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『真のタイムレスクラシックを作ることが出来た・・・』アルバムについて彼らが明かす! Wiz Khalifa, Big K.R.I.T., Girl Talk & Smoke DZA - Full Court Press (2022)

ヒップホップにはサンプリングという文化が根付いていますが、楽曲をリリースする前に著作権をクリアするのが一般的と言われています。
また、これらを無視して無許可で楽曲をリリースし、ヒットした後に裁判沙汰になることも少なくありません。

今回紹介するDJ/プロデューサーのGirl Talk(ガール・トーク)は、前述のサンプリングマナーを無視したマッシュアップやリミックスを数多く発表し、その無謀で奇抜な作品は、ニューヨークタイムズ誌にも取り上げられる等、音楽業界で注目されています。

そんな業界の異端児ガール・トークWiz Khalifa(ウィズ・カリファ)Big K.R.I.T.(ビッグ・クリット)Smoke DZA(スモークDZA)とコラボアルバム「Full Court Press」(2022)をドロップ。

ここでは、ある意味スモーキーなイメージがある彼らの新作と、ガール・トークという特異な存在について解説します。

レーベル  : Asylum Records
リリース日 : 2022年4月8日
名前    : Wiz Khalifa, Big K.R.I.T., Girl Talk & Smoke DZA
本名    :    Wiz Khalifa / Cameron Jibril Thomaz
        Big K.R.I.T. / Justin Lewis Scott
        Girl Talk / Gregg Michael Gillis
        Smoke DZA / Sean Pompey
年齢    : Wiz Khalifa / 34歳
        Big K.R.I.T. / 35歳
        Girl Talk / 40歳
        Smoke DZA / 38歳


出身地   :    Wiz Khalifa / ペンシルベニア州ピッツバーグ
        Big K.R.I.T. / ミシシッピ州メリディアン
        Girl Talk / ペンシルベニア州ピッツバーグ
        Smoke DZA / ニューヨーク

ガール・トークとは

ガール・トークは、ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外のブリッジヴィルにある高校に通いながら、シンセサイザーとサンプリングの実験をスタートさせます。
その後、2001年からキャリアをスタートさせた彼は、ステージネームの由来について次のように明かしています。

ガールトークという名前は、様々なもの、商品、雑誌、書籍のことを指しているんだ。
ポップカルチャーのフレーズなんだ。
キャリア初期にこの名前を選んだのは、基本的に俺が活動していた小さなシーンの中で、物事を少しかき混ぜるためだったんだ。
俺はもっと実験的なバックグラウンドを持っていて、中にはとても真面目でアカデミックなタイプのトラックメーカーもいた。
彼らが一緒に演奏するのが恥ずかしくなるような名前を選びたかったんだ。
ガールトークって響きが、ラップトップを使用している男性とは正反対のサウンドだったからあえて選んだよ。

どこか天邪鬼っぽい彼ですが、SquarepusherAphex TwinJust BlazeNirvanaKid606といった様々なサウンドに影響を受けたと明かし、そのせいかはわかりませんが、10数曲のヒット曲を無断で使ってマッシュアップを作成する独特なスタイルを用いています。
彼についてニューヨーク・タイムズ誌は「訴訟を起こるのを待っている」とコメントしています。

本業であるバイオメディカルエンジニアリングの仕事を傍ら、2002年にデビューアルバム「Secret Diary」を発表し、2006年に発表した3枚目のアルバム「Night Ripper」は『音楽をより親しみやすいものにし、パーティーの雰囲気を押し出す』ことをテーマに制作されています。
また『自分の個人的な音楽の好みを反映した楽曲』とも語っており、このアルバムでも数十年、数ジャンルに渡る他のアーティストの楽曲を300曲以上をサンプリングしています。
この点についてガール・トークは、常に自分のアンテナを伸ばして気に入った音源をチェックしていることを明かしています。

ラジオやパーティーで何かを聞いて、CDやレコードからサンプリングしたり、ダウンロードしたりするんだ。
ループやブレイク、ヴォーカルクリップをいつもサンプリングしているよ。
だから、何年も前からサンプルのカタログを作っていて、膨大なライブラリを持っているんだ。
毎日曲が出てくるから、終わりがないよ。

Night Ripper - Girl Talk (2006)

アルバム発売後、アメリカのミュージシャン、Beckから彼にロンドンでのコンサートのオープニングを依頼され、Good CharlotteGrizzly Bearからも楽曲のリミックスの制作を依頼され、このアルバムは彼にとって大きなキャリアアップとなりました。

