NETFLIXを解剖する
前回までは「ティール組織」をテーマに記事を書かさせていただきました。
前回記事はコチラ→「ティール組織を考える(後編)」
前々回記事はコチラ→「ティール組織を考える(前編)」
今回は、ティール組織的な要素を有しながら面白い組織運営をしている企業を紹介します。
その名もNETFLIX!!
・・・まぁみなさんご存知ですね。笑
定額制動画配信サービスとして世界で2億人以上の会員数を誇るNETFLIXですが、そのサービスはさることながら組織としても唯一無二の存在なのです。
コチラの本を参考に少し紐解いていこうと思います。
まず、NETFLIXのカルチャーとして「F&R」という言葉があります。
これは自由(Free)と責任(Responsibility)と頭文字をとったものであり、NETFLIXはこのF&Rの考え方に基づいて形成されています。
少し例をあげるならば
・「ルール」がほとんど存在しない
・それに伴う承認プロセスもほとんど存在しない
・立場関わらず全員がフィードバックを言い合える
・社員を管理(コントロール)するという概念がない
などがあります。
これを聞くと、頭の中に「?」が生まれる人もいるかと思います。
「こんなんで組織が成り立っているのか!?」と。
でも、実際に成り立っていますし、企業として成功しているといっても過言ではありません。
それでは、ひとつずつ深掘りしていきます。
「能力密度」という視点
NETFLIXでは、「能力密度」という考え方を大切にしています。
能力密度とは、言い換えればその組織における「能力の質」ともいえます。
つまり、1の能力を持った人が100人集まった組織は、その組織における能力の全体量は100ですが、能力密度は1です。
逆に、5の能力を持った人が20人集まった組織は、その組織における能力の全体量は同じく100ですが、能力密度は5です。
NETFLIXでは、「組織の全体量をどう100にするか」という視点ではなく、「組織の能力密度をどう5(むしろそれ以上)にするか」という視点で組織運営をしている、といったわけです。
また、著書においてもこのような記述があります。
・凡庸なメンバーに手がかかり、管理職は最高のメンバーに時間をかけられなくなる
・凡庸なメンバーが議論の質を下げ、チーム全体のIQが落ちる
・他のメンバーが凡庸な2人に仕事の仕方を合わせるため、効率が落ちる
・最高の環境を求める社員が転職を考えるようになる
・社内に凡庸でも構わないというメッセージが伝わり、状況はさらに悪化する
要は、優秀な人材と凡庸な人材は「混ぜるな危険」であり、組織においてはデメリットしかないということです。
ですので、NETFLIXでは
・優秀な人材には、最高水準の報酬で採用する
・パフォーマンスの発揮できない人材は、きちんと退職金を支払い辞めてもらう
ことを徹底しています。これだけを聞くと「なんてドラスティックなんだ!」と思われるかもしれませんが、しっかり両者の「納得性」と周りへの「透明性」を担保しながら行っているのでむしろ「清々しい」というのが率直な印象です。
能力密度ファーストな組織運営だからこそ、質の高い人材で質の高い組織を形成することが可能であり、結果的にルールがなくても、管理しなくてもよい状況を作り出しているのは、NETFLIXのひとつの特徴であります。
ルールをできるだけ排除する
普通の感覚でいうと、「ルールはどんどん増えていく」と思っている人が多いでしょう。
ですが、NETFLIXはその真逆をいっています。
例えば、休日規定や出張費規定など普通の会社では当たり前にあるような規定は存在しません。
「そんなことをして悪用されたらどうするの!?」
そう思いませんでしたか?
もちろんNETFLIXでも、悪用事例が全くないわけではありません。
しかし、
一部のあくどい人間のせいで、大半の善良な人間のパフォーマンスが制限されることがあってはならない。
という考え方を持っているため、いわば大目に見ているのです。
もっと合理的にいえば
悪用を撲滅したときのメリット と その他大勢のパフォーマンス制限によるデメリットを天秤にかけたとき後者が前者を上回るため、ルールを設けないといえるでしょう。
ただひとつだけルールを設けています。
それは
「NETFLIXの利益を最優先に行動すること」
です。
ルールというには、あまりにもファジーな気もしますがこのルールのおかげで主体的な規律維持が保たれているのも事実なのです。
率直なフィードバック文化
NETFLIXでは、「率直なフィードバック」を最重要視しています。
これによって、立場によって忖度することなくものを言い合える文化が形成されていきますので、
「誰かに許可ももらわないといけない」とか
「上司の指示をもらわないと意思決定ができない」とか
一見ビジネスにおいて大切な「報・連・相」が逆に足枷せになってしまっている、というなんとも本末転倒な状況に陥ることがないわけです。
しかし、一方でなんでもかんでもフィードバックすればいいわけではありません。
NETFLIXでは、「フィードバックの4A」といわれるガイドラインを提示し、そのガイドラインに従って有益なフィードバックが行われるようにしているのです。
フィードバックの4Aの具体的内容が以下です。
フィードバックを与える側
(1)相手を助けようとする気持ちで(AIM TO ASSISIT)
(2)行動変化を促す(ACTIONABLE)
フィードバックを受ける側
(3)感謝する(APPRECICATE)
(4)取捨選択(ACCEPT OR DISCARD)
まず、フィードバックをする側の人間は、自分の実力誇示や他人を卑下するような「マウントをとる」行為は禁止しています。あくまでも、相手を助けたい気持ち(AIM TO ASSISIT)がフィードバックの基点になります。
そして、具体的なアクション(ACTIONABLE)に繋がるフィードバックを心がけます。べき論や正論は誰にでもいえるわけで、それを言うだけで人は変わりません。きちんと行動を変えるための手助けをしないといけないのです。
そして、フィードバックを受ける側は、まずは素直に受け止めて感謝(APPRECICATE)をします。その上で、フィードバックを採択するかどうかの選択肢(ACCEPT OR DISCARD)はあくまでも自分にあります。
「あの人に言われたからやりました」という責任逃れな言動ではなく、責任は自分にある。
ということです。
このようなフィードバックガイドラインをもとに、NETFLIXは風通しの良い組織文化を実現しています。
だからこそ、「上司・部下」のような組織階層も極論必要ありませんし、そういった管理型組織にしなくても組織運営がなりたっているのです。
ざっとNETFLIXの組織の特徴について書かさせていただきました。
みなさんはどう感じました?
おそらく肯定的な捉え方も否定的な捉え方もできると思います。
私自身が感じたことは、組織の制度うんぬんの話もありますが、NETFLIXの組織の根源には「納得感」が存在しているなということです。
結局は、世の中ケースバイケースであること多いので、ある1つの事案を取り上げて「あれは正しい!」とか「あれはおかしい!」とか短絡的に判断するのは間違っています。
今の政治家達のやりとりを私たちが冷ややかな目で見ているのと全く同じで、周りから見てもひどく醜いものになってしまいますよね。
だからこそ、大切なのは「納得しているかどうか」であり、それも押し付けられた納得ではなく、本当に自分自身が納得しているか、だと思います。
NETFLIXは、その点において徹底的にこだわっているからこそ一見ドラスティックに見える施策でもきちんと組織の一体性を保ちながら機能しているでしょう。
さらに詳しく知りたい方は、ぜひ本も読んでいただき見識を深めていただければと思います。
それでは、また。
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