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特別支援学級の担任って②

「特別支援の担任って
 向き不向きあるじゃん。
 みほちゃんは向いてんのよ。
 私は向いていないわ。」

来年の学年配置を決める面談前に
こんな話を先生たちはしています。

通常学級と特別支援学級に向き不向きってあるの?

若いときは
そういうもんなのか、
わたし向いているって言うならよかった!
ぐらいしか思っていませんでした。

でも最近は向き不向きっていう表現は
微妙な気がしています。

先生ってあたり前ですが人間です。
いろんな人がいますよ。
でもって子どもたちも人間です。
いろんな子どもがいます。
それぞれがいろんな考え方を持っています。

何もしなくてもなんとな〜く
分かり合える子もいれば、
は?何なの?意味不明ですけど…
白旗をあげたくなる子もいます。

でも、それは特別支援学級だからってわけじゃなく、
通常学級の児童生徒でも同じです。
特別支援学級の子だから特別にね…
ではないかと思います。


じゃあみんなは何をもって、
特別支援学級の担任に向いている!
向いていないわ!
というのか。
今日はそれについて少し考えたいと思います。

特別支援学級の担任をしたことによって
考えるチャンスをもらったことや、
感じることができたことやら、
身に付けたいと思ったことやらを
書いていきますね。
気軽に呼んでいただければと思います。

【①自分自身の現状を知る】

振り返るとこれがとっても大切だったなと思います。
 
特別支援学級の担任をお願いします。
と言われて、拒否権はほぼなく、
はい!と言ったものの、
それから漠然とした不安の中を彷徨っていたことを
今でも覚えています。

この不安は
自信のなさから来るものなのでしょうが、
やったことないことなんだから
当たり前なんですけどね。
 
だからこそ、
過去の自分に教えてあげたい。

漠然と不安がっているより、
今の自分自身がどのくらい知識があるのか、
どんなことを知っているのか、
ちょっと書き出してごらんなさい!って。
わからないことがわからないまま
さわいでるんじゃなくて、
わかっていないことがわかった!にすれば、
次の手が打てるようになるものです。


学校では月に一度程度、
特別支援教育に関する委員会
通称・校内委員会が行われています。
校内委員会では、
特別支援を必要としている児童生徒について
情報交換をしたり、改善策を練ったり、
共通認識の確認をしたりしています。

そして、その場で
特別支援学級の担任について、
また在籍している児童生徒について、
特別支援学級で取り組んでいる内容について
話をしていきます。

特別支援学級の児童だけでなく、
通常学級に在籍する子で、支援が必要な子、
トラブルを抱えている子の情報も取り扱います。

「子どもを一人で悩ませない。
 担任を一人で悩ませない。
 学校はチーム、
 全校で把握して見ていきましょうね!」
というのがこの会の目的です。

でもですね、
この会の話を
ボーッとして聞いている先生って
結構多いと思います。

子どもと一日全力で過ごし、
職員会議が終わった後、
疲れがどっと出るような
タイミングで開かれることが多いこの会。

何百人もの児童生徒の中から、
よりすぐった数十人の子の話を
真面目なトーンでしていきます。

同じ学年の子ならまだしも、
名前も顔も知らない子だと、
全然頭に残りません。

通常学級の担任していた時の私も
例外ではなく…ボケーっとしていたうちの一人です。


しかし、
特別支援学級の担任をしてからというもの、
少し視点は変わりました。

まず、この会で発信する側になるから。
子どもを見ていないと発信なんてできません。
そして、特別支援学級の担任は、
自分の学級のみならず、
全校児童生徒と関わることが増えるからです。

特別支援学級の子どもたちは、
共同学習をするために、
自分の交流学級で勉強したり、
学年の行事に参加したりします。
その場所へ付き添いでついていきます。
すると自然と通常学級の子どもたちと
関わっていくことになります。

関わっていくと、
「おや、この子様子がおかしいな」
「あれ、何でこんな暗い顔してるのかな」
「ありゃりゃ、全然話に集中してないな、この人」
など気になる子たちが見えてきます。

そして、気になったことを
担任の先生に伝えたり、
校内支援委員会の時に情報提供したり、

逆にこの会で情報を手に入れたことを
次関わるときに有効に使って関わったり、

とこのようにいろいろとお得なことがあるので、
積極的にアンテナを貼っておくことをお勧めします。

〇障害を持っている児童生徒へのイメージは?
〇特別支援学級の担任のイメージは?
〇特別支援学級の教室のイメージは?
〇特別支援学級の授業のイメージは?
〇発達障害と聞いて何をイメージする?

