征け、アンタゴニアス

 残酷で魅力的な物語だ。

 プロローグではこの世界が卓越した描写で描かれる。どうかタイトル回収ともいうべきプロローグ最終話まで読んで欲しい。自分もはやく第1話に手をつけたい。

 とある未来、罪業機関という永久機関じみたジェネレーターが見出され、人類社会は変わった。これはそんな世界の、残酷で救いがない現実を描いた物語。
 罪業機関は無機物の機械ではなく、有機物のように見える肉塊だ。伝説や神話では『食べても減らない肉の塊』が登場する。中国は山海経の封、これと類似とされる日本の肉人、北欧神話のセーフリームニルなど。だが罪業機関は機関とされるとおり、物理的なエネルギーをどうやら無尽蔵に出力する。その出力を得るために必要となるのが、人間の犯す罪だ。

 エネルギーは人の社会を変える。蒸気機関、石油、原子力については説明の必要は無いだろう。罪業機関もこれらと同じように人間社会を変質させた。その社会はあまりにもおぞましいが、リアルを感じる。
 罪を犯してエネルギーを得るために、人の心は善良でなければならない。罪の意識とは善の心と相対的な関係にあるからだ。こんな世界で生きる人間の心にかかるストレスはいかほどのものだろう?

 だが絶望ばかりではない。混じりけの無い希望がプロローグのラストに示されている。願わくばこの物語が、このプロローグの示すような終わりを迎えんことを。
 現在、第1話公開中。筆者も近日中に見に行く。

ちなみに筆者の一押しはプロロ最後のアイツ。口調が翠星のガルガンティアで登場したチェインバーを髣髴とさせる。いまから活躍が楽しみだ。

サポートなど頂いた日には画面の前で五体投地いたします。