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顧客に会おう、デザインはそこからだ ~RESEARCH Conference 2022とシン・トセイに学ぶ~

こんにちは、デジテック運営事務局のやまたんです。週末は図書館ライフを楽しむ私ですが、本のタイトルに強烈なインパクトを受けた作品が、有川浩(ひろ)さんの「図書館戦争」です。だって、図書館で射撃戦とか始めるんですよ。話しただけでも怒られるのに、普通。奇抜な作品設定だけでなく、ストーリーの構成力も抜群で、有川さんの作品はどれも読み応えがあります。やる気がありすぎる若手職員が、住民の目線に立って徐々に県庁を動かしていく小説「県庁おもてなし課」も再読してみようかなと思っています!

RESEARCH Conference 2022

デザイン思考と出会って、はや2か月。この間に感じているのが、デザイン思考って、根底に流れているマインドは一緒でも、取り組む人や対象によって、アプローチが本当に様々なんだなぁ、ということ。言い換えると、デザイン思考に興味を持つキッカケとなる、「刺さる」事例は人によって違うのかなぁ、なんて考えています。
そんな時、同僚が「やまたん、このセミナーって、デザイン思考の普及の参考になるんじゃない?」と教えてくれたのが、RESEARCH Conferenceさんのオンラインセミナー

RESEARCH Conferenceは、リサーチをテーマとした日本発のカンファレンスで、行政、大企業、スタートアップなど立場の違いを超えて活発な議論を重ね、共に学び合うリサーチコミュニティを育てることを目指しているとのこと。
しかも、今回のセミナーのトップバッターは、ヤフー株式会社で要職を歴任され、現在は東京都副知事として都のDX推進を担っておられる、宮坂学さん。山口県出身の大先輩です。

「RESEARCH Conference」サイトより抜粋

このセミナー、絶対に見逃せないじゃないですか!このセミナーとの出会いに感謝します、神(同僚)よ!
というわけで、今回は、行政とデザインの結合に向けて非常に示唆に富んだ内容だったRESEARCH Conference 2022での宮坂副知事のセミナーの感想をお伝えしたいと思います!

測定なきものは改善なし

宮坂副知事は、都政に関わった当初は「行政は民間と比べてデザインと縁遠く、デザイン未開の地から来た異邦人のような存在」に感じたとのこと。そんな中「測定なきものは改善なし」という考えから、まずは都政でも成果などを測定することを徹底されたそうです。まさに、データドリブン。

また、測定したものは比べてこそ意味があるとも。「前年比」「目標比」「ライバル比」など様々な比較方法がありますが、特に重視しているのが「ライバル比」。都では学校教育や転出・転入などデジタル化した手続きの利用率・満足度を、海外5都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ、シンガポール、ソウル)と比較したところ、いずれも5都市よりも低いという結果だったことを踏まえ、都民誰しもが使いやすく、満足度の高いデジタルサービスの実現に向けた取組を進めていらっしゃるとのことでした。山口県のデジタル改革も、良きライバルとの切磋琢磨が重要なのかもしれません。

「東京都デジタルサービスの開発・運用に係る行動指針」より抜粋

顧客視点でデザインしよう

満足度の高いデジタルサービスの実現に向けて、東京都が今年3月末に取りまとめた「東京都デジタルサービスの開発・運用に係る行動指針」では、行動規範の第1に「顧客視点でデザインしよう」を掲げているとのこと。

「東京都デジタルサービスの開発・運用に係る行動指針」より抜粋

宮坂副知事は、顧客視点でのデザインについて、ヤフー時代に手掛けた「Yahoo!一球速報」や「Yahoo!オークション」の企画・立ち上げ時に、野球ファンやユーザーへのヒアリングを通じてサービスをブラシュアップしたエピソードも披露され、下のツイッターを示しながらの熱いアドバイスも。

とにかく自分で顧客に会うこと、そして自分自身が一番の顧客となって、顧客視点でデザインすべきだというお話は、デザイン思考そのもので、ズドンと胸に響きました。

テストしないものはリリースしない

行政のデジタルサービス化を進める中で、宮坂副知事が印象に残っているのが、「我々は高札をデジタル化していないか?」という都職員の言葉だそうです。行政の伝えたいことを橋のたもとの高札に掲示したから、住民はそこに見に来て下さいという江戸時代の手法を、我々はデジタル技術で行っているだけではないのか。すなわち、「顔の見えない情報発信」を続けていないかという問題意識なんですね。

単なるデジタル化ではなく、QOSの高いデジタルサービスを提供するため、都では「テストしないものはリリースしない」を合言葉に、昨年9月に「ユーザーテストガイドライン」を策定し、中小企業のビジネスマッチングを行う「ビジネスチャンス・ナビ」や「感染拡大防止協力金サイト」など、多くのデジタルサービスでユーザーテストによる改善事例が生まれているそうです。

特に大きな反響を呼んでいるのが、水産物等の衛生監視の業務を行っている豊洲市場の市場衛生検査所で取り組まれた、都職員が自らタブレットとノーコード/ローコードツールを使った業務のデジタル化。副知事自身、ここ数年で一番の手応えを感じていらっしゃるとのこと。

現場で「はっきり言って、使いにくいです」との評価だった試作品が、都デジタルサービス局と市場衛生検査所の皆さんの強力なタッグによってブラッシュアップされていく過程は、下記のNOTE記事に詳しく紹介されています。ドラマのような展開で、特に行政関係の皆さんには、凄く刺激になる事例だと思います!

ユーザーテストは鏡を見ることと同じ

最後に、ユーザーテストは鏡を見ることと同じで、人が鏡を見て身だしなみを整えるように、フィードバックを受けることで、サービスはより良く(キレイに)なることができるという言葉でセミナーは締めくくられました。

宮坂副知事の話を振り返ると、東京都の構造改革、シン・トセイでのDXの推進は、ユーザー視点で本質的な課題・ニーズを把握し、アイデアをに基づいた試作品をユーザーテストを通じながらアジャイル開発で質の高いものに磨き上げていくという、デザイン思考のアプローチを徹底して実行していらっしゃるんだなぁ、と非常に感銘を受けました。

そして、山口県で取り組んでいる「データアカデミー」「ローコード研修」、そして今年度新たに開催される「やまぐちデザインシンキングカレッジ」も、誰もが使いやすく、満足度の高いサービスデザインを実現するために必要不可欠なアプローチなんだと、改めて再認識することもできました。

RESEARCH Conferenceの皆さん、そして宮坂副知事、リサーチやデザインについて考える貴重な機会をいただき、ありがとうございました。最後に、RESEARCH Conference 2022の内容については、下記のTweetでもまとめられているようです。では、また!


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