プレスリリース〝出す側〟から〝取り上げてもらう側〟になって気づいた「残酷な事実」#ずるい文章術 vol.4
こんにちは。奥山です。
2014年にウェブメディアwithnewsを立ち上げて、ずっと編集長をやっていました。
気づけば8年経っていました。
会社員なので人事異動というのがあり、うちの会社の場合、だいたい3年くらいでそれはやってきます。
そんな中、8年も同じプロジェクトに専念させてもらえたのは感謝しかありません。
しかし、とうとう、その時がやってきました。
2022年6月、withnewsを離れ、グループ会社サムライトに職場を移しました。
創業140年を超える古くて大きい会社から、10期目のベンチャーに職場が変わるということで色んな新発見をすることになるのですが、一番の変化は、そういうところではありませんでした。
立場が逆転したのです。
リリースを出す側のがんばりは関係ない
サムライトはコンテンツマーケティングという領域から、色んな会社の宣伝、プロモーションをお手伝いすることを仕事にしています。
つまり、これまでメディアの側からプレスリリースを取り上げていたのが、プレスリリースを出す側になったのです。
そうすると、それまでうっすら感じていたことが、くっきり見えてきました。
けっこう工夫しないと、メディアはニュースにしない、という当たり前すぎる事実。なにより、ユーザーが話題にしてくれないという現実です。
一つのプロジェクトがお披露目できるまでってものすごい時間と労力がかかっているのに……と思ってしまうのですが、悩んでいても仕方ないので、その理由を、あらためて考えてみました。
それで一つ、わかりました。
残念な結果になるやつと、そうじゃないものを分けるものの違い。
それは〝ひねり〟です。
企業の広報やPR、宣伝の立場にいると、自社の新製品について発信する機会が数多くありますよね。
新製品に使われている最新テクノロジーを紹介する、新製品を活用した先にある未来イメージを提示するなどの伝え方があるかと思います。
新しいサービスによって、これまでにない未来がやってくる。
一見、美しいです。
でも、それだけでは、もう一歩足りない。
ストレートすぎる。
つまり、〝ひねり〟がないんです。
ひねりがないとスルーされる
考えてみてください。
情報を出す場所はスマホです。
たいていの人は何かをしながら画面を眺めています。
Twitterの合間に動画を見る。ゲームの合間にインスタを覗く。
そんな、たくさんの誘惑がある中で〝ひねり〟がないものは、ユーザーの視界に入ってきません。スルーされてしまいます。
メディアもユーザーが関心を持たなさそうなものには食指が動きません。
欲しいのは、「ハッとさせる要素」です。
その時、活躍するのが、「最も縁の遠いものをぶつける」という手法です。例えば、PayPayについて取り上げた記事。
「最新のテクノロジー」と接点がなさそうな「地方」が、実は、電子マネーの最前線だったという内容になっています。
記事では、PayPayの導入店を広げる仕事をする営業の人が、静岡県内の飲食店をまわる1日を描いています。
「現金のみ」のイメージが強い地方で、担当者はどうやってPayPayのよさを理解してもらい、お店の人に導入を決心させるのか。店の外観から当たりをつけ、同じ店に何度も通って理解を得るという、地道な努力を伝えています。
記事が配信されるとSNSで反響を呼び、たくさんのコメントが寄せられました。
そのうちNewsPicksに取り上げられ、多くのピッカーからコメントをもらいました。
電子マネーに関わるIT企業の拠点は、ほとんどが東京です。
必然的に東京での話題が多くなります。
最先端の情報を追いかけることは大事なのですが、そのまま伝えても十分な効果は発揮できません。どのコンテンツも似通ったものになってしまうからです。
それが、「地方」を絡めることで一変します。「最先端」のイメージがない「地方」だからこそ、電子マネーのもつ新しさ、現金との違いが際立ちます。
当時は、ちょうどPayPayが猛烈にシェアを伸ばそうとしていた時期。「最新のテクノロジー」と「地方」という取り合わせは、新しいビジネスが普及する際の事例として、企業経営に関わる人の琴線に触れたのだと思います。
最も縁遠いものをぶつける
こうした「最も縁遠いものをぶつける」作戦は、こちらの記事でも効果を発揮してくれました。
VR(バーチャルリアリティ)は、デジタルに詳しい若い世代が使うものという固定観念があるかもしれません。
そこで、登場するのが「おじさん」です。
記事では、VR上で美少女になってしまった50代の男性を直撃。
識者のコメントを交えながら、VRが今後、社会にとってどのような存在になるのかを考察しています。
さらに、「平安時代」に紀貫之が女性を装って書いた「土佐日記」にも触れています。これもまた、VRとの意外な組み合わせになります。
若い世代がVRの世界にはまっていることを取り上げても、違和感はありません。あるいは、SF小説にVRが登場するのも普通でしょう。
このように、相性が良すぎる要素の組み合わせは、ユーザーのアンテナに引っかからない。
VRに「おじさん」や「平安時代」の文学をぶつけることで、最新のテクノロジーの実像をあぶり出しているのです。
大事なのは、ストレートに伝えないこと。
ユーザーは、ありがちな構図に飽き飽きしています。
最も縁遠いものをぶつける。
違和感のある要素を組み合わせる。
テーマを選ぶ段階で、「お、これは、なかなかきれいなつながりだな」と思ったら、むしろ立ち止まったほうがいいかもしれません。
そして、もう一度、発想の転換をしてみることをおすすめします。
といったことを『スマホで「読まれる」「つながる」文章術』という一冊の本にまとめました。結果を左右する配信時間の工夫、企業のプロモーションにも絶大な効果を発揮する「地元ネタ」の使い方など、実際の事例を踏まえて紹介しています。よろしかったらぜひ。
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