百両も千両も大変価値のある金額ですから、ともに「時間の大切」さについては述べているわけです。
時間の大切さについて述べていることまではわかりましたが、気になるのが「徳」というものの正体です。人は「徳」というものをどのように考えているのでしょう。
徳とは、「身についた品性」を意味します。朝寝坊せずに、朝の運動をして、着替え、歯磨きをして、食事をとり、働く。このような日々の暮らしを計画的にそして自分で確認しながら進めていくためには、時間の余裕が必要ですし、忙しい朝は特にきびきびとした態度で時間を有効に使わなければいけません。つまり、社会的に価値のある行動や自分の正しいと思う判断が磨かれる大切な時間となるわけです。また、これを毎日繰り返していくことはそれだけでも大変に根気が必要ですし、継続する力が必要となります。
朝早く起きると美しい咲いたばかりの朝顔に出会うことができますし、日中よりも気温が低いため、さわやかな風を感じながら作業をしたり、学習を進めたりすることができます。そんな些細なとくを感じることも決して悪くはありません。

睡眠時間が重要

いくら、早起きは三文の徳と言っても、睡眠時間が短ければ三文の損になりかねないという研究があります。
朝型の生活を送ろうとしても、夜の早い時間に眠らなければ、睡眠時間が足りずパフォーマンスが低下します。
夜も楽しみたい、夜も勉強したい、その気持ちから朝早く起きているにもかかわらず、睡眠時間を遅くしてしまうと待っているのは、睡眠不足による体調の不調です。
夜型の人は逆に朝は起きづらく、体調不良が生じやすい傾向があります。その時間に無理に早起きをすることが、やはり睡眠の問題や不調につながっている可能性があります。
その一例として睡眠時間を十分にとらずに、早起きをすると早起きは三文の損になってしまうという結果があります。最近よく使われる指標の「労働生産性」に置き換えてみた時に、1時間の早起きで生じる生産性の低下は何と0.14~0.26%だそうです。
この低下率をOECD平均賃金換算で計算してみると年間にして約8,000円~13,000円程度の低下となります。1文が約30円ですから、計算してみると1日当たり約3文くらいの損失になります。
適切な睡眠時間の管理が「早起きは三文の徳」を成り立たせる重要なカギだと言えます。
無理な早起きは心身および労働生産性、また、学習への集中や取り組みに良い影響を与えません。健康的な生活を通じて生産性を維持するためには、「夜遅くまで起きていない」「無理に早起きをしない」「十分な睡眠をとる」ことが大切だと言えます。


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