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安倍晋三の遺産:核兵器をめぐって分裂する日本。

地球最後の日までの残り時間を概念的に示す「世界終末時計」を発表している米国科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(Bulletin of the Atomic Scientists)」は2022年08月24日にマンスフィールド協会(Mansfield Foundation)のMaureen and Mike Mansfield Foundationでプログラム担当アソシエイト・ディレクターを務める小百合ロメイ(Sayuri Romei)による「The legacy of Shinzo Abe: a Japan divided about nuclear weapons(安倍晋三の遺産:核兵器をめぐって分裂する日本)」を公開した。

岸田文雄首相は2022年08月01日、ニューヨークの国連本部で今月開催されているNPT(Non-Proliferation of Nuclear Weapons/核兵器不拡散条約)再検討会議に日本の指導者として初めて出席した。広島県出身の岸田首相は、日本の与党である自民党内で、核兵器使用がもたらす人道的影響と日本の核軍縮への揺るぎないコミットメントを一貫して強調する数少ない論者の一人である。

これは、2022年07月08日に暗殺され、全世界に衝撃を与えた、最も知名度の高い前任者安倍晋三元首相( former Prime Minister Shinzo Abe)とは対照的である。

https://time-az.com/main/detail/77567

安倍晋三は、核抑止力の有効性、核兵器の有用性を強調する考え方を持っていることで知られていた。
日本が核兵器を保有する可能性さえ示唆していた。
首相在任中の8年間、安倍首相は日本のあいまいな核政策に米国の「核の傘」の重要性を強調するように仕向けた。
そうすることで、オバマ前米大統領(US President Barack Obama)や安倍首相の前任者たちが作り上げた一時期の核軍縮の機運から、さらに遠ざかることになった。

2012年から2020年にかけて、安倍首相の2期目は、東シナ海での中国の積極的な軍事力増強と北朝鮮の核・ミサイル能力の向上など、緊張の高まりと地域の安全保障環境の急速な悪化が特徴的であった。

2017年02月、安倍首相はワシントンでドナルド・トランプ米大統領( US President Donald Trump in Washington)を訪問し、「核と通常兵器の両方を含む米国のあらゆる軍事能力を通じて日本を防衛するという米国のコミットメント」が揺るがないとの再確認を得ることに成功した。

その1年後、安倍首相が核兵器の役割を重視するもう一つの顕著な兆候として、河野太郎外相(Foreign Minister Taro Kono)はトランプ大統領の核態勢見直しについて迅速かつ明確な賞賛を発表した。

過去10年間、地域の安全保障環境が緊迫化したことが、安倍政権の核観に影響を与えたことは確かだろう。しかし、安倍首相の核兵器への焦点は2012年以前から始まっていた。安倍晋三の政治的レトリックは、その政治的キャリアを通じて日本国民の間に何度も騒動を引き起こしたことは確かである。しかし、その分析は、彼と彼の党の核思考を垣間見る上で有益である。有名な例では、2002年05月、安倍晋三は早稲田大学の学生たちにこう言ったという。「当時、日本の内閣官房副長官だった安倍首相は、この発言に続く世論の反発にもめげず、その後のキャリアでもこの見解を維持することになる。

それから20年後、ロシアがウクライナに侵攻したとき、安倍晋三はテレビで、日本は米国とNATO型の核共有協定の選択肢を議論する必要があると述べた。これは、日本が核兵器の持ち込みを決して認めないという非核三原則の第三原則を、安倍首相が明らかに修正したものである。非核三原則とは、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずというもので、1967年に安倍首相の大叔父である佐藤栄作が定めたものである。この原則は法制化されなかったが、現在でも日本の公式な核政策の根幹と見なされている。

2022年02月のテレビのインタビューで、安倍首相はこの原則に立とうと、「日本はNPTの締約国であり、非核三原則を掲げている。被爆国として、核廃絶の目標に向かって進むことが重要だ。」と述べた。

しかし、この発言は、1945年08月に広島と長崎に投下された原爆の被爆者たちから、修辞的な両義性という長い政治的伝統として、厳しい批判を受けたと報告している。

日本の主要紙の一つである毎日新聞の調査で、核兵器の選択肢に賛成する発言をしたり、「国際情勢が必要とすれば、日本は核兵器保有を検討すべきだ」と答えたりした人が何人もいる。

この中には、安倍首相自身や麻生太郎元副総理、5人の元防衛大臣が含まれている。

安倍晋三の弟で現防衛大臣の岸信夫も、2012年の毎日新聞の調査では同じ回答をしたが、2020年には核のオプションを否定し、非核三原則を公然と支持したと報告している。

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