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「生きづらさ」と「認められる」ことの関係 ー必要なのは承認ではなく否定されないことー

NPO法人ダイバーシティ工房が運営するLINE相談「むすびめ」の1周年に伴い、若者の希死念慮を生み出す生きづらさについて考える対談を実施しました。釧路に拠点を置き活動するNPO法人地域生活支援ネットワークサロン代表理事・ネットの居場所ポータルサイト『死にトリ』を運営する日置真世さん、自らも生きづらさをを抱える若者当事者である『死にトリ』運営メンバーのOさん、Hさんをゲストに迎えたトークの様子をお伝えします。
※対談イベント(2021/10/23):若者の「死にたい」をどう受け止めるか?の内容を書き起こしています

「生きづらい」「死にたい」はどこからくるのか


佐藤(NPO法人ダイバーシティ工房「むすびめ」マネージャー):
昨年スタートしたLINE相談『むすびめ』で多くの人から「死にたい」という声が届きました。相談の第一声がそこから始まるケースも少なくありませんでした。

SNS相談の事業を始めるにあたり、希死念慮を表す気持ちは寄せられると思っていましたが、あまりに多くの「死にたい」を目にしたとき、この言葉が何を意味するのか、一度ちゃんと考えたいと思いました。

死にトリ』の運営などで若者の死にたさと向き合ってきた日置さんとぜひお話したいと思っていました。

日置さん(以下敬称略):私も若者の「死にたい」に気がついたのは割と最近です。スクールソーシャルワークの仕事をしていたので、若者の「生きづらさ」があることはずっと知っていました。今日来ている若者たちともそこで知り合いました。

彼らと関わる中で、「死にたい」は彼らにとって当たり前すぎてわざわざ口に出してないことに気づいたんです。

SNSを通じた自殺対策に政府が乗り出し、その流れで私たちのTwitterのパトロール事業も始まりました。そのときに私も、Twitterとは何か?病み垢って?みたいなことを若者たちからレクチャーしてもらいました。

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それでチームの若者に「死にたいって思ったことある?」と聞いたら「今更なに聞いてるんですか?」みたいな顔をされて。

「初めての死にたいはいつ?」「中学生です」みたいな。

それが5年前くらいですかね。Twitterが一種の居場所、文化になっていることを知りました。


佐藤:『死にトリ』ではどういう活動をされているんですか?

日置:自分の「死にたい」と付き合う方法を考えようという試みから、「死にたい」気持ちの取り扱い説明書を作るというアイデアが生まれました。

自殺防止の事業としてやらないかという声がかかったので、『死にトリ』としてサイトを作り、オープンしました。

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サイト内の主要コンテンツの1つである『つらチェック(質問項目に答えることで「死にたい」気持ちの背景を分析できるツール)』は、Twitterパトロールの賜物なんです。「死にたい」は自分の希望・願いと現実のギャップから来ているということと、願望の強さは4種類に分けられそうなことに気がつきました。

認められたいと生きづらい?

佐藤:今回『生きづらさってなんだろう』というキャンペーンの中で、どんなときに生きづらいと感じますか?というのを聞いたんです。

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この中で気になる回答はありますか?

日置:やはり『つらチェック』と一緒で、「実際と理想のギャップからくる」というのは気になりますね。

佐藤:日置さんご自身は、理想と実際の間にギャップを感じることはありますか?

日置:私はあるがままでいいという生き方なので、ギャップが生じるというより「ああ、そんなもんか」と思っています。

ただ生きづらさとしては、一般的な考え方と違ってておかしいとか、普通ならこうだ、と言われたりはしてきました。ですが、私の周りには「そのままでいい」と言ってくれる人も多かった。

否定されてきた若者と出会って話すと、彼らのことを「面白いな」と感じます。なんでみんな「ダメだ」と言われてきてしまったのか、そちらの方が不思議です。

佐藤:そうなんですね。過去を振り返ると、私の周りには「それでいいんだよ」と言ってくれる大人はあんまりいなかったなと思います。

日置:以前、若者と話をしたときに、認められなくても否定さえされなければいいよね、という話になりました。褒められると、そうではないときの自分はダメという裏メッセージを受け取ってしまう人もいるんですよね。

条件付きで認められているみたいなことではなく、なんでもいいんだよってことだと思っています。

佐藤:認められたいという思いが、苦しさにつながってしまうんですね。

日置:たとえ周りにどれだけ認められても、自分が納得できないとそれはそれで終わりがないですよね。自分で折り合いをつける必要がある。そのときに1人じゃなく誰かと一緒にできたらいいのかなと思いますね。

佐藤:Hさんはどうですか?

Hさん:難しい環境で育ったので、自分の選択を認めてもらえないと、自分でも自分のことを認められないという感覚がありました。日置さんと出会ったときは、色々なことを自分で決められませんでした。

日置:自分がないところからどうやって「自分」に気づいたの?

Hさん:日置さんに「あなたはどう思うの?」と何度も聞かれたからですかね。当時は、なんで自分の意見をそんなに聞かれるのかわからなかったですが。

佐藤:自分で何かを決めるとき、自分がどう思うかよりも先に他人の声や存在を置いていることってありますよね。

『私たちは人の話を最後まで聞けているか ー決めつけてしまう言葉ー』に続く



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