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銘管「橘」について

以前、別記事で一噌庸二師がかつて愛用していた笛が「たちばな」という銘であったことを紹介した。
その時は「たちばな」について全く知らなかったのだが、その後売立目録を調べていると興味深い記録が見つかったので今回紹介する。

売立目録とは

そもそも売立目録に馴染みのない人がほとんどだと思う。
売立とは今でいうところのオークションである。
明治以降、財政的に困窮した旧大名が所有する道具類を売立会で盛んに売却するようになった。
その目録が売立目録であり、一部は研究者や国立国会図書館の取り組みにより電子化されインターネット上に公開されている。

(売立目録100選出リスト)http://www5f.biglobe.ne.jp/~bunkazai/100sen/100sen.html

橘と呼ばれる笛について

この売立目録に記された品目には大名道具の一つとして彼らが所有していた能道具も含まれており、銘管を調べる上で非常に貴重な資料といえる。
そして、売立目録には「橘」という銘管の記録が二つ残っている。
一つは昭和6年3月16日に開催された「上毛佐藤家北越某家所蔵品入札」である。
ここには「148 能笛」として二管の笛が出品されている。
一つは墨地龍蒔絵筒入の笛、そしてもう一つが梨地秋草蒔絵筒入の笛でこれが銘「橘」と記されている。
京橘家伝来と添えられており、この銘が橘家の名前に由来するものであることがわかる。

そして、もう一つの橘の記録が大阪美術倶楽部で開催された昭和8年1月24日の「某家所蔵品入札目録」に残っている。
「293 能笛」として芹蒔絵筒入の笛として銘「橘」が出品されており、庄田定惟文添と記されている。
これは箱が付属しており、その箱に橘と書かれている。
こちらには橘家に関する記載はない。

まとめ

一噌師の談話にある「たちばな」に関係するのではないかと考えられる笛として、売立目録の記録から「橘」という笛を紹介した。
筒やその付属品を見る限りは二つの記録は異なる笛を指しているように見える。
一噌師がお持ちの「たちばな」がどちらの笛なのか、それともまた違う第三の笛なのか現時点では分からないが機会があったら伺ってみたいと思う。

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