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ゲーム屋人生へのレクイエム 51話

家庭用ゲームの仕事を本格的にはじめたころのおはなし。

「らんらんふんふんらんらんふんふん」

「ご機嫌がいいですね」

「いつも見出し画像でお世話になってる白黒ええよんさんの記事でこの話をとりあげてもらって上機嫌なのよ。ほら」

「わあ、ほんとだ~。見出し画像に原稿用紙が50枚ありますね」

「うむ。50話だからかな。感謝感激雨あられとはこのことだ。じゃ気を引き締めてはなしを続けるぞ」

「はい。おねがいします」

「朝から晩までいろんなゲームができる仕事があったら楽しいと思うかい」

「そりゃもう間違いなく楽しいと思います」

「自分でプレイするゲームを選べなかったらどうだろう」

「それでも楽しいと思います」

「フフフ。知らないということは幸せなこともある」

「なんですか、意味ありげな言葉じゃないですか」

「プロダクトマネージャーの下で働きはじめたんだけど、最初に与えられた仕事は本社から毎週どっさりと送られてくるゲームを評価することだったんだよ。この評価というのが重要でね。ただ遊ぶのとは全く違う。アメリカ市場に移植するゲームの候補を評価するんだけど、どんなゲームだろうと最低でも1面クリアまではプレイすることが求められるんだよ」

「楽勝じゃないですか。1面クリアすればいいんでしょ」

「クリアしたら評価表に採点するのよ。コンセプト、ストーリー、操作性、音楽、ゲーム性、グラフィック、市場性、移植難易度、忌避項目の有無などなど多くの項目について評価しなければならない。これらのバランスの取れたゲームかどうかを長所、短所の視点から全項目を評価するんだよ。ただ良い、とか悪いではなくてどっちもできる限り客観的に評価することだ。クソゲーだってどこかいいところがあるはずだと考えながらプレイしなければならない。その逆で一見よさそうなゲームでもどこかに欠点があるのではないかと疑いながらプレイする」

「大変そうですね」

「おう。大変だ。最初は大したことないだろうと舐めてかかっていたんだが、評価するゲームの数もさることながらあまりのクソゲーレベルに何度コントローラーを床にたたきつけてやろうと思ったことか。どうすればこんなクソゲーを作ってしまうのか全く理解できなかったよ。1面クリア必須だから途中でやめることもできない。そしてどんなゲームだろうと評価表で採点してコメントをつけないといけない」

「合計でどのくらいの数のゲームを評価したんですか?」

「正確な数はわからないけど300以上はあると思うぞ。中には完成しているゲームばかりじゃなくて開発途中のゲームもあったな。来る日も来る日も朝から晩までゲーム評価でね。1か月くらいするとゲーム開始から30秒くらいでクソゲーだと判定できるようになったぞ。クソゲー鑑定士の資格がもしあれば俺は一級鑑定士になれる自信がある」

「そんな資格誰が欲しがるんですか」

「うーん。いらねえな」

続く
この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません。

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