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指導者ライセンスを持たない僕の指導法 ~どのようにして育成の名門ラージョ・バジェカーノで契約を勝ち取ったのか~

Hola Chavales!!!!

この度、2020年5月29日に投稿した僕の本を【全文無料公開】したいと思います。

僕のサッカー観の全てが詰まっています。

より多くの人のサッカーを楽しむヒントになれば嬉しいです。



【まえがき】

サッカー大国スペインの本当の強さの秘密は下部リーグや育成にある。
スペインサッカーのリアルをあなたは知りたくないですか?

僕は4年間スペインのマドリードでプレーヤーとしてサッカーをし、そしてアナリストとしてラージョ・バジェカーノU-16のスタッフとしてスペインの現場を経験しました。今回は僕の4年間スペインサッカーの現場で学んだことだけをまとめました。指導者ライセンス講習のような専門的で難しい内容はありません。僕自身は指導者ライセンスを現在持っていません。ただ、あなたのサッカー観が認められればラージョ・バジェカーノで働くことも可能です。この本を読んであなたのサッカーの考え方や見方の視野を広げて欲しい。選手であっても指導者であっても役に立つ内容になってます。是非最後まで読んでください。


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目次

⓵自己紹介  ⓶技術編  ⓷原理原則編  ⓸守備編  ⓹攻撃編  ⓺育成編  ⓻未来編

7つのテーマに分けて40,000文字以上の本になっています。


7割くらいは僕の過去記事を探れば分かる内容です。

“ラージョ・バジェカーノvsレアルマドリード戦の分析映像“

“スペース=時間の講義資料“

“僕の分析の仕方“

今回初めて公開するものもいくつかあります。

いつも僕の投稿を読んで頂いてる方にも楽しんでもらえる内容になっています。

サッカーというスポーツをより楽しむヒントになってもらえたら嬉しいです。


『指導者ライセンスを持たない僕の指導法 ~どのようにして育成の名門ラージョ・バジェカーノで契約を勝ち取ったのか』


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自己紹介

名前:小嶋将太   コジマ ショウタ
生年月日:1997年5月29日
出身:東京都

2017/18シーズンからスペインのマドリードへ。

【プレーヤー歴】

◎日本編

南山イレブンFC→FC多摩→日本学園高等学校サッカー部→東京23FCセカンド

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◎スペイン編

EMF Aluche (2017/18)→AD Alcobendas Levitt (2018/19)→Las Rozas CF (2019/20)→Las Rozas CF (2020/21)

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【指導者歴】

Rayo Vallecano U-16  アナリスト&アシスタント (2019/20)

Rayo Vallecano U−17 アナリスト&アシスタント(2020/21)

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◎なぜ僕はラージョで働けたのか

契約のキッカケは一本のビデオ。

僕が住んでいた家からグランドまでが近いという理由もあって

2019年9月から最初の3ヶ月間はほぼ毎日ラージョの育成年代の練習に行き

下はU−8〜上はU−18までのトレーニングをひたすら外から見学。

各年代の指導者たちが選手に求めてることを聞いて学び。

それを踏まえて週末のリーグ戦を見に行き、ビデオ撮って勝手に分析をするルーティンの繰り返し。


そんな毎日の繰り返しの中である時、この動画を知人を通じてU−13の監督に送ってもらいました。


その後、この動画はU−16以下カンテラ統括長兼U−16監督のルベンまで渡り

『面白い日本人がいるじゃん』ってなったところから全てが始まります。

これは『チャンスだな』って思って、そこから毎週末U−16の試合を観に行ってはまた勝手に分析をして送りつけるということの繰り返し。



だんだん僕のサッカーの考え方や価値観が認められてきて

『是非契約して一緒に働かないか』という話があって契約。


これが指導経験は日本にオフシーズンいた時の1ヶ月半のみ。

指導者ライセンスすら持ってない僕が“ラージョ・バジェカーノ“というクラブで働けるようになった理由です。



これらは実際に契約する前に僕が分析していた動画です。



◎ラージョ・バジェカーノとは一体どんなチーム?

