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これからの組織開発を考えるうえでのポイントは?『図解 人材マネジメント入門』【無料公開#31】

電子版5月28日、書籍版6月26日発売の『図解 人材マネジメント入門』では、人材マネジメントの理解と実践に役立つ100のツボが紹介されています。その中でマネジメントする側・される側双方に役立つ30のツボを、毎日1つずつご紹介していきます。

Q:これからの組織開発を考えるうえでのポイントは?

A:大きく仕掛けず小さな成功を狙う。手段に踊らされず現実を直視する


組織開発の定石

組織開発には定石があります(図表090)。

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「事実」をもとに、キーパーソンを「巻き込み」、「小さな成功」をもとにして現場が「自走」できるように整備して拡大するというサイクルです。

小さな成功(スモール・サクセス)を狙う

私が各社へ組織開発の支援をしていて、特に大切だと感じるのは「小さな成功」です。
突然会社全体に実施するのではなく、チームや部署など小さな単位から始めて、そこでの成功パターンをもとに広めていくこと。
企業の成功モデルや他社実例は、その本質を見極めずにそのまま真似をすると、必ず失敗します。
自社の中で、賛同してくれるキーパーソンとともに小さく始め、そこでの成功体験を持って他の部署へ展開しましょう。目の前に成功実例があると「うまくいく取り組みなのだ」と前向きな姿勢が生まれ、かつ「わからないことは成功した部署に聞こう」という安心感と一体感が醸成されていきます。

事実を捉えるツールは進化している

世界のビジョナリーカンパニーでも日本の持続的成長企業でも「厳しい現実を直視すること」が強く謳われていました。
「事実」を捉えることは組織開発の起点です。そのためのツールはこの数年でも大きく進歩してきました。
かつて従業員満足度調査などの組織アンケートは準備や集計に時間がかかり、気軽に実施することができませんでしたが、この数年での進歩は大きく、回答する従業員にとっても、分析活用する人事やマネジャーにとっても使いやすいものが登場しています(例えばアトラエ社のエンゲージメント測定ツール『wevox』など)。

手段に踊らされず「現実を直視」する

しかし便利に調査できることと、現実を直視することは別の問題です。逆に調査結果に振り回されるようなことになっては意味がありません。
組織アンケートの結果を点数化・偏差値化して得点の上がり下がりに一喜一憂する、といった「手段の目的化」による弊害はすでに多くのシーンで見られています。

大切なのは「現実を直視」することです。

組織開発において組織アンケートを使う時、点数などの定量データは「レントゲン写真」のように使うことをお勧めします。例えば、全社の中で、この部門だけ上司への信頼の項目が低い、この職種だけが賃金への不満が多い、昨年の結果と比べて主任は仕事の量の負担を感じている、など。どこに影があるのかを掴むことに使用するのです。そして気になる人たちには実際に会いにいって状況を聞きましょう。事実は現場の「人間」の中にあります。


<著者プロフィール>

坪谷邦生(つぼたに・くにお)

株式会社壺中天 代表取締役、株式会社アカツキ 人材マネジメントパートナー、株式会社ウィル・シード 人事顧問、中小企業診断士、Certified ScrumMaster認定スクラムマスター。 1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。 20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。 主な著作『人材マネジメントの壺 ARCHITECTURE』(2018)、『人材マネジメントの壺DEVELOPMENT』(2018)など。

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