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出会ったのは、”ワクワクと難しさ”。日本学生BtoB新聞広告大賞受賞者の学生が語る制作プロセス

2021年4月、「第6回日本学生BtoB新聞広告大賞」の入賞者が発表されました。今年度入賞したのは、全12作品。うち4つの作品が、デジタルハリウッド大学(DHU)の学生によって制作されたものです。

受賞作品一覧
http://www.bbaa.or.jp/student/6stadaward.html

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▲「熟練AIの勘で、変えられるシナリオがある。」後潟美希さん


今回のnoteでは、審査委員会特別賞・協賛企業賞を獲得した、グラフィックコミュニケーションゼミ(担当:藤巻英司教授)の4名の学生にインタビュー。制作の過程でぶつかった壁や、受賞の喜びについて話を聞きました。

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▲大元 かれんさん(「いざ出勤。」)

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▲鈴木 大賀さん(「食う気が起こる空気を。」)

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▲藤原 紗南さん(「食う気が起こる空気を。」)

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▲舘 万里絵さん( 「サイクロ減速機の履歴書」)

日本学生BtoB新聞広告大賞とは

日本学生BtoB新聞広告大賞(以下BtoB広告大賞)とは、日本BtoB広告協会・日刊工業新聞社が主催するコンテストです。

BtoB(Business to Business)とは、企業が企業に対して提供しているプロダクトやサービスのこと。スーパーマーケットを例にとると、私たちが普段買い物をする店舗を運営することをBtoC(Business to Customer)と呼ぶのに対して、BtoBはそうした店舗で使われる機材(例:レジ、冷蔵庫)を製造して販売する企業や業態を指します。

BtoB広告大賞では、協賛企業から出された課題を選択し、新聞広告ブランケット版サイズのクリエイティブを制作します。私たちが街中やネット上で普段よく見るBtoC向けの広告とは異なり、ビジネスマンや会社経営者などの企業人が主な対象となるBtoB広告。この難しい課題に、グラフィックコミュニケーションゼミのDHU生4名はどのように取り組んだのでしょうか?

「賞を取れるかも」というワクワク感がモチベーションになった

——今回のBtoB広告大賞には、デジタルハリウッド大学から5名の皆さんが入賞されています。授業の中で課題の制作に取り組まれたということでしょうか?

鈴木:グラフィックコミュニケーションゼミの中の課題として取り組みました。ゼミ生は全部で12名おり、今回受賞したのはそのうちの5名です。

——どのようなプロセスで制作を行ったのですか?

舘:普段のゼミでは、3つくらいのアイディアを元にラフスケッチを描いて、その中から良いと思うものを自分で選んで制作します。完成までのプロセスの中で、メンバーと意見交換をしたり、考え方をシェアしたりする機会もあります。

ただ、今回は制作プロセスのほとんどすべてが学生個人に任されていたんですよね。週ごとに制作のステップは定められているものの、藤巻先生からは「こういう賞が取れるものだよ」「提出日までに頑張れ!」という温度感でした。

——いつものゼミに比べると、先生との関わりは少なかったということですね。

鈴木:もちろん先生に相談はできましたし、アドバイスもいただけました。ですが、制作過程自体も学生に任されていたという感じだったんです。自由度が高く、個人の裁量の大きい制作でした。

——となると、普段の制作よりも楽しく取り組める側面もありそうですね。この課題に取り組む中で、皆さんにとっては何がモチベーションだったのでしょうか。

舘:もともと私はダイナミックでわかりやすいデザインを得意としていたんですが、過去の受賞作品を見ていくと、私が好きなタイプの作品が多かったんですよね。だから、「自分の好きなデザインで勝負すれば入賞できるのでは?」と心のどこかでちょっとだけ思っていて。

仮に入賞して新聞を開いて自分のダイナミックなクリエイティブが出てきたら?と想像すると心が浮き立ちましたし、ワクワクしながら作品作りに取り組んでいました。

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▲舘さんの自宅での制作の様子

鈴木:僕も賞を取る気満々で取り組んでいたので、すごくやりがいがありました。何が楽しかったのかをあえて一言で表すならば、「わかりやすくなくてもいいという自由」でしょうか。

BtoCの広告の場合、見る人の数が多くなる分「わかりやすさ」が求められます。一方で今回の広告を見るのは「企業の人」。つまり、分かる人にだけ分かるものであればよく、頭を使わせるような方向に振り切ることができたんですよね。BtoB広告は作り慣れていませんでしたが、だからこそ新鮮さがあり、前向きに取り組めた印象が強いです。

「この製品、一体何?」BtoB広告の難しさ

——鈴木さんからは、BtoBならではの楽しさがあったというお話がありました。藤原さん、大元さんはいかがでしたか?

藤原:私が普段制作しているクリエイティブの多くが消費者向け(BtoC)でした。だから「企業から企業の広告って消費者向けの広告とどう違うんだろう?」という違いを見つけるところからのスタートで、すごく苦戦しましたね。

大元:そうそう、わたしも「BtoBってなんやねん!」と思いながら取り組んでいたのを覚えています(笑)。BtoCしかやったことがないうえに、どちらかというとこれまでは直感で制作をしてきたタイプ。募集要項を見て企業から求められていることを確認したときも、正直難しそうだな~と思いました。

——BtoB製品の場合、私たちが日常生活で触れることのないプロダクトであることも多いですよね。その「難しさ」はどのように乗り越えていったのでしょうか?

