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どうすれば“データに強いマーケター”になれる?CloudFit・瀬沼さんに聞いてみた

産業のデジタルシフトにともない、顧客接点が大幅に増え、マーケターの人口が増加している昨今。しかし、マーケティングを理解し、真の意味でのマーケティング思考を発揮できている人はそう多くありません。

時代の流れをつかみ、マーケターとして活躍するには、いったいどのようなアプローチを取ればいいのでしょうか。

デジタルマーケティングカンパニー・DIGITALIFTの鹿熊亮甫が、第一線で活躍するマーケターとの対談を通じ、デジタル時代のマーケティングを解剖していく連載シリーズ「次世代マーケ論考」。

第六回はCloudFit代表の瀬沼裕樹さんをゲストに招き、市場価値が急騰する「データに強いマーケター」になる方法を聞きました。

マーケターは“DX人材”の時代に

鹿熊:マーケティングが包括する領域は非常に幅広く、そのすべてを網羅するのは簡単なことではありません。「マーケターとして活躍するには、どうしたらいいですか?」という質問をいただく機会もありますが、どうお返事をすればいいか迷うことが増えました。

瀬沼:すごくよく分かります。ただ、僕の中では一つの解があって……。データへの理解がない限り、マーケターとして価値を発揮するチャンスがなくなっていくことだけは真実だと思っています。

鹿熊:マーケティングにもさまざまな領域がありますが、時代背景も相まって、とくにデジタルマーケティングの比重が大きくなっていますからね。

瀬沼:デジタルマーケティングが主流になっていくこれからの時代において、マーケティングとデータは切っても切り離せない関係にあります。データはクリエイティブと違い、定量的に表現ができるものですから、ここは最低限のベースラインになるのではないかと思っているんです。

鹿熊:その意味で、デジタルマーケティング領域を生きるマーケターは、「DX人材」と表現できるかもしれないですね。

瀬沼:おっしゃる通りだと思います。事実、デジタルマーケティングに強みを持つCloudFitですが、事業領域はDXコンサルを手がける企業さんとバッティングしています。

デジタルマーケティングを強化するにあたり、システム開発はSlerさんに頼めば問題が解決します。しかし、システムを変えたところで、劇的な変化が起こるわけではありません。時代に即した戦略を構築しなければいけないのですが、Slerさんはこれを苦手としています。

一方で、戦略策定に長けているコンサルタントは、システム開発を不得手にしていますよね。

CloudFitは、上流の戦略策定から、ツールを活用したシステムのDXまでを一気通貫で行えるので、そこに価値を感じてご依頼をくださるケースが多いんです。クライアントのマーケティングを支援しているとはいえ、もはやDXコンサルをしているのと変わりありません。

鹿熊:「上流の戦略策定から、ツールを活用したシステムのDXまで」というのが、次世代マーケターのキーワードかもしれませんね。これからのマーケターに求められる能力そのものではないかと思います。

瀬沼:マーケターがシステムを開発できる必要はありませんが、DXを支援するツールを扱え、それが導き出すデータを扱えないことには、少なくともデジタルマーケターとしてのキャリアは拓いていかないはずです。

鹿熊:データはマーケターの共通認識になっていくということですね。

瀬沼:マーケターが扱う領域を自分なりに列挙すると、「集客」「CV」「LTV」、それらを支える「データ」です。

そのいずれかに強みを持つことが活躍の第一歩だと思いますが、データの領域が上部に染み出してきているので、そこが共通理解になっていくと認識しています。

マーケとデータの共有点を生きる

鹿熊:デジタルマーケティング領域では、データの重要性が当たり前に叫ばれています。とはいえ、データを扱うことに抵抗があったり、実質的にそれができていないプレイヤーが多いのも事実です。いったい、どうしてこのような状況になっているのでしょうか。

瀬沼:データを「見ること」と「分析すること」は似て非なるものなのですが、それに気付けていないマーケターが多いような気がしています。

「Google Analyticsを見ています」「広告媒体の管理画面をチェックしています」という人は増えていますが、それでは不十分。そこにあるデータからなんらかのインサイトを抽出し、ネクストアクションまで落とし込んで初めて「PDCA」です。

しかし、データを見ることだけで満足してしまい、それが効果的なネクストアクションにつながっていないケースが往々にしてあります。

また、断片的なデータしか見ていないために、正しくPDCAが回っていないケースもあるあるです。

急速にテクノロジーが進化した結果、データが分散しがちになっていますよね。それを集約して物事を考えなければいけないのですが、それに気が付けず、自分たちの視界からみえる世界に最適化してしまう事例も少なくありません。

例えば、セッション数がほとんどないのに、CVRの向上に躍起になっていたり。この場合、CVRを10%向上できたとしても、大きな成果をあげられるわけではありません。順番が違います。

鹿熊:瀬沼さんが手がけていることは、マーケティングのコンサルというより、もはやデータのコンサルといってもいいかもしれません。

瀬沼:マーケティングの主流がデジタル領域になったことで、被りが生じているんですよね。KPIを設定するということは、ある意味ではデータを扱っていますし、なおかつマーケティングが絡むことでもあります。

