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デザイン思考における「優れたひらめき」とはなにか?【デザインシンキング・コンサル⑨】

以前アップした本記事を、先日操作を誤って削除してしまいましたので、あらためてリライトし、投稿しました!

こんにちは。DONGURIでデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

「なぜこんなことを思いつけたのか!?」「どうして今まで思いつかなかったんだ!?」とは、優れたデザインへの賛辞ですが、
事程左様に、優れたデザイナーには、インプットとアウトプットのあいだに「感動的なまでの奇跡的なジャンプ」があります。

インプットとアウトプットのあいだの「奇跡的なジャンプ」は、何によってもたらされるのか。それは「ひらめき」という、「ある日突然降りてくるすごいやつ」なのでしょうか?

今回はそんな「ひらめき」とは何か?について、デザインシンキングの観点から、考察しました。

「ひらめき」は誰もが手にできるものなのか?

「感動的なまでに奇跡的なジャンプ」が、天才のもたらす所業だとすると、ひらめきは、限られた人しか手にできないのでしょうか?

私は、ノンデザイナーとして、デザインシンキングを使い、日々、クライアントの課題解決に関わっておりますが、デザインシンキングの思考運動においても「ひらめき」は、非常に重要です。

ただし、デザインシンキングにおける「ひらめき」は、天才が得る(と思われる)神業の如き「閃き」とは、やや趣の異なるものです。そして、その「ひらめき」は、「天才」ではない皆様(当然私を含む!)であっても、手にできるものです。

デザインシンキングにおける「ひらめき」の取り扱い

まず申し上げますと、デザインシンキング/デザイン思考は「いわゆるクリエイティブ」な思考ではありません。

ざっくりかいつまんでいうと、「優れたデザイナーの頭の中を、外から類推し、その思考ステップをトレースして、近接したアウトプットを出せるようにした、一種のエミュレーター」です。

つまり、デザイン思考とは、個人のデザイナーの思考そのものではなく、あくまで外から見て、「こうすりゃデザイナーのすごい思考を再現できるんじゃなかんべか?」として、組み上げられた思考システムといえます。

基本ステップは様々な表現がありますが、このシステムの基本的な推進エンジンは

(1) データの収集
(2) あり得る可能性の探求(発散)
(3) 選択(収束)
(4) 試行

というような塩梅になります(人工知能のそれに近いかもしれません)。

よく見る図として以下のようなものがあると思います。

デザインシンキングにおいては、各ステップごとに拡散と収束を繰り返し、都度小さいアウトプットを出して、次のステップに渡していきますが、「気づき」「洞察」「発想」といった優れた小さなアウトプットが生まれることで、思考運動が活発になり、全体を通じたアウトプットの質が高くなります。

つまり、デザインシンキングにおける「ひらめき」とは、「全体のアウトプットの質を高める、各ステップごとの優れた小さなアウトプットの集合体」なのではないか、と言い換えることができます。

「ひらめき」とは、優れた小さなアウトプットの集合体

たとえば、「共感」のステップにおいては、ユーザーへのインタビューや行動観察など様々な手法を通じて、ユーザーの文脈に身を置くことが推奨されますが、
その過程を通じて「あっ!ユーザーの課題って、実はこうなのでは?!」という「洞察」を得ることができます。

また「発想」というステップにおいては、課題へのアプローチに対するアイディアの発想が行われますが、
ブレインストーミング、あるいはワークショップの手法として、「異なるネタをかけ合わせる」「強制的に視点を変える」など、面白いアイディアを強制的に「発想」する仕掛けがあったりします。

各ステップにおいて、このように様々な「手法」や「手続き」があるのは、「気づき」「洞察」「発想」などといった「優れた小さなアウトプット=ひらめき」を高い質で生むためなのではないかと思われます。

「優れたひらめき」はトレーニングで鍛えられる

優れたデザイナー・クリエイターは、外から見ているとまるで魔法のように、「この発想はなかった・・・」と思わず驚嘆・嘆息してしまうアウトプットを見せてくれます。

デザインシンキングは、優れたデザイナーの思考をトレースしたものですが、もちろん天才と同等のアウトプットを出すことを約束しているものではありません。天才は天才であり、そこには曰く名状しがたいレベル差が存在します。

しかし、天才でない私たちにとって、「優れたひらめき」とやらが、「ふとした瞬間に降りてくる」みたいな天啓のようなものだとしたら、そんな不安定なものに頼るわけにはいきません。

前述したように、デザインシンキングとは、「天才デザイナーの思考をエミュレートした、論理的なシステム」です。そのシステムにおいては、「ひらめき」とは天啓ではなく、優れた思考によって導かれるアウトプットであるはずです。

いきなり「すごい発想」や「クリエイティブな切り口」をさっと出すことはできなくても、論理的にステップを組み立て、意識的にトレーニングすることで、アウトプットの質を上げることはできると思われます。

そしておそらくトレーニングのポイントとして、各ステップの小さなアウトプットである「気づき」や「洞察」や「発想」などを、磨き上げていく、ということがあるのではないかと思われます。

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