大元:課題となっている製品を作っている企業のホームページをひたすら見るところからスタートしました。私が選んだのはokamura(オフィス家具などのメーカー)の製品だったのですが、毎年このコンテストに協賛している企業だったので、過去の受賞作品を繰り返し見て、okamuraに好まれる雰囲気を感じ取る作業に時間をかけました

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▲「いざ出勤。」大元かれんさん

舘:私もサイクロ減速機(住友重機械工業)を選んだものの、それが何に使われているものなのかすらわからない。だからまずは、協賛企業に限らず「サイクロ減速機」について広く調べ、身近なところで何に使われているのかという情報をインプットしてから、募集要項やその企業のホームページを見て訴求軸を探していきました。

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▲「サイクロ減速機の履歴書」舘 万里絵

——鈴木さんと藤原さんは、今回共同で制作を行っていらっしゃいます。経験の少ないBtoBであったことに加え、チームで制作することの難しさもあったのではと推測しますが、いかがでしょうか?

藤原:喧嘩もいっぱいしましたね(笑)。

鈴木:そうだったね。でも僕は、喧嘩するくらいの方が良いものができると確信していました。相手のアイディアや制作プロセスに対して「いいんじゃない?」と言うのは簡単。でもそれって、捉え方によってはすごく失礼じゃないですか。作品もその度にブラッシュアップされていくと信じていたので、真正面から意見をぶつけましたね。

藤原:わたしはそんなに喧嘩したくなかったんですが……(笑)。ただ、鈴木君はゼロからイチを生み出すのが得意で、わたしはイチを膨らませていくのが好き。互いに良い部分を高めあえたと思っていますし、本当に勉強になりました。

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▲「食う気が起こる空気を。」鈴木 大賀・藤原 紗南

鈴木:あと、ふたりだと「怖くない」んですよね。ひとりだとどうしても視野が狭くなって考え方に偏りが出てきてしまうのですが、ふたりでやれば、コミュニケーションをとりながら、客観性を失わずに仕上げていける。その点はとてもやりやすかったです。

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▲制作を進める鈴木さんと藤原さん

——対して、舘さんと大元さんはおひとりで取り組んでいます。個人ならではの大変さはありましたか?

舘:個人での制作プロセスは先生に叩き込まれていたので、コンテストだからといって何か変わるということもなく。これまでの学びを活かして、いつも通り進められました。

大元:私もそうです。BtoBという難しさはあったものの、制作のプロセス自体はあまり変わりませんでした。いつもより他のゼミメンバーの意見を聞く機会が少なかった分難しさもありましたが、それも良い経験になったと感じています。

ゼミでの学びを活かし、未来へ

——今回の制作に限らず、これまでのゼミの授業の中で印象に残っていることはありますか?

大元:就職活動に合わせて授業でポートフォリオを作ったときのことが印象的です。ゼミは3年次の夏から始まるのですが、当初からコロナ禍だったこともあって、オンライン授業が続いていました。同じゼミのメンバーなのに顔を見て話をしたのは数えるほど、という状況だったんですよね。

ポートフォリオの制作が始まり、作品を互いに見せ合う中で「こんなにすごいものを作っているんだ!」「この人のこういうところ今まで知らなかった!」ということがたくさんあって、とてもワクワクしました。

舘:わかる!わたしも同じくポートフォリオの制作が心に残っています。印象的だったのは、藤巻先生の学生時代のポートフォリオを見せてもらったこと。作品に対する想いの込め方、作品の見せ方、伝え方……。先生が自分たちと同じ年齢のときに何をしていたのかを目の当たりにして、とてもいい影響を受けました。

藤原:わたしはポートフォリオと一緒に課題で出されていた履歴書のデザインの授業をよく覚えています。

「自分らしさを盛り込んでください」と言われていたから、はじめは自分なりに装飾を付けたデザインで仕上げようとしていました。でも同じゼミの子は、装飾が何もついていないのに先生から「君らしい」って言われていて。装飾をつけることだけが個性を表現する方法じゃないんだと気づいた瞬間でした。そこからは、自分らしさでもある「柔軟性」が表れるような、柔らかなデザインを具現化して作っていきました。

——なるほど。今回の制作やこれまでのゼミでの授業を通して、新たなチャレンジをしたり、壁を乗り越えたり、自分らしさと対峙したりと、さまざまな学びを得てきたことがうかがえました。それでは最後に、お一人ずつ未来への展望をお願いします。

大元:いい意味で「人に頼る」。制作でもプライベートでも、全部自分でなんとかしようとしてパンクしてしまうようなところがあるので、誰かに割り振る力・甘える力をつけて、気楽に取り組んでいけたらいいなと思っています。

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▲「受賞作品はひとりで作り上げた」という大元さんの制作の様子

藤原:「仁」という言葉が好きです。儒教で「優しさ」とか「思いやり」という意味を持つ言葉なのですが、人間関係でもデザインでも「仁」を意識していたいと思っています。「優しいデザイン」とは、見ている人にわかりやすく伝わるデザイン。これからも真摯に制作に取り組んでいきたいです。

舘:もともとわかりやすくてダイナミックな、派手なデザインが好きなのですが、今後は本質にフォーカスすることを大切にしていきたいです。本質をついていて、かつダイナミックなデザインだったら、思いはもっとより強く、遠くまで届くはず。人生もデザインも、本質にフォーカスしてやっていきます。

鈴木:「自分を壊さない」。自分に負荷をかけない方がなんでも楽しめるし、楽しめていればきっと自分が壊れることはない。身体も精神も壊さなければ作品が壊れることもありません。ちゃんと自分のことを大切にしながら、一生制作とともにありたいと思っています。

——本日は、素敵なお話をありがとうございました!

DHUでは、3・4年次のゼミを始め、将来につながる実践的な授業を数多く開講しています。DHUに少しでも興味を持たれた方は、是非夏のオープンキャンパスにご予約・ご参加ください!

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