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スクラムとは何か?『図解 人材マネジメント入門』【無料公開#30】

電子版5月28日、書籍版6月26日発売の『図解 人材マネジメント入門』では、人材マネジメントの理解と実践に役立つ100のツボが紹介されています。その中でマネジメントする側・される側双方に役立つ30のツボを、毎日1つずつご紹介していきます。

Q:スクラムとは何か?

A:ソフトウェア開発における実践的な組織開発手法。人事部門においても活用が始まっている


ソフトウェア開発のフレームワーク、スクラム(Scrum)をご紹介します。
なぜ人材マネジメントの入門書で? と疑問を持たれたかもしれません。しかし「最良のアーキテクチャ・要求・設計は、自己組織的なチームから生み出されます(アジャイルマニフェストより)」というその思想から分かるとおり、これは非常に実践的な組織開発手法です。
DeNA社やアカツキ社の人事部門でも活用が始まっています。

現状を把握するためのフレームワーク

スクラムとは「現状を把握するためのフレームワーク」です(1995年にケン・シュウェイバーとジェフ・サザーランドが共同発表)。
ソフトウェア開発においては日々変化する要件を新しい(不安定な)技術を利用して実現するといったいくつもの複雑さをかけ合わせた場面が多く存在します。
スクラムはこのような複雑度が高い領域において、現状把握を手助けし、自分たちが直面している問題に気づきを与えるものです。

マネジャーに代わる3 つの役割

スクラムには3つ役割が定義されています。
投資対効果(ROI)を最大化させる「プロダクトオーナー」、自律的なチームを作る「スクラムマスター」、生産性を向上させる「開発チームメンバー」。マネジャーに集中しがちな役割をチームで3つに分担してゴールに向かう考え方が特徴的です。一人の天才ではなくチームの力を信じる手法です。
逆に言えばメンバーには「主体性」が求められ、スクラムの語源であるラグビーの陣形のように仲間と「力を合わせる」ことが必須となります。「誰かがやってくれる」「自分のことだけやっていたい」と思っていると開発は進みません。

ユーザーに価値を早く届け続ける

これまでの開発(ウォーターフォール型と呼ばれる)手法ではユーザーに製品を届けるまで長い検討時間が必要でしたが、スクラム開発ではスプリントと呼ばれる一定の周期(1~2週間が多い)毎に「動く製品」を出し続けます。

変化が早く複雑なソフトウェア開発においては、ユーザーからのフィードバックと開発チームメンバーの課題解決のループを「短期間」で何度も回し、製品を磨き続けるスクラムのやり方が適しているようです(アジャイル開発と呼ばれます)。

作った物の価値を決めるのは、自分たちではなくユーザーです。価値を短いスパンで数多く届けることによって、真の問題に早く気づくことができ、活動の「意義と目的」が明確になります。
この実践を続けることが自律的なチームを育てていきます(図表089)。

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次回はこれからの組織開発について考えます。


<著者プロフィール>

坪谷邦生(つぼたに・くにお)

株式会社壺中天 代表取締役、株式会社アカツキ 人材マネジメントパートナー、株式会社ウィル・シード 人事顧問、中小企業診断士、Certified ScrumMaster認定スクラムマスター。 1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。 20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。 主な著作『人材マネジメントの壺 ARCHITECTURE』(2018)、『人材マネジメントの壺DEVELOPMENT』(2018)など。

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