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第6のレシピ お客様とのゲートウェイPBXの進化

 「新時代コンタクトセンター」のレシピ、今回はコンタクトセンターとお客様をつなぐ重要タッチポイントPBXの世界です。その中でも日本で最も高いシェアを持つAVAYAのレシピをお届けします。ここ数年PBXを取り巻く環境は大きく変化しています。特にクラウド型PBXとUC(ユニファイドコミュニケーション)サービスは、長い間のオンプレによるリプレイスを繰り返してきた業界の大きな変化といえます。今回は日本アバイアの技術責任者を務めている沼田幸喜さんに新時代でのPBXのあり方について伺います。

沼田さん写真

日本アバイア株式会社
セールスエンジニアリング本部長
沼田 幸喜 氏

出水:
 まず、クラウドへのシフトについて現状と最新動向を聞かせてください。

沼田氏:
 コンタクトセンターにおけるクラウド化の需要が、ここ数年で大きく変化して来ていることを、日々の業務の中でひしひしと感じております。それ以前は、クラウド環境でコンタクトセンターを運用するお客様は、比較的規模の小さなお客様が多かったのですが、ここ数年は規模、業種に関係なく要件定義の中に「クラウド」という言葉が含まれるものが多くなっています。
 「クラウド」サービスはプライベートクラウドとパブリッククラウドという2つのタイプがありますが、大規模で長くご利用いただいているお客様は、システム規模や柔軟性を考慮しプライベートクラウドが多いと思います。しかしここ数年パブリッククラウドを利用するお客様の数は増えてきており、1企業当たりのオペレーター数も徐々に大きくなってきました。これは、技術の進化により安定かつ安全(セキュリティ面など)にサービスができるようになったのと、コンタクトセンター業界でのクラウドサービスの実績が多くなってきたのが要因だと思います。
 一方で、サブスクリプションによるコンタクセンター構築のニーズも多くなってきているため、AVAYAは「オンプレミス」でも2019年10月からサブスクリプションのサービスを提供し始めました。サブスクリプションのサービスには、契約数に対して+20%内であれば無償で使用できる権利が含まれていますので、季節的に増えるトラフィックがある場合でも追加費用なしでご利用いただけます。
 下の図は、クラウド及びオンプレの提供形態を一覧にしたものになります。日本では、これ以外にもパートナー企業が提供しているクラウドサービスもあります。

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出水:
 ところでコミュニケーション手段の多様化が進む中でsalceforceやZendeskのようなCRMが活用されていますが、AVAYAはこの分野でどのようなアプローチをしているのでしょうか?

沼田氏:
 お客様が選ぶコミュニケーション手段ですが、お客様は場所や状況に合わせてベストな方法を選択します。コミュニケーション手段が異なっても、過去の経緯については、チャネル間でシームレスに連携できているべきですし、その時々の状況によって対応すべきオペレーターも異なるので、属性に合わせたルーティングが必要になると考えています。
 それを実現するためのソリューションとして、Avaya Oceana というソリューションを提供しております。

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Avaya Oceanaの主な特徴は以下のとおりです。

◆顧客属性ルーティング (attribute routing)
    ▶お客様の属性に合わせてルーティングを最適化

◆複数チャネルサポート:メール、SNS、SMS、チャット、Video、WebRTC等
    ▶他社製AI、IoTとの連携も可能

◆ビジネスフロー作成ツール
    ▶顧客属性ルーティングやチャネル間接続のためのフロー作成ツール

◆カスタマージャーニーの可視化
    ▶チャネル毎のやりとりを一元表示

 AIにつきましては、Google CCAI を用いたボット機能、オペレータアシスタント機能の提供や、afinitiを用いたAIを活用した行動ペアリングソリューションなども進めています。afinitiは過去の応対データを基にお客様が求める最適なエージェントを見つけルーティングするというかなり高度なソリューションです。

出水:
 今、コンタクトセンターに限らず企業の働き方が大きく変わっています。そんな中で、5~10年後のPBXを見据えて企業がとるべき選択についてお聞きしたいと思います。

沼田氏:
 正直、難しいトピックですね。(笑)
 一般オフィス、コンタクトセンター共にクラウドに向かうのは間違いないと思います。
 一般オフィスについては、在宅勤務前提のソリューションを考慮する必要があると思います。例えば、日本企業でよく使用しているグループ代表番号ですが、在宅勤務下では、あまり効率のいいやり方ではありません。個人番号をベースとした方式を前提に、チャット、電話、Web会議等がシームレスにできるツールへの移行が加速し、クラウド上のサービスとして使用することが多くなると思います。
 コンタクトセンターについては、全体的にはクラウド化がより進むと思いますが、お客様の業務、規模、システムの特異性を考慮した上で判断すべきだと思います。クラウド化したお客様が、「新しいことをやりたくてもできなくて困っている」ということを時々聞くことがありますので、今後は、オンプレ+クラウドのハイブリッド型が増えていくと想定しています。
 従って、オンプレでもクラウドでも外部との接続が容易なシステムを選択するべきだと思います。
 これに関連して今回のコロナ禍を経験して思ったことがあります。AVAYAでは、コロナ禍対策の支援策として、ソフトフォンのライセンスの3ヶ月間の無償提供(申込期限:8月31日)をさせていただいております。これはもちろん在宅を視野に入れたものです。この支援策を利用して、本格的な環境準備に着手されたお客様が多くいらっしゃいますが、ネットワーク環境、セキュリティ対策等で苦労されているお客様が多いのも事実です。すべてを在宅にするというのではなく、業務内容を分析して在宅で対応可能な業務内容を特定するとともに、サテライトセンターの検討など、少し違った観点から対策を考えてもいいのではないかと感じました。また、コンタクトチャネルのデジタル化やセルフサービスの充実は、パンデミック対策の有効な対策手段ともなりますので、さらに追加していくべき機能だと強く感じました。
 最後になりますが、今回のコロナ禍でオペレーターの従業員体験(EX)がいかに大切であるかが改めて問われました。AVAYAはCXだけでなくマルチエクスペリエンスつまりCXとEXを同時に高めることができるソリューションによってお客様のビジネスに貢献していきたいと考えております。

出水:
 新時代コンタクトセンター構築では電話に変わるセルフツールやノンヴォイスのサポートが重要視されます。しかし、今でもコンタクトポイントのほとんどは電話によるコミュニケーションです。在宅、分散が叫ばれるコンタクトセンターにおいて、「いつでもどこでもお客様対応ができる」PBXソリューションを提供することがAVAYAの次のチャレンジと感じました。

次回の「新時代コンタクトセンター構築10のレシピ」は道具の視点ではなく、人の育成に焦点を当てます。「デジタル時代に活きる人の力」がテーマです。

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出水 啓一朗 (Keiichiro Demizu)
1974年信越放送入社。2003年WOWOW常務取締役、2006年スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT)執行役員常務、2009年同社取締役執行役員専務兼マーケティング本部長を経て、2011年スカパー・カスタマーリレーションズ代表取締役社長に就任。2019年6月同社退任。

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