まずは、自分自身と向き合って、
今の自分は、
何を知っていて何を知らないのか
を把握してみましょう。
全然わからなくてOK。
細かいところまで書き出してみると、
次にやるべきことだったり、
知りたいことが出てきます。

怖がらず、特別支援学級の世界に
足を踏み入れてみてください。

【②特別支援学級の現状を知る】

さて、己を知ったら、
次は、特別支援学級の中を見てみましょう。

〇教室は校舎のどこにありますか?
〇在籍は何人ですか?
〇教師は何人ですか?補助教員はいますか?
〇教室の中はどうなっていますか?
 机・いすの配置は?ロッカーや棚の中は何が置いてある?
 黒板、ホワイトボードはありますか?
〇どんな教材がありますか?
〇時間割は?
〇校内委員会の資料はありますか?
〇教育課程の内容は?
〇個別の教育支援計画の内容は?
〇個別の指導計画の内容は?
〇研究会の資料はありますか?
〇研修や出張はどのくらいの頻度でありますか?

これらの質問に答えられますか?
おそらく、特別支援学級の担任を経験された方なら簡単でしょう。
しかし経験のない方は、すっと出てこないことか思います。
本当、この質問、10年前の私に教えてあげかった…

特別支援学級は盛りだくさんです。
ええ〜通常学級より、
子どもの人数、少ないんだし、
楽そうじゃん!という声が聞こえてきますが、
やることはままありますよ。

特別支援と名のつく書類やらに目を通し、
市や県への書類作成、
ひとりひとりに合わせた
教育課程、教育支援計画、指導計画、
教材作り、授業研究、行事への取り組み・・・・・
もちろん、空き時間はありません。
トイレに行くタイミングが分からなくなりますw

そうなると、
ちゃんとしなきゃ!と一人で抱え込みがちになります。
私もすごく背負い込んでいました。

でもそんな必要はありません。
私ができなくても、
誰かはそれをヒョイっとやってくれるものです。
みんなで助け合えば問題ない。
チームで、全校で見ていくんです。
だから気負いせず
特別支援の世界に足を踏み入れてみてください!(二回目w)

【③在籍児童生徒の現状を知る】

ここは、特に大切です!
って言わなくても当たり前ですよね。

保護者は自分の子どもがかわいいです。
だから、
先生には自分の子どものことを
わかってほしいという心理が働くものです。

子どもに
「学校楽しい!!」
「学校行きたい!!」
と言ってほしいのです。


保護者や子どもは、
担任の先生を選ぶことはできません。

「○○先生は当たりだわ。
 あーあ、△△先生はハズレ」

と毎年子どもたちもママたちも話題にしますよね?
ちゃんと先生の耳にも入ってきますよ!
わざわざ教えてくれる方もいますからね。
よね?
子どもたちの間でもそんな話がされているのも
先生たちは知っています。

ああいやだな〜と思うよりも、
どうせならどうせなら、“当たりの先生”になってやりましょう。
その方がこちらも
テンション上げて取り組めますからね。
その方が気分良仕事できますもん!

しっかり対応していくには、
ここでもリスト化して、
チェックしていくのが効率的かと思います。

〇何年生?
〇男子 or 女子?
〇障害名は?
〇IQ は?
〇その子の特徴は?
〇成育歴は?
〇言葉でやりとりできる?
〇着替えは一人でできる?
〇トイレは一人でできる?
〇食事は一人でできる?
〇字は書ける?読める?
〇たし算、ひき算、かけ算、わり算は?
〇好きな食べ物と嫌いな食べ物は?
〇好きな遊びと嫌いな遊びは?
〇好きな科目と嫌いな科目は?
〇好きな教室と嫌いな教室は?
〇好きなことと嫌いなこと
〇得意なことと苦手なこと
〇今までの学校での様子は?(特別支援学級では?交流学級では?)
〇友達との関係は?
〇教師との関係は?
〇通知表(成績表)は?
〇家庭環境調査票は?
〇保健関係の書類は?
〇家での様子は?
〇親との関係は?
〇兄弟姉妹との関係は?
〇休日の過ごし方は?

子どもひとりひとりに合わせた関わり方をするためには、
子どもの細かいところまで意識を向ける必要があります。
項目がたくさんありますが、
丁寧に一つずつ書き出してみてください。

「ああ〜めんどくせ〜」
という声が聞こえてきそうですが、
なんだかんだ言ったって、
いずれかはやらなきゃいけないことなんです。
いろんな視点をちゃんともっておくと、
見えなかったこと、気づかなかったことも
見えてくるものです。

