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汎優生主義のリミット――<ヒミズ>by 古谷実 part2


(『グローバルとパラドックス』 宮永國子編集 世界思想社 2007に所収。宮永國子:  ハーバードライシャワー研究所)

3.汎優生主義のリミット


事例としての<ヒミズ>――<個>の臨界地点に向かって


しかし、汎優生主義にも明らかな限界がある。『ヒミズ』は、それを典型的に表出している。それを抽出してみよう。



 『ヒミズ』は、「ヤングマガジン」2001年9号から2002年15号にかけて連載された古谷実のコミック作品である。筆者が参照したのは、連載とほぼ並行して講談社より2001年7月から2002年7月にかけて刊行された「ヤンマガKC」シリーズの4巻本である。『ヒミズ』は、「より生存に値する/値しない」という価値軸が浸透した<我々自身の無意識>が偏在的なものとなった世界における個人の問題を、その臨界地点において提起した事例である。

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