見出し画像

辛うじて社会とつながれた先で一緒に生きる -民間シェルター「ルファール」-

ー絶望の先にあったのはまた絶望だった
これは、ある団体のシェルターに保護された若い女性が、自身の過去を振り返り口にした言葉です。私たちも運営するシェルターで、この言葉をそのまま表すような、あらゆる種類の困難をなんとか生き抜いてきた背景を持つ若い女性たちに出会います。

ダイバーシティ工房が運営するシェルター「ルファール」は、保護者が養育できない、虐待を受けているなど、危険な状況や困窮状態にありながら、既存の制度では保護を受けられず行く先のない女性たちが暮らせるように作った場所です。

例えば18歳、19歳の若者は、既存の制度では行く先がない状況に直面しやすい立場にいます。児童相談所の保護対象は18歳未満のため、家にいることが危険な状態にあったとしても、保護をしてもらえる可能性が低く、独立できるほどの経済力や信頼できる周囲のサポートがなければ家以外に暮らす場所を持てず、どこにも行き場がありません。

未成年で、あらゆることに保護者の同意・承諾が求められる一方、何かあったときは社会から「もう独立できる歳でしょう」と言われる、そんなはじかれ続けるような、行く先のなさです。

支援とは何なのか

ルファールにやってくる女性たちの中には、これまでの生活が、いかに生き延びる毎日だったかを表すように、ここでの生活が始まるとすぐに体調を崩し、精神的に参ってしまい起き上がれなくなる人がいます。ここに辿り着くまでが完全にサバイバルモードで、ある意味では麻痺したような精神状態で何とかやってきたため、安全な場所でやっと脱力できるとそれまでの疲労やストレスが一気に表出するからです。

そんな彼女たちと毎日を暮らす中で考えさせられるのは、支援とは一体何なのか、ということ。

ルファールは、支援者という“役割”を果たすべく必要なサポートを提供しますが、結局私たちがしていることは、「一緒に生きる」に尽きるのではないかと思うのです。

一緒に日々を暮らしていると、できるだけ良い道を選んでほしいと思ってしまいます。

でも、「良い」とは何なのか。

きっとそれじゃない方がいい、こちらがそう思ってしまう選択も、安全な場所であらゆる情報に接した上で本人が下した決断なら、それがそのときに選ばれるべきものなのかもしれない。

他人から見たら失敗と思えることも、本人にとって納得のいく人生を送るためには、なければならない出来事や選択なのかもしれない。

そんなことを考えていると、尊重、という言葉におこがましさすら感じるくらい、人には自分のことを自分で決める権利があることに気づかされます。

「支援をする」とはこちらが思う正しさに導くことではなく、本人が安心できる環境の中でこれからのことを考え、決断できるようにすることなのではないか。もしできることがあるとすれば、本人があらゆる角度からの情報に触れられるよう隣にいてサポートすることなのでしょう。

力を取り戻す場所として

ただ安心して暮らすことを望んでいるだけなのに、それを必死の努力やサバイバルの末に獲得しなければならない人がいます。

本来制度とは、避けようもなく人に降りかかる困難を運命だからと諦めずに済むよう、あらゆる格差や不公平を是正するためにあるはずです。しかし、そのために用意された制度と制度の狭間に落ちてしまったり、現状の制度・仕組みが十分でなかったり、あるいはその情報にたどり着くための手段が絶たれた状況におかれたりすることがあります。

1日をなんとか耐え生き延びる。
その繰り返しのどこかに、辛うじて社会とつながっていられるきっかけや周囲からの言葉があることで、安全な場所にたどり着き、その先の暮らしを考える力を、また蓄えることができる可能性が生まれます。

ルファールは、彼女たちがきっかけや周囲の言葉を受け止め、自ら一歩踏み出した先で、たどり着けるように作られた場所です。

今もこれからも、また生きていくための力を取り戻す時間や場所を必要としている人がいます。私たちは、支援という役割を担いながら、一緒に生きていく大人でありたいと思っています。


***********
民間シェルター「ルファール」の運営には、家賃に加え、利用者たちが生活していく上での食材費、生活用品費、水道光熱費や、スタッフ人件費などを必要としています。今後もこの場所を守り存続させていくため、現在寄付による支援を集めています。

社会の隙間からこぼれ落ちてしまいことがないように、地域で困難を抱える若者を一緒に支えていただけないでしょうか。一人でも多く、みなさまからのご支援をお待ちしております。


最後までお読みいただきありがとうございます。 これからも、活動を継続してまいりますので、応援したいと思ったら、ぜひ「スキ」のボタンをポチッと押していただけると、励みになります! サポートをいただけることも、とっても嬉しいです。