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手を汚せ、手をヨゴセ!

この数年間、ずっと自分に合う生活スタイルを探していたように思う。猛烈に働く30代男、みたいなものにも憧れていた。だって、かっこいいもん。稼げる男はかっこいい。IT、アプリ開発、メディア、ニューズピックス、なんか、こういうのはとにかく得体が知れずかっこいい。
  
得体がしれずかっこいい、のなかにはややタチが悪いものもある。なんでかって、ブレるから。芯がない、とか言われがちなのはそういうのについつい飛びついてしまう男じゃないかね。そういうアホな男を目掛けて仕掛けてくるメディアも多い。くそう、ついやられてしまう。

そういうものにノッてみるのも悪くはないが、いつまでもそれやってると、だんだん辛くなる。ちょろっと憧れてるだけで、なんでもかんでも真似できるほどビジネスの世界は甘くない。それくらいはわかる。
 
けれど、なんとなくかっこいい、この理由だけで、僕はまあまあには働いたと思う。憧れてる理想像とはやや違うが、とにかく人と会うようにした。ピアノを弾いた。お金を小さいながら、回した。小規模だけれど、僕にしては随分がんばったなと思う。たかだかコーラスディレクターの仕事だ。にしてはまともだ。偉い偉いと、自分自身で褒めて遣わしたい。そういう生活で、きっと正しいはずだと思っていた。
 
ところがどうだろう。

いま、こうして、感染症のおかげで、対面の仕事がストップすると、ああ、これでいいのかも、と思える。翼が生えた感じ、、
の逆だ。もっとこう、小さいイメージ。土を歩くアリンコみたいな感じか。アリンコが翼を生やそうとしていて、いままで、みっともなかったかもしれん。飛べやしないのに、飛ぼうとする感覚。アホみたいだ。
 
土を歩くアリンコ、とはいい表現かもしれない。アリンコなんて誰かのためにせっせ、ていうイメージがあるから、僕はあまり使わない比喩だけれど。でも今使いたい。自分と、家族のために、身の程をわきまえて、土の上を自分の足で歩くアリンコは悪くない。ハリボテの翼とはサヨウナラ、こんにちは、僕の手足。

絵を描き始めた。デジタルじゃなくて、アナログで。あー、そうか、デジタルじゃだめだったのかもしれない。アナログで描くといいことがある。手が汚れる。手が汚れるのがいい。なんでって、パソコンもスマホも触らなくなるじゃない。そう、Twitterも、Facebookも、メールも、ラインも、すべてから脱出できる。
 
手を汚さなきゃダメだったんだな。僕は。僕は、てか、もしかしたらあなたも。綺麗な手で過ごし続けると、何かが狂ってくる。手を汚せ、手をヨゴセ。

これがうまくはまった。せいぜい書くのは一日一枚。ノルマとかかすと、僕はどうせダメになるけれど、パステルで描く絵は一枚に時間がかからない。それに、準備もだるくない。油絵は準備がだるすぎてだめだ。
 
「個展やってください、演奏つきで!」
 
えーなに、それアーティストみたいだな。はは、そうだ、100枚絵が描けたら、個展やろう。そこでピアノ弾いて、妻のマオを呼んで最後はコーラスをして、そういうイベントをやろう。ピアノ、ボイストレーニング、ゴスペル、マオ、文章、絵。よくわからない存在で、そのまま誰かに受け取ってもらう、そうして生きていこう。

ここからは自由に値段を設定して投げ銭することができます^^