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鏡の向こう側

これは15年前の夏、実際に起きた出来事をまとめたお話し。

当時私は中野坂上とJR中野駅との丁度中間地点に住んでいたが、その家は(後から聞いた話より)多くの死因不明の死亡者が出た家として長年空き家になっていたそうだ。
ホームレス生活を繰り返していた当時の私、それには色々事情があったがそれはここでは省略…、その家にルームシェアをする事になった私は当時のその家の借主であったシェアメンバーのリーダーに入居を申し入れ、何も知らずにその家の一室を借りる事になった。

不思議な出来事は入居する前の、内見の段階で既に起きていた。

内見時刻が良くなかったのか、雨の降る三月のある夕方6時過ぎに私は、その家を内見する事になった。内見する段階で既に私は入居を決意していたので、先に入居費用を大家に入金した後に若干の荷物を部屋に置いて帰る為に、内見と下見と部屋の確保を兼ねてその家を訪問した。

誰も居ない筈の家のどこかから話し声が聴こえていたのだが、私はその時既にその家に別の入居者が住み始めていると思い込み、別に気にするわけでもなくノックをして一人でトイレに入る。すると(おそらく声の印象から)大柄でくぐもった声の男性が私に話し掛けて来たので、「今使用中です。」と返事をするとあとに静けさだけが残った。
トイレのドアを開けて「終わりましたよー!どうぞーーっ!」と叫ぶが、誰も現れないし家自体が真っ暗闇でさっきまでの人の話し声も消え去っている。

不思議だなーと思いもう一度「終わりましたよ!トイレどうぞーー!」と大声で叫ぶと、「今行くよ。」とかなり近距離から声がしたが誰も居ない。
これはもしかして…と言うイヤーな感覚を残したままその日の仕事先に向かい、一日後に私はその家に入居した。

翌日既に一人の女性が家の一室に入居しており、その段階でその家の住人は「女性が二人」…と確認をして寝室に戻る。…が、「トントン」と夜中にノックの音がして、扉の外から「誰かいるか?」と男性の声がした。
ルームシェアのリーダーが男性だったのでその人が帰って来たと思い込みすかさず「はーーい!」と返事をするが、誰も部屋には入って来ない。

私の部屋の北側にもう一つ部屋があり、その間が熱いガラス素材のアコーデオン・ドアで仕切られており、そこにふわっと人影が通過した。
丁度その真横の部屋でもう一人の入居者がTVを観ていたので、その映像がガラスに映り込んだと思い込み、その日はそれ以上何も詮索する事なく私は床に就いた。



その翌日からの私は兎に角多忙を極め、中野坂上から赤い地下鉄に乗っては都内各所の仕事場と自宅を往復しなければならなくなった。
だが仕事場から帰宅する度に家の中にはその家の住人以外の色々な人の話し声が増えて行き、遂にある日私は子供数人の幽霊と出くわすことになる。

その子供たちがそうである(幽霊である)と言う事は既に分かっていたが、どういう素性のどういう子供たちか…と言う事を一切私は詮索しなかった。そして何より一切彼らには構わなかった。

私が左足を骨折したのはそれから間もなくの、ある春の夜の事だった。おそらく幼稚園年長組か小学校1~2年生ぐらいの子供の手のひらのような感触が私の背後から私をドン!と突き飛ばし、私はあと少しで車道に体が飛び出すところを辛うじて両手で支えてその場に座り込む形で転倒し、左足首を骨折、全治三か月の大怪我をして入院する事になった。

私は不思議に思い道に転倒した瞬間に周囲を見回すとそこに人影はなく、一台のタクシーが真横をスーー!っと横切って行った。危うくそのタクシーに轢かれるところで、私が横ではなくドスンと座り込む形で転倒したことで難を逃れた。

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