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オンライン授業導入の課題を整理する

休校措置が続く地域においては、子どもたちの学習をどのように進めるか、あるいは学習の機会を確保するかということが喫緊の課題になっている。今、盛り上がってきているのはオンライン授業。しかし「進みが遅いな」と思う人たちも多いだろう。私なりにこうしたICTを活用した学習/授業の課題を整理してみた。なお、これはひとりの教員から見た課題であり、自治体規模の課題ではないという点にご留意いただきたい。

所属組織のセキュリティポリシーの問題

正直いって、これが一番大きい。各所属の情報機器を使用する際のルールは、オンライン授業やICT活用授業を想定していない。特にネックになるのは、外への情報発信手段が限られている点。これは個人情報などの漏洩を防止するために、徹底的に遮断されているところも多い。

例えばSkype、zoom、YouTubeなど、豊富にあるシステムを使うためにはシステム改修が必要な場合もある。そもそも一個人の判断で接続したり、アカウントを取得したりできない。

上のファイルは、文部科学省より通知されているICTの積極的活用について。長い通知だが、冒頭に「平常時における学校設置者や各学校の一律のICT活用ルールにとらわれることなく」活用せよと通知されている。文科省もセキュリティポリシーなどが活用の弊害になる可能性を認識しているわけだ。あとはそれをどのように引き受けて各自治体で運用するか・・・

所属する一個人としては、すでにあるルールを個人的に破って行動することは得策ではない。平常時であれば懲戒処分の対象になりうるものだからだ。こうしたルールの存在が大きなブレーキになっている。「やってよいこと」、「できること」、そして「いつまでそれを続けてよいのか」といった、緊急時のルールを示してもらえると、かなり動きやすくなる。あわよくば、こうしたルール作りの場に、現場の教員を参加させてもらえると・・・と思うが、こうしたルール作りの場に現場マターの人間が参加することは、ほとんどない。

著作権問題

授業に使用する際の著作権はかなり優遇されている。個人的には、著作権などの各種権利を正しく活用した授業資料を示すことで、それを見ている子どもたちにも著作権を守ろうという意識を付けさせたいと普段から考えている。そこで、話題になるのが、令和2年4月28日から施行された「授業目的公衆送信補償金制度」。本来の予定を前倒しにして、4月からスタートした新制度である。

もともと対面授業(つまり普段の学校の授業)や、対面授業を同時中継して遠隔授業をする場合は、無許諾で複製使用が可能であった。印刷・配布も可能である。しかし一方で、これまでは対面授業が基本とならない(動画コンテンツを使用して学習者に見せる)場合は、著作権者の許諾が必要であった。これを円滑に行うことを目的に設立されたのが、今回の補償金制度である。

で、問題は、こうした法令条文を的確に読み解くことは非常に労力がかかるという事実である。

例えばこれ。このQ&Aの問77には、以下のように記載されている。

 この制度は、今般の新型コロナウイルス感染症に伴う緊急的な対応として、当初の予定を早め、令和2年4月28日に施行されており、また、補償金額は令和2年度に限って特例的に無償となっております。これにより、例えば、担任の先生が予習・復習・自宅学習用の教材をメールで送信することや、リアルタイムでのオンライン指導やオンデマンドの授業において、講義映像や資料をインターネットで児童生徒等に限って送信することなどが可能となります(※)。
 なお、例えば、学校での購入が想定されるドリル・ワークブックをそのまま送信するなど、著作権者の利益を不当に害する行為は認められませんので、御注意いただければと思います。令和 2 年度における具体的な運用指針(ガイドライン)については、権利者と教育関係者で議論が進められた結果、4月16日に取りまとめのうえ公表(https://forum.sartras.or.jp/info/004/)されましたのでそれらもご参照ください。

つまりオンライン授業や動画コンテンツ配信では使用可ということが分かる。が、ドリルやワークブックのそのまま送信はダメだということになる。それらを使用して双方向で授業をすることは問題ないのだが、例えば「答え」の送信はどうなのだろうか?中には付属している答えを預かり、学校保管にして丸付けをするという先生もいるだろう。その場合はどうなるか?全員購入しているからよいのか、否か。

こうした細かな実務運用については、各自治体の方針や説明によって成立している側面がある。しかし、この社会的混乱の中で何となく前に進んでいる。緊急事態である特殊性が、今の状況を許してはくれるだろうが、それでも「どこまでやってよいのか調べきれずに二の足を踏む」先生はいるだろう。

学習者のスキル問題

これも大きい。冷静になって考えてみる。なぜ子どもたちは配られたプリントやワークブック、ドリルに基づいて、今学習をすることができるのか。それは学校でえんぴつと紙を使い、プリントやワークブック、ドリルを使った学習を何度も何度も経験して、ある程度のやり方を知っているからだ。

大人であっても、新しい方法で仕事をすることに難しさや大変さを感じている。例えばzoomなどを使ったオンラインコミュニケーションのスキル、マナー的な部分を思いついたものだけ、列挙してみよう。

・発言者以外はマイクオフ。
・あるいは一人の発言者が話し終わるのを確認してから発言。
・発言者はゆっくり丁寧にしゃべる。
・聞き取れなかった部分は丁寧に聞き返す/あるいは類推する。
・音声だけでは伝わらないものについて、カンペなどを用意する。

もちろん、これ以外にも多くのクリエイターの方々がオンライン会議のポイントや所感をまとめてくださっている。

子どもたちは、普段の学校生活で、挙手をして発言をすることや発言者の方を見て聞くことなどを教えられる。コミュニケーションの作法としての基本スキルである。オンライン授業をするのであれば、オンライン授業の作法、スキルを身に付けて、やり方を知ることが大切だ。ということは、まずはオンライン授業をするためのオンライン授業が必要ということになる。

例えばGoogle classroomや付箋共有アプリなどなど、たくさんのオンライン授業を進めるツールがある。あるが、まずはそのツールを使いこなす時間が絶対的に必要。指導者側もすぐに本番の授業ができると思ってはいけない。どんな話題で、どんな形で、オンライン授業を経験させるか。こうした観点で練習の時間を取る必要がある。

しかし、こうした観点から、情報機器の基本的操作スキルを指導するための教材研究をしている教員は、あまり多くはない。この観点を広げていくことが必要だと考えている。

「できない理由探し」批判は水掛け論

「できない理由」を探して、できないことばかりを主張する。こうした姿勢に対して、できない理由ばかりを探して結局前に進まないのは、子どもの学習する権利を保障する動きにはつながらない。やわらかい頭をもってほしい・・・という批判をよく見る。

確かに一理ある。緊急時であることを踏まえても、あらゆる方法を学習する/させる手段を整備しておくことは必要だ。選択肢が増えることは、教える側はもちろん、学習する側の子どもたちにとっても幸せなことである。

だが、この「できない理由探し」批判もまた、単なる水掛け論で解決策を示しているわけではない。実際に「できない理由」がそこに存在するからだ。必要なことは、こうした「できない理由」を探した上で整理し、それにどのような形でアプローチするかという考え方。できない理由のさらに一歩先まで考えを進めるという考え方ではないだろうか。

様々な人が、様々な角度からアプローチし、それによって浮き彫りになった「できない理由」を共有する。そしてそれを解決する方法を考え、またその解決方法も共有する。そうした取り組みが必要になるだろう。共有の仕組みづくりを考え始めていきたいと思う。

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公立小学校教員/感じたことを素直に/フォントと見やすさデザイン/ユニバーサルデザイン(UD)/アニメや漫画/考えたことを素直に/アウトプットの機会を確保する
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