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S3第6話【エスケープ・フロム・ホンノウジ】分割版 #3

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 護送トラックに向かい合って座る5人は皆、茶色装束のチューニン階級である。彼らの表情はいかめしく、不安と警戒のアトモスフィアは消えなかった。カネトは沈黙に耐えかね、隣のジェイソンに話しかけた。「なあ」「……どうした」彼だけがカネトの知り合いで、他の3人は他所の奴らだ。「どう思う」

「何が」「つまり、これから何があるかだよ」カネトは言った。ジェイソンはカネトを見た。「そりゃあ、カイデンだ。決まっている。俺らは成し遂げた。昇進だ。栄光を手にするんだ」「その割には、お前だって表情が引きつってるぜ」カネトは食い下がった。向かいに座る3人を見る。「アンタらもな」

「チッ。うるさいぞ」一人が言った。「惰弱な気分を俺達に吹き込むな」「気になるだけだ」カネトは言った。「俺らはコクダカをもらって、今までやってきたがよ。その……この後はつまり……カイデンするってことなんだろ」「そうだ」ジェイソンが頷いた。「マイトイカラス=サンのようにな」

 マイトイカラス……エリートの中のエリート。この国でゲニンから成り上がった理想のニンジャだ。彼はタイクーンから直々にカイデンされ、センシとなった。今後は華々しい作戦に参加するのだろう。そしてカネト達は彼に続く存在という事になる。だが、トラックの荷台で、カネトは緊張を募らせていた。

「ホンマル前の例のストーンヘンジの門……アレを使うわけだろ」「そういう話だな」タイクーンに認められたチューニンは、遥かなるネザーオヒガンの地でさらなるコクダカを与えられる……そのように言われている。神話的であった。恐怖ばかりが募る。「あれは奴隷穴だろ?何故俺達が」「さあな……」

 ホンマル前のポータルには、奴隷を満載したトラックがよく入っていく。入るとき荷台は満載、出てくるトラックは無人だ。チューニン達は皆、その光景を目にした事があった。「簡単な事だ。俺達は精強なチューニンであり、奴隷は惰弱だ。何を恐れる」一人が言った。「気持ちが奴隷の奴はカエレ!」

「俺は必ず昇進する」「俺もだ」「俺も」「クッ……わかったよ。俺がおかしいだけだ」カネトは俯いた。こんな惰弱な精神状態では実際まずい。勝ちまくって成り上がる。カネトに残された道はそれだけだ。彼は妻と離婚し、親権も失って、身一つでネオサイタマからネザーキョウにやってきた。

 平民に威張るだけの能無しを尻目に、自主的な瓦割りやビースト狩りに勤しみ、ヤマザキのイクサでジェイソンと共に最前線へ切り込み、敵将を討った。UCAニンジャとこちらのセンシがほぼ相打ちになったところのおこぼれをもらったわけだが、イサオシはイサオシだ。

 そして装束は白から茶色になり、チューニンとして、この首都ホンノウジで名誉ある職務につくことができた。そこへさらに今回の追加コクダカ付与の儀だ。「ジェイソン=サン。俺もアゲていく」「ア? そうだとも。それでこそお前だよ」ジェイソンはホッとしたようだった。「強いニンジャになろうぜ」

 ガタン! 荷車が揺れた。護送トラックは舗装路を外れ、ゲートを通過して練兵場に到達。カネトは身を乗り出した。あの恐ろしいストーンヘンジと黒紫のポータルが斜面の上に見えた。ポータルはバチバチと歪んだ雷光を纏っているように思えた。訓練するゲニン達の横を通り過ぎ、トラックは進む……。

「運転手の奴は知ってるのか、詳細を」「さあな」「オイ、黙れお前ら! 突っ込むようだぞ……!」トラックが速度を上げた。珪素質の石柱にランダムに囲まれた黒紫のポータルに……トラックは飛び込んだ……!


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 ……視界が暗転し、おぼつかない夢が訪れた。食卓の夢だった。妻のヤワコ、2人の娘……カネトは叫んだが、声は01のノイズと化し、頭上の金色の太陽へ吸い込まれてゆく……01001010……荷台が揺れた。カネトは我に返った。まず目に入ったのは、崖下で飛沫を上げる真っ赤な溶岩だった。

「何だ?」荷台の者達は皆、驚愕と共に周囲を見渡した。空は極彩だが暗い。謎の「色」だ。太陽のかわりに金色の立方体が浮かんでいた。「アイエエエ!」悲鳴が聞こえた。ジェイソンがそちらを見やり、呻いた。見下ろす崖下、赤い川のほとりで、痩せ衰えた奴隷達が泣きながら小石を積み上げていた。 

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