近未来建築診断士 播磨

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第1話 ホワイトムース
Part.1 『受注』-1

「盗電ですか?」
『かもしれない、てこと』
のっけからきな臭い。
だが自宅兼仕事場のデスクから響くブロ-カーの声はあっけらかんとしている。
『バルーンツリーはホワイトムースのカプセルホテルだ。
詳細はカタログでよろしく』
ホワイトムース。50年ほど前、鳴り物入りで登場した。
見た目は白く大きなブロック状のおモチだ。
ブロックの側面にフラフープみたいな器具を貼り付けて通電させると、壁の中へ風船が膨らむみたいに、一人分の寝そべるスペースができる。
宣伝文句は『寝心地バツグン肌触り良し。場所を選ばず、建物の空いた場所を有効利用』。
当初は高級ホテルの倉庫やバックヤード部分に、安価なベッドルームを設けることを考えていたらしい。
実際は、そこまで寝心地が良くなくて廃れたらしい。主流になれず消えていった新素材のひとつだ。
『オーナーさんは、ここ2ヶ月ほど利用客は増えていないのに電気使用量が上がり続けてるのが気になるんだと』

【続く】

#近建診

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