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様々な「生きづらさ」を抱える人に寄り添うSNS相談のこれからを考える

2020年から続くコロナ禍、生活困窮やあらゆる種類の困りごとが生まれる中で、どこからでも誰でも相談ができる場として、SNS相談の利用が広まりました。相談者と支援者がまずつながる、その第一歩をクリアした先で、SNS相談には何ができるのかという問いも生まれました。

2021年11月9日、『様々な「生きづらさ」を抱える人に寄り添うSNS相談のこれからを考える』と題したトークイベントを実施しました。

登壇者は、親の離婚や家庭環境における悩みを受け付けるSNS相談を行っているNPO法人ウィーズの光本歩さん(画像左上)、若者からの進路・就職、コロナ禍での困窮の相談を受け付ける「ユキサキチャット」を運営する認定NPO法人DxPの今井紀明さん(画像右上)、そしてNPO法人ダイバーシティ工房からSNS相談「むすびめ」のマネージャー佐藤佑紀(画像左下)です。

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運営現場からみえてきたことと、あらゆる支援形態がある中でのこれからのSNS相談の役割・あり方を考えました。

SNSだからこそつながれた実感

今井さんは、学校現場で直接若者たちと出会い活動をしてきた経験を振り返りながら、SNS相談は外で直接は出会えない若者とのつながりを生んでいると言います。

DxPでは学校現場の授業に入って高校生と直接出会い進路選択などの支援をしてきましたが、『ユキサキチャット』開始当初から感じていたのは、SNS相談ではリアルでは中々出会えない若者とつながるということです。家に引きこもっている、高校を中退していて所属先がないなど、街中では出会わない若者と接点を持つことができています。在宅という状況のままで進路や進学の支援をすることができました。(今井さん)

光本さんは、ツールとしての特性に触れ、SNSという手法、場所が相談のしやすさを生んでいると話します。

家族や家庭の問題は特に人に相談しづらいものです。親にはもちろん言えないし、学校の先生に言うと親に伝わってしまう。周囲から「人に相談するのがいい」「ここに窓口があるよ」とアドバイスを受けているケースもありますが、相談すること自体のハードルがまず高いんですよね。その中で、SNS相談は単語だけ送るでもいい、姿を見せなくても言語化できることから少しずつ進めていけるところが特徴だと感じます。(光本さん)

相談のハードルが下がるという点について、「むすびめ」では、相談を開始して初めて相談者自身が何に困っていたのかに整理がついていく様子が見られるようです。

「どうしたらよいかわからない」から始まる相談が多くあります。
何に困っているのか本人もわからない、どうにかしたい状況だけど課題が特定できない。そういったとき、まずは今の状況や気持ちを聞いていきます。相談者がそれらを言葉にしていくことで少しずつ向かう方向性がわかってきたりします。一緒に困りごとを整理するところから始まるので、これはSNS相談だからできたけど、周囲に直接話を切り出すとなるとそれは難しいだろうな、と思います。(佐藤)

相談から支援につなげるには

3団体で共通していることとして話題にあがったのが、SNSで相談を聞き、ある程度関係性を構築してきた中でも、支援の提案から相談者が実際に支援を受ける状態になるまでにはまだハードルがあるということです。

光本さん、今井さんは、その難しさを日々感じながらもやはり地道に相談者との信頼関係を築く作業を重要視していると言います。

基本的なことですが、やはりいかに話を聞ける支援者であるかということは強く意識します。相談者からも、過去に話を十分に聞いてもらえなかった、周囲が勝手に話を進め自分が望まない支援を提案された、という声を聞くことは多々あります。

文章だけのSNS相談は、困りごとの背景よりも先に「死にたい」「消えたい」といった言葉が出てくることも多いので、その背景に何があるのか、じっくり話を聞いていくことを大事にしています。(光本さん)
実際の支援につなげることの難しさを痛感しながらも、信頼関係を築いていく過程は、必要な情報をご本人に届けられるようになる点でもとても重要です。

同時に、一団体だけで重層的な支援をすることには限界があるので、他機関・他団体と連携をしています。他の機関や団体につなぐ場合も、本人に必ず意向を確認し、自分たちでもつなげ先に連絡をとってつながり先を増やすための土台を一緒に作ります。団体として、相談者の頼り先が複数あることが自立への道筋づくりにおいて非常に重要だと考えているので、信頼関係を築きながらも団体内だけには閉じないようにしています。(今井さん)

SNS相談のこれから ー支援者同士がどう連携できるかー

リアルな支援が必要とされるとき、その機会につなげていくためにも支援機関同士の連携が1つのキーワードとして出てきました。SNS相談という手法が広がっていく中で、支援者たちにとってなぜ、そしてどのような連携が必要なのでしょうか。

自団体で運営するSNS相談には「家族のこと・家庭環境」というカテゴリーがあるので、その枠外の相談ごとは他の相談先を紹介することがあります。自分たちとしても、信頼できる相談先でないとつなげられないなと思うので、団体同士の連携の必要性を実感します。自団体だけでは支援の着地点を見出すことが難しい状況でも、他の支援機関を頼ったり、連携しあう必要があるので、今後支援者同士も互いの顔を知っている関係性を築いていく必要があると感じます。(光本さん)
先ほどお話した一団体だけの支援に閉じないという方針に関連して、それぞれの機関や団体の専門性や特徴を活かして、「専門的な支援を提供する人」「友人のようにカジュアルな関係性の中で話を聞ける相手」など、その相談者に合う役割をそれぞれが担う必要があると思います。そのために、支援機関同士も頼りあい、相互連携をしていくことが重要です。

また、SNS相談はリーチはしやすいけれど、例えば医療的な支援やカウンセリングが必要とされると対応できないといったように、リアルの支援にしかできないことがあります。リーチはオンラインで、そこから先の支援への展開はどうしていくのか、連携のやり方も含め今問われていると思います。(今井さん)
オンラインでリーチがしやすくなったからこそ、再びリアルの場での支援の必要性やそれが成せることが浮かび上がっているようにも感じています。SNS相談をきっかけに、必要とされる次の支援へと着地させていくために、つながった後の展開のしかたを整備する中で支援機関同士の連携があるのだと、みなさんのお話を聞いていて改めて感じました。(佐藤)

本トークイベントでは、各団体がSNS相談に行きついた経緯や、支援機関の連携を難しくしているものは何か、といった話題にも触れています。

トークイベントの本編はこちらの動画からご視聴いただけます。
当日の様子や全編をお聞きになりたい方は、ぜひこちらからご視聴ください!


ダイバーシティ工房は「制度の狭間で孤立しやすい人たち」が、困った時にいつでも相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。無料のSNS相談『むすびめ』の他にも、学習支援、コミュニティカフェ、保育園、食料支援、シェルター運営などの活動を行っています。活動報告やイベントのお知らせを配信中ですので、ぜひメールマガジンにご登録ください。

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