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私たちは人の話を最後まで聞けているか? ー決めつけてしまう言葉ー

NPO法人ダイバーシティ工房が運営するLINE相談「むすびめ」の1周年に伴い、若者の希死念慮を生み出す生きづらさについて考える対談を実施しました。釧路に拠点を置き活動するNPO法人地域生活支援ネットワークサロン代表理事でネットの居場所ポータルサイト『死にトリ』を運営する日置真世さん、自らも生きづらさをを抱える若者当事者である『死にトリ』運営メンバーのOさん、Hさんをゲストに迎えたトークの様子をお伝えします。
※対談イベント(2021/10/23):若者の「死にたい」をどう受け止めるか?の内容を書き起こしています

前編・「生きづらさ」と「認められる」ことの関係 ー必要なのは承認ではなく否定されないこと 

佐藤(NPO法人ダイバーシティ工房「むすびめ」マネージャー)「あなたの生きづらさはどこからやってきますか?」という質問をし、ネット上のアンケートフォームで回答を集めました。一部ですが、こういった答えが集まりました。

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日置:これは全部正解ですよね。その人がそう思えばそうですから。

Oさん:当たり前を押し付けられる、とか、こうあるべき、とかっていうのは自分が一番強く感じる生きづらさの出所かなと思います。

佐藤:押し付けっていうのは、どういう状態で、なぜ感じることなんでしょうね。

Oさん:自分では何でもいいやと思っていても、世間のマジョリティと違うときに感じやすいように思います。

日置:あからさまな押し付けも嫌ですが、優しい押し付けが厄介だと思うんです。

私には重度の障がいがある長女がいるのですが、小さい頃とか外を歩いているだけで「頑張ってるね!」みたいな見られ方をしました。普通に買い物しているだけなんですけど、車椅子というだけで「大変でしょう、お母さん」とか言われる。悪気がないのはわかるんですけどね。「そんなことありません」と言うのも嫌な感じになってしまうし、でも言わないと勘違いされたままだし、でもやっぱり言えない、つらいな、というのはありました。

佐藤:色々な人から言われましたか?

日置:結構普通に言われましたね。例えば昔の同級生に会って「子どもに重度の障がいがあってね」という話をすると引かれるんですよね。聞いちゃいけないこと聞いちゃった、みたいな。こちらとしてはむしろ聞いてほしいんですけど。

佐藤:最後まで話を聞く前に「大変だね」「かわいそうだね」。そういう反応になっちゃうんですね。

日置:先に言わないでって思うんですよね。もし私が大変だったんだよね、っていう話をして、それは大変だったね、と言うのならわかるんですけど。

佐藤:勝手に決めてほしくないですね。

日置:人がどう思っているのか、何を考えているのかを聞くのが先だと思うんですが、こちらが話す前に先取りされてしまう。

キャンペーン中のもう一つの質問に「身近な人の『死にたい』という吐露に対しどういう反応をとりますか?」というのもあったと思いますが、そこに通じると思うんです。なぜそう感じるのかを聞く前に、「それはやめておけ」と言ってしまったりする。「死にたい」に限らず、あらゆる場面で言えることだと思いますね。

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日置:もし何か言うとしたら、言えることってその人が何を感じたかしかないと思うので、もし動揺したなら「動揺した」って言えばいいと思います。取り繕う必要はない。

『死にトリ』では経験談に対して感想を書いて投稿者にお返ししているのですが、感想を書く研修を毎月やっています。そこでも、自分が本当に思ったことを自分の言葉で書くことしかできないよね、という話になります。相手がどう感じるかを考えすぎると自分の感じたことを言えなくなってしまうから、自分が何を感じたのかをつかむのが大事。

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佐藤:若者メンバーは、どうですか?人の「死にたい」の吐露に対してどんな反応をしますか?

Oさん:自分にとって、世界は「死にたい」であることがデフォルトなので、「そうなんだ、そりゃそうだよね」という感じなのですが、どういう理由でということは普通に気になるので、聞くと思います。聞いていくとだいたい、そりゃ死にたいよね~という話になります。

日置:そうだよね。死にたいと思っているのにはそれなりの理由があるのだから、他人が否定する隙ってないのではと思う。よくあるのは、「そんなこと言うんじゃない」とか「死んじゃだめだよ」とか。

あーでもそれが自分の気持ちだったら言うしかないのかな。難しいですね。

佐藤:「そんなこと言わないで」というのも聞いた側の正直な感想、考え方ですものね。

Oさん:その人の考えは大事ですが、「そんなこと言っちゃダメだ」の場合は否定になってしまうのがだめなのかなと。

日置:そうだ、否定はだめだね。

あとは、返す言葉って立場によるところもあるのかなと。例えば私は若い人に「死にたい」と言われたら、本当にごめんなさい、こんな世の中にしたのは私たち大人です、という気持ちになります。

10代・20代に「死にたい」って言われたら、何も言わずに謝るべきって私なんかは思ってしまいますね。謝るだけでもだめで、どうしたらちょっとでもマシな社会になるかを考えて、「これをします」て言えないとなと思っています。

佐藤:「少しでもマシにします」という気持ちは多くの大人が持たないといけないんじゃないかって思います。

若者の「死にたい」をどう受け止めるか?』に続く



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