見出し画像

巨大ロボみたいなビルが好きなことと、縦横のスケール感の違いからくる距離感の狂い


Twitterに貼ったこの写真は、九龍駅前の高層マンション。強そう。同じ地点からグルッと回ると他はこんな感じ。

スマホのカメラだとなかなかその威圧感を出せない。絶対これ映画だと悪い暗黒メガコーポとかの社屋でしょ。「悪い=強い=パワー=でかい=かっこいい」という超ローコンテクストで頑強な理論が俺の中で再構築されメガロマニア心が満たされてゆく。やっぱりピュアな心は巨大ロボを求めてるんだ。

だんだん可愛く見えてくる。巨大すぎロボみたいな風情。

こっちはそんなに個性がないけど、こんだけギュギュっと集まると密度で興奮してくる。

そしてこういう巨大建築や高層都市に直面すると、脳みそが負荷をかけられて混乱を起こすのが何より面白い。海外に取材旅行に行く時は、ツアーとかはまず使わず、可能な限り歩き回り東京のスケール感と比較する。ヨーロッパのスケール感は日本とそんなに変わらない感じだ。

LAは横方向のスケール感が違った。メシを食おうと思って地図アプリを開いて目的のレストランを発見したとして、「3ブロック先だから歩いてすぐだろ」と思って本兌と歩くとめちゃくちゃ遠く、炎天下だと大変なことになり挫折する。1ブロックの感覚が日本と全然違うのだ。よく見ると、走ってるトラックとかビルのドアとか看板とかパーツがいちいちデカいことに気づく。このパーツのデカさを脳みそははじめ全く理解しようとせず「ゆってもトラックはトラックでしょwwww」「1ブロックは1ブロックでしょwwww」みたいに軽々しく惰性で捉えるため、実際のサイズとの違いで齟齬が起こりたいへん混乱するのだが、2、3日すると脳みそも流石にあほではないので慣れてくる。その慣れてビシっと決まってくる感じが、オープンワールドゲームとかで最初わけもわからず右往左往してたのがだんだん自分の中に地図と距離感が生まれる快感にも似ている。

NYはこれに加えて縦方向のスケールの違いが加わるので再度混乱する。集合住宅の背の高さが東京の倍くらいあるような感覚だ。しかしこれは距離感でいうと、LAの場合とは逆に「遠いと思ったら意外と近かった」という現象を引き起こした。科学的にどうなのかは知らないが、個人的にはそうだった。郊外まで行くとLAと同じになる。

香港はどうかというと、体格が日本人とあまり変わらないせいか横方向は日本とそこまで変わらないスケールなのだが、縦方向のスケールだけが違った。東京だと15階とか20階建てくらいの感覚の大通り沿いマンションが、40階建てとか50階建てくらいだったりする。深圳まで行くとさすがに中国特有の「面積の広さ」が出てくるが、一個一個のパーツはアジア人向けセットから作られているためか、距離感の狂いを生む事はなかったし、ひと駅とかひとブロック歩いた時の距離感もあんまり変わらない。しかし何の脈絡もなく突然巨大建築物がドンと生えていたりするので、それはそれでまた距離感が狂う。

日本に帰ってきて香港や九龍の過密感覚をどう取り戻すのが適切かと言うと、アメ横の商店街の上にびっしりと50階建てくらいの集合住宅が聳え立っているくらいのイメージでいくといいのではないかと思う。そして縦方向の過密度が増せば増すほど、ドローンによるピザ宅配とかスピナーみたいなのによる空中水平方向移動の需要が高まってくるというのが自然な欲求として感じられる。多分、世界で一番早く警察が飛行バイクを導入しそうなドバイとかもそうなのだろう。

日本はまだまだ全然縦方向の過密度が足りないので、サイバーパンク的東京を2048年までに実現するには、もっともっと縦方向に過剰増築が必要だ。フィクションの一場面として切り取るならば、横方向のスケールは実はどうでもいい。横方向のスケールは文章で表現しやすいが、縦方向はなかなか難しい。ある程度実際に見て体験しないと、脳みそがそれを延長線上に想像できないからだ(VRにはその辺を期待している)。なので、東京にはもう一度心の奥底から響いてくる「安全と綺麗さを重視してみたけど、なんかブレードランナーみたいな未来のほうがカッコよかったな・・・・というかでかいビルかっこいいよね・・・・強そうだし・・・・」的な声に素直になり、過剰増築特区みたいなのでも作って、アホみたいな縦方向密度のネオン街や電気街みたいなものを築いてほしい。東京都庁みたいな合体変形しそうな巨大建築ロボ感をぜひもう一度取り戻していってほしい。クールジャパンとかおもてなしとか言ってる場合じゃないことに気づき、通勤電車を2階建てにする暇があったら高層建築物の高さをすべて2倍にして「どうすんだこれ」みたいな状況になってから改めて解決策を考えることにして、脳みそを驚かせて欲しい。

しかし現状たぶん無理なので、せめて自分だけでもそっちの方向に頭を切り替えながら「本当はこうしたいけどいちゃもんつけてくる人が1万人に1人くらいいるかもしれないしそうなったら対応面倒だからやめとこ」みたいな過剰かつ怠惰な安全方向へのシフトを引き続き極力控えていきたいと思う。

(杉ライカ)


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?