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リベラル・アーツ教育と進振りについて【東大の教育制度】

今回は「リベラル・アーツ進学振り分け制度」について書きたいと思います。

東大の魅力 リベラル・アーツ

部屋の断捨離中に見つけた東大のパンフレット。

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東大を目指し始めてから、週に1度必ずお風呂の中で読んでいました。パンフレットには教育制度、留学や卒業生の進路まで東大の特色が数多く記載されていますが、その中でも、受験生の私が特に惹かれていたのは以下の記述です。

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ー以下引用
東京大学では、学生が入学時点の限られた判断力に基づいて専門分野を決定するのではなく、まずは駒場キャンパスにおいて前期課程のリベラルアーツ教育を十分に受けたうえで、進学先の後期課程を主体的に選ぶことを尊重する「Late Specialization(遅い専門家)」を教育の基本方針としてきました

東大の教育システムとして特徴的な前期課程のリベラルアーツ教育。「学部を入学時では決定しない」という自由さは、他の国立大学ではあまり見られず、非常に魅力的です。

※他の大学では、京都大学総合人間学部、早稲田大学国際教養学部、国際基督教大学などがリベラルアーツ教育を行なっている大学として挙げられるかと思います。

リベラル・アーツという名の通り、教養学部の1~2年次では、特定の学問領域に限らず、社会・人文・自然科学を広く学ぶことができます。

私は文系で入学しましたが、理系の講義を履修することが進学要件として義務付けられていました。そのため、
1年次は
・初年次ゼミナール(少人数で行われるゼミ形式の講義)
・情報(パソコンの授業)
・英語・第2外国語
・スポ身(体育のような授業)
などの必修科目に加えて、

・文系科目:経済、倫理、歴史、比較思想、日本文化論....
・理系科目:応用動物科学(獣医系)、宇宙科学、社会システム工学基礎(工学・建築系)...

を履修しました。
物理や数学が苦手な自分には苦行のような講義もありましたが、理系の考え方を学べたり最新の研究成果を聞いたり等の経験があったからこそ、思考の枠をゆるめられたように思います。理化学系のニュースに興味を持つようになったのも大きな変化でした。

また、講義を受ける中で「この分野興味なかったけど面白いかも」という新しい興味関心、「思ってたより合わなさそうだから希望学部変えよう」といった気持ちが生まれ、進学の軌道修正をかけました。
前期で複数の分野の授業を受け、自分が本当に好きなことを考え抜く1年間を過ごせたことで、納得のいく進路選択に繋がったと思います。周囲でも、文転・理転している学生が少なくなかったです。

学部決定までどんな道をたどるの?

東大は前期課程の成績に基づいて後期課程で進む学部が決定される「進学振り分け制度」:通称「進振り」を取っています。前期課程を経て進学する学部を決定するのは2年生の夏休み頃です。

制度自体は比較的有名だと思いますが、入学後、実際にどんな進路を辿るのか、私の体験を踏まえて説明します。
※ざっくりとした説明になるため、詳細は大学のHP等をご参照ください。

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【ざっくりフローチャート】
⑴文科・理科の科類に分かれて受験
⑵入学後は全員「教養学部」に所属。入学時の科類で指定される履修単位(必修・文系選択&理系の選択授業・主題)に従って、様々な分野の講義を履修
⑶2年次の夏に進学希望学部を決定し、第5希望くらいまで申請。
⑷2年後期に学部内定。この時はまだ教養学部に所属
⑸3年春学期に学部に進学。それぞれの学部に所属

少し補足で説明します。

⑵入学後全員「教養学部」に所属。入学時の科類で指定される履修単位(必修・文系選択&理系の選択授業・主題)に従って、様々な分野の講義を履修
→「東大の魅力、リベラル・アーツ」の項で書いたとおりです。ただし、成績には厳重注意です。進振り制度では、前期課程の成績(履修した講義の評点)によって学部が決定されるからです。
例えば、〇〇学部××学科の枠が10人だった場合に15人の生徒が進学を希望した場合、成績が良い学生から進学が可能になります。
どの学部・学科に何人進学希望を出すかは毎年変動するため、「この点数以上取れば進学できる」という明確なラインはありません。そ人気学部に進学したい場合は良い成績を取って競争に勝たねばならず、時には「この学部に行くには△△点以上必要だ」「今年は××学科の人気が高いらしい」などの情報をキャッチしたり、点数が取れそうな教科を戦略的に履修したりする必要があります。

⑶2年次の夏に進学希望学部を決定し、第5希望くらいまで申請。
→進学に必要な単位さえ満たしていれば複数の学部に渡って希望を出せます。私自身も、学部を跨いだ複数の学科を希望の進学先として申請しました。

⑷2年生後期に学部内定。この時はまだ教養学部に所属
→成績・全ての学生の志望状況との兼ね合いにて学部・学科が決定。
内定先発表日に学内のシステムにて「内定先:〇〇学部××学科」と発表されます。発表前後の時間帯は1学年分の学生が一斉にシステムにアクセスするので通信が遅くなります。

内定先が決定し、2年生秋学期までに前期課程で必要な単位を全て取りきれば晴れて3年生に進学できます。

⑸3年春学期に学部に進学。それぞれの学部に所属
→3年生からは教養学部の学生は駒場キャンパス、それ以外の学部の学生は本郷キャンパスを中心に講義を履修していきます。もちろん、後期に進んだ後も他学部の授業の履修は可能です。

以上のような流れで前期課程→後期課程への進学が行われます。

進振り制度のデメリット

ここまで、リベラル・アーツ教育と進振りの魅力を語ってきましたが、デメリットも考えられます。
例えば...

・専門課程の学習を後期の2年で学ぶため、学び足りない感が否めない
・最初から興味関心が定まっている学生にとっては、前期課程の履修要件が足枷になる可能性がある
・大学入学以降も他の学生との競争環境にある
・履修計画に戦略的思考が介入する(気の赴くままの履修が必ずしもできるわけではない)

特に、成績が目的化されてしまうのはあまり良くない傾向だと思います。私自身も成績の平均点を上げるため、
点の取りやすそうな授業をいくつか履修したり、人より多く単位を取得したりといった方法(履修科目を増やすことで単位の母数を増やし点数の低い教科の比重を下げる)を取りました。
興味で履修した科目が難しすぎて離脱、あるいは、勉強したのに単位を落とすといった状況に陥ったときは点数が気になってしまうし、成績発表日はTwitterが成績表祭りになってしんどい気持ちになることもあります。
良し悪しは一口に決められませんが、いずれにせよ興味のアンテナを張り巡らせて貪欲に学び続ける姿勢が必要であることを痛感させられる教育システムだと思います。


私自身は、ある講義をきっかけに学問的関心が大きく変わり、入学時に希望していた学部とは全く違う学部に進学する道を選んだため、リベラル・アーツ教育の恩恵を受けた学生の一人と言えるかもしれません。

受験生の時は進振りについてあまり詳しい説明が得られないと思い、今回の記事を書きました。

大学ではいろんなことが学びたい!
まだ興味のある分野がわからない...
経済学部と法学部、両方興味がある
理系も文系も大好き

上記の気持ちを持っている方は、是非東京大学を進学先の一つとして検討してみてください。

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