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前編 オンライン会議奮闘記

 新型ウィルスが猛威を振るい、在宅勤務されている方も多くなってきました。政府も緊急事態宣言とともにテレワークを推奨しています。しかし、現実は、余り進んでいないようです。当社では、3月末から全社にてリモートワークを開始し、完全リモートワークを目指して日々奮闘しています。
 50歳半ばの経営者が奮闘している経験を「リモートワーク経営術」としてご紹介してまいりたいと思います。

なぜ早々に在宅勤務を始めたのか

 当社が在宅勤務を始めた理由は大きく二つあります。
 一つ目の理由は、知らぬうちに自分たちが感染してクライアントに迷惑をおかけしてはいけないということです。今回のコロナの怖いところは自分が感染するのも怖いですが、それ以上に人に感染させてしまうことが怖いと思い絶対にそれだけはやってはいけないことだと思いました。
 二つ目の理由は、デジタルシフトを推進する私たちが率先して在宅勤務を経験し、その経験をクライアントを始めとする周りの方々にお伝えしていきたいという思いからです。

最初はぎこちなかったオンライン会議

 在宅勤務初日、全社会議をオンライン会議にしてみました。
 今までも、オンライン会議の経験はありましたが、多くの場合、参加者の大多数は会議室にいて、出張者などがオンラインで参加する形がほとんどでした。その場合は、やはり会議の中心は会議室であり、会議室にいる人達がお互いに顔を合わせて話し、オンライン参加者の存在を忘れてしまうことさえありました。ここで新鮮な驚きがありました。全員が自宅からオンライン会議にすると、全員の顔が画面上にあり、資料の共有も画面上なので、視点をずらすことなく集中できることがわかりました。
 しかし、会議が進んでいくと会話はどことなくぎこちなさを感じるようになりました。誰かが話し出すと皆集中して聞いているのですが、どのタイミングで自分が話し出すのかお互いにお見合いをしてしまうからです。オンライン会議では「沈黙」は、リアルの会議よりも辛いものだと実感しました。

オンライン飲み会でスムーズな会話が生まれた

 「今夜、オンライン飲み会をしてみよう!」初めてのオンライン会議の最後、私は社員たちに提案してみました。賛同を得られたので、「酒とツマミを準備して夜7時に集合!」として会議を終えました。
 「カンパ~イ!」通常の会社の飲み会と同様に、オンライン飲み会はスタートしました。しかし、その後はボソボソとしゃべる始末。意を決して、若い頃に飲み会の幹事を良くやってたことを思い出し、司会者の如く「○○くん、娘さん学校どうしてるの?」「○○さん、休日なにしてたの?」などと、頭に○○くん、○○さんと呼び掛けて話をするようにしたら段々と皆、いつものように饒舌になってきました。そのうち、皆、お互いに突っ込みだして、いつもの飲み会になってきました。振り返ってみるとポイントは2つ。
  1)話の頭に相手の名前を呼び掛ける
  2)相手の話を待たずにどんどん会話を重ねる

この二つを意識するだけで、オンライン会議ではスムーズに進むことがわかりました。

オンライン飲み会

充実したオンライン会議は環境が大事

 スムーズに進みだしたオンライン会議ですが、何かが足りないと感じていました。まず気がついたのは「音」でした。最初は、PC内蔵のスピーカーで音声を聞いていたのですが、どうもシャカシャカと金属音の様な声に違和感がありました。外付けのスピーカーを購入して接続してみると、びっくりするほど良い音でした。同時に相手にもよく聞こえるようにDJばりのマイクまで購入し接続してみるとクリアに相手に聞こえるようです。そしてもう一工夫と「画面」をダブルスクリーン(1台のパソコンで2台のディスプレイを使うこと)にしました。会社では普通にダブルスクリーンで仕事をしているのですが、自宅でもダブルスクリーンにするととても効率が上がることがわかりました。
 その後、社員にも「必要な機器は会社費用で購入していいよ」と伝えました。各々の自宅環境に合わせて、イヤフォンを購入したり、会社のディスプレィを自宅に送ったり、自宅のテレビに接続してダブルスクリーンにしたりと各々に工夫をして、今では本当にスムーズな会議環境となりました。もしかしたら、在宅勤務以前よりもコミュニケーションが良くなっているかもしれません。(下図は、私の在宅勤務環境です)

在宅金峰

クライアントの理解を得る

 社内のオンライン会議によるコミュニケーションはスムーズになりました。しかし、問題はクライアントとのコミュニケーションです。今まで、私たちは、一人が一日2~3社のクライアントを訪問し、ご支援することを基本として業務を進めてきました。それをオンライン会議にするとお願いするのはとても勇気のいることでした。最初は、社員たちは恐る恐るクライアントにお願いをしていました。社員に勇気を与えるために、私は号令をかけました。「オンライン会議のお願いをしなさい。それは決して自分たちのためではなく、私たちが万が一感染していた場合にクライアントに迷惑をかけてはいけないからだ。それで、クライアントの不評を買って仕事が無くなっても構わない。」と。結果は、全てのクライアントの理解が得られました。

クライアントに感謝のお言葉をいただく

 クライアントの理解を得られたとはいえ、最初からスムーズには進みませんでした。IT系のクライアントは問題なくスタートできるのですが、他業種はそうは簡単ではありませんでしたが、何とかスタートしてみると驚く反応が返ってきました。私たちがご支援するのは、経営者の方、もしくはそれに準ずる方が多いのですが、多くの方々はオンライン会議が初めての方々が多くいました。私たちは、自分たちの社内で奮闘した経験を活かして会議を進めていきました。すると会議が終わった後、経営者の方々から「こんなにスムーズにできるんですね」「自社でもやってみます」などと前向きのお言葉をいただくようになりました。これは、予想外で、私たちは、とても嬉しく思っています。
 そして回を重ねるごとに、社員たちも工夫をして、今まで1時間の会議を30分×2回に分けてやることによりお互いの効率があがることを発見したりしています。オンライン会議に切り替えることで、私たちも大幅な効率化を実現することになり、柔軟なご支援を提供できるようになったからこそ可能になったのです。

 まだまだ、オンライン会議を本格的に業務に取り入れて、日が浅く、これからも社員たちの工夫を重ねてまいりたいと思っています。そして今、私たちがわかったことは、「やってみる」「変えてみる」の強い意志を持つことが大事だということです。

次回は、社内業務のリモート化についてお話をしていきたいと思います。

つづく

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★過去連載
デジタルシフト成功への道」(全6回連載)

鈴木 康弘(Yasuhiro Suzuki)
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、日本オムニチャネル協会会長も兼任。
著書: 「アマゾンエフェクト! ―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか」 (プレジデント社) 

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