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2021年7月3日静岡県熱海市での土砂災害による人的被害についての調査速報(2021年7月28日版)

 熱海市伊豆山での土砂災害に伴う死者・行方不明者は27人に上り、7月28日現在でもなお5人の方の行方がわからないままです。大変痛ましいことが起こってしまいました。2021年7月3日静岡県熱海市での土石流災害について(第10報)でも述べましたが、当方では最近約20年間の風水害犠牲者の発生状況についての調査を継続的に行っています。あらましはこちらをご覧下さい。

 これまでもnoteでいくつかの報告をしてきましたが、今回の熱海市伊豆山での土砂災害についても同様な調査を実施中です。今回、7月27日時点までに得られた資料にもとづく調査結果を簡単にとりまとめたので、以下に公表します。なお、新型コロナウィルス感染症の対策の観点もあり、現地踏査は7月6日に1回ごく簡単に実施したのみで、基本的には報道、各種文献、ネット上で得られる情報をもとにした調査となります。なお、限られた情報に基づく推定結果であり、今後大きく修正される可能性もあります

調査速報の要旨

人的被害の概要
・死者死者・行方不明者27人。風水害の1事例の犠牲者数としては、ほぼ毎年発生している規模
・1箇所で発生した大雨に起因する土砂災害の死者・行方不明者数としては、昭和57(1982)年7月豪雨の長崎市川平地区(34人)以来最大
発生範囲
・現在発生場所が推定されている全員(21人)が、流失・倒壊家屋の居住・勤務者
・谷出口から下流部まで点在。下流部まで急勾配が続く地形による可能性
犠牲者発生の原因外力
・1箇所での災害であり、全員が「土砂」
年代・性別
・60代以上が6割以上で、筆者が調査している1999年以降の風水害とおおむね整合的
・女性の比率が7割と高い。土砂災害犠牲者の性別比率としては1999年以降の風水害と整合的(なお、風水害全体では男性の比率が高い)
犠牲者発生場所
・ほとんどが「屋内」。土砂災害犠牲者の発生場所としては、1999年以降の風水害と整合的
避難行動
・「避難行動あり」は2割で、1999年以降の風水害とおおむね整合的
・いずれも自宅付近で遭難と推定され、自宅から離れた場所を避難中の遭難とは確認できない
災害危険箇所と犠牲者発生場所
・発生位置が推定された全員が土砂災害危険箇所「範囲内」「範囲近傍」。1999年以降の風水害と整合的

 1箇所で発生した土砂災害に伴う死者・行方不明者数としては比較的大きな規模となってしまったことが特徴と言えます。一方、死者・行方不明者の様々な傾向については、筆者が調査している1999年以降の風水害犠牲者に見られる傾向と大きくは異なっていないように思われます。

調査速報本文(PDF)

 調査速報の本文(Powerpointスライド4枚を1ページに縮刷したPDFファイル)は、下記からダウンロードしてください。

 本災害についての調査結果や関連事項については、下記noteのマガジンに逐次整理していきます。


記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。