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プレシーズン4【ライオット・オブ・シンティレイション】分割版 #5

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「ピザ? 何をバカな。そんなものは頼んでいない」『……注文されています』「本人が注文していないと言っているんだ。お前はバカなのか?」「アイエエエエエ! アイエエエエエ! アイエエエエエ!」ヨウナシが叫ぶ!アマルガムは通話を切断し、ヨウナシを振り返った。「うるさいぞ……!」

「アイエエエエエー!」次にトイコがヨウナシの悲鳴に目を覚まし、縛られた自分、だだっ広いフロア、鉈を持ったアマルガムを見て叫び始めた。「アイエエエエエー!」「アイエエエエエ!」「アイエエエエエー!」「アイエエエエエ!」「ア、アマルガム=サン! わかってンのか!」ザナドゥは慌てて叫んだ。

「何だ!」「そいつらに危害をくわえたら俺は即座にセプクする。自害だ。俺はニンジャだ。それくらいやってのけるぜ。縛られていてもな」「……」アマルガムは眉をしかめた。ザナドゥはガタガタ動いた。「そいつらに構うんじゃない。これは俺とお前の問題……」「アイエエエエ!」「アイエエエエエ!」「うるせェなァお前ら!」

「アイエエエエ!」「アイエエエエ!」ガタン! 騒ぎすぎてトイコの椅子が後ろに倒れた。「痛ッたァ!」それを見てヨウナシは思わず笑い出した。「ワハハハハ!」「うるせェよ!」ザナドゥは本気で腹が立ってきた。アマルガムは……ブガー! ブガー! ブガー! ブガー! その時、インタフォン呼出乱打だ!

「イヤーッ!」SMAASH! アマルガムは大鉈でインタフォンを叩き潰した。女子高生達が息を呑み、静まった。アマルガムはゴリゴリと音立てて大鉈を引きずり、戻ってくると、椅子ごと倒れたトイコを神経質そうに元通りにした。「……あらためて……」ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! その時、ドア乱打音!

「AAAARGH!」アマルガムは声にならない叫びをあげて大鉈を振り上げ、玄関に走った。ザナドゥは狼狽えた。まずい! アマルガムは怒りの限界! ピザ配達員を有無を言わさず斬り殺すつもりだ!「イヤーッ!」アマルガムは大鉈を、「イヤーッ!」KRAAASH! 鉄扉がくの字に折れ曲がり、射出されてきた!「グワーッ!?」

 咄嗟の防御姿勢を取ったアマルガムに鋼鉄の質量が衝突した。ザナドゥは息を呑んだ。扉の前へおびき寄せ、狙い澄ましたような一撃だった。何者だ……? 彼が固唾を呑む中、粉塵をかきわけるように、ピザ配達員がこのだだっぴろい空間へ進んできた。

 不明瞭な粉塵の中で、影は帽子を脱ぎ、投げ捨てた。塵が晴れると……そこに居たのは、ピザ配達員ではなかった。赤黒の装束を着たニンジャだった。赤黒のニンジャはアマルガムを正面から睨み据え、ジゴクめいてアイサツした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」

「……ドーモ。アマルガムです」アマルガムはアイサツを返した。「ニンジャスレイヤー……だと? その名……」アマルガムは表情を曇らせた。ザナドゥも同様だ。不吉な響きだった。そしてその響き以上に、ニンジャスレイヤーの放つアトモスフィア、キリングオーラは、凄まじいものであった。

 ニンジャスレイヤーは縛られたザナドゥたちをアマルガムの肩越しに見やり、問いかけた。「そこのお前。ヨウナシ=サンで間違いないか」「エット、そうです」「そっちはトイコ=サンか」「アイエエエ…そうです……殺さないで」「充分だ」ニンジャスレイヤーはアマルガムに注意を戻し、前傾姿勢のカラテ姿勢。

「なんだ、なんだ……まさか、この非ニンジャのクズに用があるのかね?」アマルガムは目を細めた。「これだから非アートのクズは、ものの価値を理解しない……いいか、そのガキどもは交渉材料だ。単なるトークンだよ。真の宝石はそこのザナドゥ=サンだ……それを、はっきりさせておきたい!」「どうでもいい」

「俺も助けてくれ! 頼む!」ザナドゥは叫んだ。「俺も、ワケがわからんままに連れてこられた。俺も被害を……」「黙っていろ」ニンジャスレイヤーは遮った。彼は手を開き、握った。赤黒の火花が散った。「イヤーッ!」アマルガムが鉈でニンジャスレイヤーに襲いかかった!

 KRAASH! 大鉈を振り下ろす! 床が砕ける! だがニンジャスレイヤーはそこにいない。転がりながら回避し、ショートフックを打ち込む!「イヤーッ!」「イヤーッ!」アマルガムは鉈から手を離し、短打戦に応戦した。激しい打ち合いが始まった。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 残像すら伴う打撃戦。その如何に運命を賭けるしかないのか。ザナドゥは天井を見やった。そのとき、ボロボロのタイルが横にスライドし、ピザ配達員の女が顔を見せた。明るいオレンジの髪の女だった。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」二者が争い合うなか、彼女は身軽に降りてきた。

「タスケテ!」「マジでヤバい~」バタつくトイコとヨウナシを、彼女は腕力で素早く解放した。そのとき、ザナドゥは彼女がウキヨであると気づいた。ウキヨは女子高生に屈み込んだ。「貴方がたのご家族が、心配していますよ」「ワシらの……?」「どういう事」「一週間ぐらい連絡を入れていなかったのですね? それで、依頼が」

「ママが……!」「ウワーッ! ママー!」トイコとヨウナシは涙を溢れさせた。ウキヨは二人を優しく抱きしめた。「もう大丈夫です。邪悪なニンジャも倒します。サイオー・ホースな」「お前一体……」ザナドゥは訝しむ。「イヤーッ!」「イヤーッ!」KRAAASH! 蹴り合いのノック・バックで、ニンジャスレイヤーが調度を破壊した。

「彼は、ニンジャスレイヤーです」トイコとヨウナシを隅に退避させ、ウキヨがザナドゥに近づいた。「アーティストの腕を切断する恐るべきニンジャ……ニンジャスレイヤー=サンはその影を追っていました。並行した二つの事件がつながった形で……」「俺を解放してくれ。頼む」

「アブナイ!」「グワーッ!」ウキヨはザナドゥを椅子ごと引きずり倒し、共に倒れ込んだ。一瞬後、そのすぐ傍を、投げ飛ばされたアマルガムが通過し、壁に背中から衝突した。「グワーッ!」カラテを構え直すアマルガムに向かって、ニンジャスレイヤーはツカツカと歩を進める……!

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