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組織開発とチェンジ・マネジメントは何が違うのか?『図解 人材マネジメント入門』【無料公開#23】

電子版5月28日、書籍版6月26日発売の『図解 人材マネジメント入門』では、人材マネジメントの理解と実践に役立つ100のツボが紹介されています。その中でマネジメントする側・される側双方に役立つ30のツボを、毎日1つずつご紹介していきます。

Q:組織開発とチェンジ・マネジメントは何が違うのか?

A:組織開発はプロセス・人間関係を重視した当事者主体の取り組み


組織開発の特徴を掴むために、よく似た概念であるチェンジ・マネジメントとの違いをアメリカの研究者マーシャクの論を参考に考えます。

チェンジ・マネジメントとは何か?

チェンジ・マネジメントとは、1990年代から大手のコンサルタント、マッキンゼーやボストンコンサルティングなどが行ってきた組織を変革する方法です。
大規模な変革計画をトップダウンで作りながら、メンバーを巻き込みプロセスに働きかけるアプローチで、組織開発の定義に照らしても似ていることがわかります。

チェンジ・マネジメントと組織開発の違い

どちらもプロセスに働きかけて成果を目指しますが、チェンジ・マネジメントはあくまでも成果を強調し、経済的な価値を尊重します。組織開発ではプロセスを強調し、どのように進めていくか、そして人と人との間に何が起こっているのかに着目し、人間的な価値を尊重します。

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進め方としては、チェンジ・マネジメントでは基本的に少数派の人たちが作って進めていきます(エリート・プロセス)。一方、組織開発では、できるだけ多くの人に参加を促し、決定する時にも多くの人が関与できるようにして進めていきます(パーティシペイトリー・プロセス)。

変革におけるマネジメントのスタイルにも違いがあります。チェンジ・マネジメントでは方向を示唆して、ディレクティングしますが、組織開発ではファシリテーションやコーチングによって当事者がどのようにしていくか、どのように変革に取り組むべきか、そのプロセスを支援します。

組織開発の特徴

成果よりもプロセスをどのように進めるか、人と人の間に何が起こっているかに着目し、多くの人に参加を促し、当事者主体である。チェンジ・マネジメントと比較することで組織開発の特徴が見えてきました。
言葉だけを見るととても理想的に見えますが、実際にはトップダウン・少人数で成果を追いかけた方が効果的であることもあるでしょう。速く確実であるため大手コンサルティング会社がその手法を磨いてきたのがチェンジ・マネジメントであるからです。

組織開発的なアプローチを選択するということは、大人数を巻き込んで当事者が旗を持つという困難な壁を乗り越え、人間関係という複雑な対象に取り組み続けるということです。そのためには、経営と組織開発を担当する人に覚悟と知識が必要です。

次回は、その組織開発を誰がどのように行うのかを考えます。

<著者プロフィール>

坪谷邦生(つぼたに・くにお)

株式会社壺中天 代表取締役、株式会社アカツキ 人材マネジメントパートナー、株式会社ウィル・シード 人事顧問、中小企業診断士、Certified ScrumMaster認定スクラムマスター。 1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。 20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。 主な著作『人材マネジメントの壺 ARCHITECTURE』(2018)、『人材マネジメントの壺DEVELOPMENT』(2018)など。

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