このデータとマーケティングが重なる領域を押さえるということが、これからのマーケターにとって重要なことです。

手を動かして“aha!”を見つける

鹿熊:瀬沼さんは、まさに「データとマーケティングが重なる領域」を得意とされていますが、どうやってその能力を培ったのでしょうか。

瀬沼:大きく二つの理由があると思っています。一つは、そもそものバックボーンがデータにあるということです。

新卒で入社したオラクルでは、ほとんどインフラエンジニアとして働いていました。その後、ビッグデータを扱う仕事もしていたので、そもそもデータに強いキャリアなんです。

もう一つは、好奇心旺盛で、なんでも自分で触ってみたいタイプだったということ。

クリエイティブに強いタイプではありませんでしたが、「広告運用をできるようになろう」「UXデザインも勉強してみよう」と必死になって手を動かしていたら、専門領域から染み出し、周辺領域の知識が身に付きました。

意識的にキャリアをつくってきたわけではありませんが、あれこれ手を出して、それらすべてに理解を持てたことが強みになっているんです。

鹿熊:領域を越境してきたことが、ご自身の強みになっていると。たしかに納得ですし、DIGITALIFTでも、意識的にそれができる人材の育成に力を入れています。領域を越境するプレーヤーは、パフォーマンスも非常に高いですよね。

瀬沼:「データ」が「集客」「CV」「LTV」に染み出していることからも分かるように、現代は「1+1」が「2以上」の価値を生む時代になっているんですよね。つまり、広告運用とUX改善をスキルとして持っていると、ものすごいパワーを生むということです。

個々の技術に習熟することも大切なのですが、CloudFitがそうであるように、領域を横断するからこそ新しい仕事が生まれる時代です。マーケター、特にデジタルマーケターとして飛躍したいのであれば、意識的に専門領域から染み出していく動きが求められると思います。

鹿熊:自主的にそうした動きができたら最高ですが、やはり難度が高いですよね。DIGITALIFTでは、例えばエンジニアリングにバックボーンがある人材にマーケティングスキルを装着したりしていますが、必ずしもフィットするわけではありません。

瀬沼:難しい課題ですよね。私も社内で育成に取り組んでいますが、結局はケイパビリティを少しずつ拡張していくしかないと思っています。

まずはGoogle Tag Managerの使い方を覚えてもらい、今度はGoogle Analyticsの正しい見方を身に付けてもらい……と段階を追っていくのが、なんだかんだ言って最短なのかなと。

鹿熊:最近は「むちゃぶり」するのが最も効率的なのではないかと思うこともあります(笑)。

瀬沼:でも、本質だと思いますよ(笑)。私は特にそうでしたが、新しいスキルを身につけるときは、とにかく自分で手を動かすことが大事です。そのうち“aha!”となる瞬間がやってくるので、そこでスキルだけでなく思考にも広がりが出てくると思います。

マーケターは“デジタル多能工”を目指せ

鹿熊:デジタル領域に強くなるとか、データに理解を持つとか、そういった表現は日頃からそれらに接していない人からすると、少し抽象的な話だと思うんですね。瀬沼さんの考えで構いませんが、データに理解を持つということをどのように定義していますか?

瀬沼:一言で表現するなら「勘所をつかむ」ですね。もちろん、機械学習のスキルを持っていたら武器にはなりますが、マーケターとしては“too much”だと思います。それよりも、なにか施策を実行しようと思ったときに、データをエビデンスにして最もインパクトのあるポイントを見つけられることの方が重要です。

逐一データをチェックしていけばたどり着けることではありますが、それを直感的にできるようになっていると、「データに理解がある」「データに強い」と言えるのではないかと思います。

鹿熊:これも非常にトレーニングが難しいですよね。僕は経験があるので直感的にできるようになりましたが、習得するまでのプロセスを可視化するのは簡単なことではないと思っています。

瀬沼:同意ですが、クリエイティブを教えることよりは、まだ簡単だと思っています。データは基本的に答えがあるじゃないですか。ロジックツリー的な構造で向き合えば、最後は必ず答えにたどり着ける。思考体系さえ理解できれば、あとは繰り返しの訓練を積めばいいんです。

データ主体のマーケティングになっていく未来では、漠然とした問題を分解する能力が必須のスキルになるはずです。ただ、まだコモディティではありません。だから、まずはこのスキルを身に付け、プラスアルファの能力を磨いていくのが直近の戦い方になると思います。

僕はデータへの理解を軸に、オリジナルな強みを持つことを“デジタル多能工”と読んでいるんですね。手段が多い時代だからこそ、まずは一つの領域で突き抜けるのが大切ですが、一方で複数の領域を横断することの価値は高まっていくので、単能工ではなく多能工を目指す。それができれば、マーケターとして活躍できるはずです。

鹿熊:お互い会社を経営する立場として、所属するメンバーが“多能工化”していく仕組みをつくっていかなければいけませんね。100人の組織では実現できたとしても、1,000人の組織でそれができるかというと、たしかに難しい。個人のチャレンジを応援するのはもちろん、これを仕組みで実現していかなければと思います。

瀬沼:おっしゃる通りですね。業務時間のうち20%の時間を自分のプロジェクトに充てる、Googleの「20%ルール」ではないですが、意図的に殻をやぶる仕組みをつくっていきたいと思います。


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