【④保護者の現状を知る】

ここも、とても重要です。
お母さんもお父さんも
少なからず不安や悩みを抱えています。

「うちの子は友達とうまくやれるか」
「うちの子の将来はどうなるのか」
「家で暴れて困る」
「すぐにキレる」
「家が散らかる」
「夫が協力してくれない」 など…

安定してないお子さんほど、
保護者の方がどっぷり疲れていることが多いと感じます。

私が実際に関わったお母さんで
「いっそ、この子を殺して自分も死のうって
 と子どもの首に手を掛けたことがあるの。」
と打ち明けてくれた方がいました。
何度も追い詰められた。
「母親がいけないんだ」と責められ続け、
そして自分自身でも自分を追い詰めてきたと。

お母さんやお父さんは、
子どもの障害を受け入れるのに、
数えきれないほど言葉で表せないほどの
さまざまな経験をしてきているのだと思います。

たくさんの壁を乗り越えてきて、今があります。
どれだけ自分を責めたり、
子どもを怒鳴ったり、
泣き叫んだりしてきたことか。
教師にはわからないこと、
親にしかわからないことがあるのだ
という意識を常に持っていたいです。

中にはまだ、
子どものことを受け入れられない
保護者も少なからずいらっしゃいます。


さて、そんな保護者のために
私たちに何ができるでしょうか。

よく、特別支援学級のマニュアルには、
「保護者に寄り添うこと、味方になること。
 そして、子どもたちを理解しようと努力すること、
 その姿勢を見せること。これに尽きます。
 がんばっていれば必ず、児童生徒にも保護者にも伝わります。
 距離が近くなります。認めてもらえます。
 ですから、前向きに楽しんでいきましょう!」
なんてことがさらっと書いてあります。

確かにそうなんですがね…
ここの部分は考え方が最近変わってきました。

先生だからといって、
四六時中非の打ちどころのない
完璧な人格を保てるなどということはないと思います。
少なからず私はできていません!

準備万端で挑んだつもりの授業でも
うまくいかないこともあれば、
自分が伝えようとしたことが
うまく伝わらないことなども多々あって、
そこからまた必死で次の手立てを考え講じる、
こんなことの繰り返しです。

さらに、子どもたちへの実践だけでなく、
保護者対応や膨大な量の雑務処理なども相まって…
毎日頭がボーン!となっています。

(だからよく教師のメンタルヘルスが問われるのも
 理解できなくはありません。)

私自身、子どもを取り巻く家庭環境が
昼ドラのようなドロドロ案件を担当したとき、
「この生徒を担任の自分がなんとかしてあげたい」
「自分にしかこの生徒を支えることはできない」
とまで私も昼ドラのメンバーだと錯覚して、
一人で抱え込み過ぎた経験がありました。

あっという間に自身の限界を感じまして、
瀕死状態の私に先輩たちが、
医療や地域福祉との連携を進めてくれました。
個人レベルでは解決しえなかった
制度や福祉サービスの活用という道が拓けて、
結果としてよりニーズに沿った支援の実現に至りました。

子どもたちや保護者の方から
自分が頼られている!と感じれば、
先生はもちろん嬉しい気持ちになり、
先生としての自尊心も保つことができ、
それを励みにさらに努力できることもあると思います。

でも、本当に良い教師像というものは、
マンパワーの力量で教育実践に挑むのではなく、
学校のチームの一員として、
協力しながら対応にあたれる能力を
もち合せているかということなのではないか
とも思うようになりました。

先生として、
子どもたちや保護者の方の期待に応えたい
ことは当然のことです。
しかし、それを実現するうえで、
教師としての立場や役割を踏まえ、
常識的な距離感を保つということも、
一方で重要なのではないかと思います。

この「常識的な距離感」っていうのが
どこで線引きをするかが
めちゃくちゃ難しいところではあります。

でもキーワードは、
先生の役割は「子どもを教育すること」

ここから一脱するような場合は、
教師が一人で抱え込むのではなく、
学校組織内や地域福祉や医療との連携が必要だと。

学校という場所は、
期間が限定される支援機関です。
在学中であっても、
次年度も担任できる保障もなければ、
教師は異動する可能性もあります。

「支える」ということは、
「教師個人に依存させる」ことではなく、
自分が担当を離れた後にも
「子どもが安定した環境に身を置ける」
ということを視野に入れて、
引き継ぎをしていくべきだと思います。

すると、「支える」とか
「寄り添う」とかいったことの本質を
見誤らないようにしなければないと思います。

その場しのぎに全ての要望を叶えることが、
ニーズに向き合うことなのか、
次に繋がる支援なのかというと、
それは必ずしもそうでないように思います。

保護者の方のこれまでの苦労や悩みを
十分に理解しつつも、
今後はどのような展開をもって
支援の質をより良く改善していけるのか、
そしてそれは結果として
子どもたちを支えていく上でも
重要なポイントになってくるんじゃないかと。