その後、2000年代に人気を集めたラッパーFreeway(フリーウェイ)とのコラボEP「Broken Ankles」(2014)をリリース。
これをきっかけにWiz KhalifaCurren$yT-PainSmoke DZABasG Pericoといった他のアーティストとの制作やコラボレーションも多く行うようになりました。

『Full Court Press』について語る

今作を発表する前に、スモークDZAが2020年にリリースしたアルバム「Homegrown」からのリードシングル「Santos Party House」で共演しており、この頃からプロジェクトの話が進んでいたように思えます。

Smoke DZA feat. Wiz Khalifa, Big K.R.I.T., Curren$y, Girl Talk - Santos Party House (2020)

ガール・トークはこのアルバムについて、自身のマッシュアップの制作と同じように、それぞれのラッパーの良いところを引き出し、好きなところを集めたと明かしています。

みんな10年以上の付き合いだから、部屋の中のエネルギーがすごかったんだ。
彼らがベストを尽くせるような環境にしたかった。
Wiz、K.R.I.T.、DZAの3人はそれぞれ全く異なるスタイルなんだ。
それぞれのファンとして、彼らの音楽のどこに惹かれるのか、それを表現したかったんだ。
今までのアルバムと同じで、自分の好きな要素の断片を集めて、それをまた新しいものに再構成しようとしたんだ。

またビッグ・クリットも『本当に楽しい物が作れた』と、エキサイティングな体験だったことを語っています。

俺にとって、ブラザーと一緒にレコードに参加することは、ただただエキサイティングな経験だったよ。
何年も一緒に仕事をしてきて、本当に楽しいものを作れたんだから、それに勝るものはない。
音を聴いてラップを作るのが楽しかったんだ。
スタジオで1日過ごしたんだけど、まるで家族の再会のような感じだったね。
とにかくガール・トークと一緒に仕事をしていたんだ。
彼と一緒に作ったばかりの曲が4、5曲あったから(WizとDZAと)スペースに入ったら、まるでツアーに参加しているような感覚になったよ。
彼が演奏するビートはすべて聴いていたから、まったく問題なかったね。
アーティストとして活動することができたから、ちょっと安心した。
俺はプロデュースをすることが多いんだけど、その場合はいつもビートに集中しているんだ。

アルバムは10曲入りで、ニューオーリンズ出身のベテランCurren$yや、
Chicを結成し、70年代に数々のヒット曲で名を馳せたギタリスト、Nile Rodgersがゲスト参加しています。

Wiz Khalifa & Girl Talk feat. Nile Rodgers - Ready For Love (2022)

またビッグ・クリットは、スモークDZAを『ニューヨークの王者』と称え、次のように明かしています。

ビッグブラザーは伝説的なリリシストだよ。
彼が謙虚でいることは好きだが、そんなことはどうでもいい。
彼にはどんなビートを与えても問題ないんだ。
東海岸だろうが西海岸だろうが、どんなビートを与えても、彼はそれを乗りこなす。
だから、彼が作るすべての作品で、そのようなことが起こり続けているんだ。
彼は間違いなくニューヨークの王者だ。
彼はすべての作品でキレている。
今朝、彼のFunk Flexのフリースタイルを見ていて、本当に驚いたよ。
3分で「なんだこれ!」って。

余談ですが、ビッグ・クリットはビートメーカー、プロデューサーとしての才能を高く評価されていますが、スモークDZAのラップとリリックに感銘を受けたようです。

終わりに

ガール・トークはアルバムのタイトルについて、それぞれのラッパーのあらゆる側面を聴くことができるという意味だと明かしています。

このタイトルは、全員のスキルをイメージしてつけたんだ。
激しさというよりは、みんながそれぞれ違うものを持ち寄って、このプロジェクトに活かしているという感じだったね。
Wizが歌い、彼のメロディーを奏でている。
みんなのあらゆる側面が聴けるから、このプロジェクトで俺らが得たものをすべて使っているようなものなんだ。
だから『Full Court Press』なんだ。

※『Full Court Press』はバスケットの戦術で、前線からプレッシャーをかけるゾーンディフェンスのこと

またスモークDZAも『俺の兄弟であるWizとKritと一緒になって、Girl Talkを加えて、スワッグ、ラップ、ウィード、リリックの完璧なコンボは、真似できないぜ』と語り、ウィズ・カリファは『ドープな経験』と呼び、4人が『すべてのサウンドを一緒にして、真のタイムレスクラシックを作ることができた』と明かしています。

ラッパーとして成熟期を迎えた3人による今回のアルバムは、ウィズ・カリファが言う『真のタイムレスクラシック』と呼ぶ、唯一無二のアルバムになったのではないでしょうか。

4人のケミストリーは必聴です!

こちらで紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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