教師は子どもたちの教育者であって、
保護者のメンターにはなり得ません。
教育において主語にあるべきは、常に「児童生徒」

保護者の方のニーズを受け止めつつも、
子どもたちが家庭の中で、社会の中で、
安心して生き生きと過ごし、
誰からも愛されて生活できるように、
道筋を作っていくのが教師の役目なんだと感じます。
 
信頼に足る教師であるために、
専門性を高めていくことはとても大切なことです。
子どもの認知の理解、発達の理解、障害理解、
教科指導、生活指導、進路指導、保護者や専門家との連携など、
今までに挙げた通り、
多岐にわたって専門性が問われています。

子どもたちが何につまずいているのか、
どのような手立てがあれば
その課題の達成や克服に至るのかを十分考えて、
指導や支援に当たるべきです。

そのためには、
指導内容や指導方法の工夫だけじゃなく、
個別のケースに応じた支援の考慮も必要。

しかし、教師が知識ばかりを増やして
理論家になってしまうと、
今度は自分の知っている範囲の情報の中でしか
子どもたちを見られなくなり、
実際にうまく支援できなかったことに対して、
「自分はこんなにやっているのに
 周りの人間の理解が至らない」
「自分がやるべきだと思っていることがあっても
 それができる環境にない」
と人のせい環境のせいにしちゃうものです。

すると、
子どもの困り感と実際の支援とが
噛み合わない状態となり、
結局のところしわ寄せの行先は、
子どもになってしまうという悪循環が生まれます。

思うに、
少し遊びがあるとよいと思います。
自分の知っている情報や枠組みの中に
子どもたちを当てはめようとするのではなく、
自然体で暖かく穏やかに子どもと向き合うという
余裕をもった発想も時には必要だと思うのです。

この数十年の教育史の中で、
教育の質はどれだけ変動してきたことでしょうか。
特に特別支援教育においては、
飛躍的な進歩があったように思います。

と言っても
個人的な考えを言えば、
一人の教師が実践した教育効果を
本当の意味で検証するのであれば、
卒業後5年後10年後も
追跡調査をしなければならないです。

でも実際にはそんなことは無理だし、
それどころか、動向はどんどん変化していき、
きっと今後も新たな手法が
次々と注目を浴びていく。

例えば
自閉症教育一つとっても、
構造化や応用行動分析や感覚統合など、
様々な分野の手法が
有効な支援の手立てとして取り上げられ
学校教育でも実践されてきました。

その一つ一つは実証された支援効果があり、
多くの人たちを救ってきたことに間違いありません。
私も大きく影響を受けてきました。

でも一方で、教員が見様見真似でやってみたとしても、
それは型でしかなく、本質的な教育効果を検証されるまもなく、
対症療法的に取り扱われているのが現状であったりもします。

子どもたちが安心して豊かな生活をしていく上で、
学校にいる間に身に付けるべき必要な支援の手がかりとして
それらが活用される分にはとても良いことだと思います。

でも、それを知っている支援者だけができて、
そうでない支援者はできないことや、
それが一時的にしか実践されない、
また引き継がれないといった現状は、
結果として子どもにとっても
家庭にとっても負担であり、
その支援は果たして意味があったのかと疑問に思うんです。

もちろん教員間や進路先へなどの
引き継ぎも必要でしょう。
ただ、本来は
最も身近に子どもを理解する保護者の方への
支援の引き継ぎこそが一番大切なのだと思います。

本当の信頼関係とは、
相互が自立した関係の中で
育まれていくように思います。
現状の自分と相手との関係が
良好かということだけではなく、
自分が離れた後のことも考えて、
子どもたちや保護者の方の
幸せな生活への道筋を作り、
それを自分も相手も実感できたかどうかということが
大切なんじゃないかと感じております。

だから、実践を振り返って客観的に判断した時に、
教師の独りよがりや
自己満足や押しつけであってはならんのです。
その担任がいなくなったら
子どもたちが総崩れとなる支援では意味はありません。

私自身もいろいろなことをやってきて、
紆余曲折を経て、たくさんの失敗を経験して、
教師11年目を迎えた今思うのは、
教育の手法もさることながら、
子どもの成長を信じて見守るということの大切さです。
テクニックだけでなく、
心に立ち返る必要があるのだと、考えています。
そして、人の心を動かすのも、信頼を得るのも、
やはりテクニックではなく心なのだと思んです。


とまあ、つらつらと書いてみたわけですが、
ほら、これって
特別支援学級だから
ってことないと思うんです。
向き不向きなんてなくて、
いかに自分の心をしっかり持つかかな

と思う今日この頃なのです。

よろしければサポートよろしくお願いします。授業準備に使用し子どもへ還元します♫