トップチーム:リーガ2部所属 (2020/21)
創設:1924年5月29日
本拠地:マドリード州バジェカス地区
Rayoの意味:イナズマ ユニフォームの斜めのライン

ラージョはスペインの中でも育成の名門。

昨シーズンのU−16ではリーグ戦20節終了時点でレアルとアトレティコを抑えて首位。

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練習環境も天然芝2面・人工芝4面ありメディカルルームまで完備。

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ここで育成年代からトップチームまで一貫してトレーニングをしています。

このような環境で僕はラージョ・バジェカーノU−16のスタッフとして働いていました。


今シーズンはU−17のスタッフとして働いています。


ここから先は僕のサッカー観について話していきます。





技術編

サッカーにおける技術といえば大きく分けて『止める・蹴る・運ぶ』の3つ。

ではまず『止める・蹴る』からまとめていきます。


これは2019年夏に小学生の練習にOBとして指導した時の話です。

コーチからは『止める・蹴る』について教えてあげてほしいと言われていて実際に指導することになりました。

その際のコーチングを文字起こししてみます。


◎最初に伝えたこと

『結論、ボールを止めたらダメ、ボールを蹴っちゃダメ』

それを聞いた子供達の顔はポカーンと。

『この人何言ってるんだろう』って感じ。


◎50メートル走が技術の基本になる

僕が『止める・蹴る』を教える上で

まず最初に伝えたことは『体の向きの大切さ』について。

そのためにまず50メートル走をしてもらいます。


子供達に聞きます。

この中で一番足の速い子は誰?


その子に50メートル走をしてもらいます。

『向こうにあるゴールまで走ってみて。いくよ。よーい、ドン!』


ここで子供達に質問します。

『良い体の向きって何だと思う?』


『良い体の向きっていうのは自分の向かいたい方向に体を向けることなんだよ。みんな50メートル走を運動会で走る時、横向いてスタートしたり、後ろ向きでスタートしたりしないでしょ。みんなゴールに正面を向いて走るでしょ。サッカーも同じだよ』


“良い体の向きとは自分の向かいたい方向(ゴール)に体を向けること“


◎止めるとコントロールは違う

次に説明したのは『止める』について。


子供達に聞きます。

『この中で英語が得意な子いる?コントロールって日本語でなんていうんだろう?』


辞書で調べるといろいろな意味が出てくる中で

コントロール=支配する


『あれ、止めるとコントロールって意味が違うんだね。一番最初にボールは止めちゃダメって言ったんだけど覚えてるかな?』


1人の選手がこう質問してくれました。

『じゃあ、ボールをコントロールするってこと?』


僕はこう答えました。

『大事なのは体をコントロールすることなんだ』

そう言うと子供達の顔は再びポカーンと。


『さっき良い体の向きについて説明したよね。君たちはいつも対面パスをしてるからボールを止めようと(コントロール)しちゃうんだよ。これが三角形になったらどうなるかな?』
『三角形になったら良い体向き(自分の向かいたい方向に正面を向く)を作るためには体の向きを変えないといけないよね。だからこそ大事なのは自分の体のコントロールをすることなんだ』

止めるとコントロールの違いを説明するためには

対面パスと三角形パスと二つを実践させると良いと思います。

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『軸足を先に決めちゃうと動ける範囲が狭くなっちゃうよね。だからコーチたちはみんなにボールを受ける前にステップ踏めよって言うんだ』
『ボールを止めたりコントロールをしようとするのではなくて、良い体の向きを知っていれば、その形になるように体をコントロールしてあげれば良いんだ』

ここで止める意識の強い子は軸足を固定してしまう子が多いです。


◎サッカー走るだけでいい

『良い体の向き』『自分の体をコントロールすること』

そして次は『蹴る』についてです。


『1番最初に50メートル走やったよね。僕はスタートの時によーい、ドン!って言ったんだ。蹴るっていうことはドン!と同じことなんだ』

子供たちの顔は再びポカーンと。


『さっきも言ったけど、君たちは対面パスをしてる。だからボールを蹴ろうとしちゃうんだよ。君たちはもう良い体の向きを知ってるよね?そしてボールを止めるのではなく体をコントロールすることも知ってよね?あとはゴールに向かって走るだけ。ドン!でボール蹴った後、そのままの足でゴールに向かって走るんだ』

よく“蹴った足が走るための最初の一歩にしよう“と言いますが逆です。

“走った一歩目を蹴り足にしよう“です。


『ボールを止めるからプレーは遅くなる。ボールを蹴ってもまたプレーは遅くなる。だからサッカーは走れば良いんだ』


◎忘れられたもう1つの言葉

『みんな、なんか忘れてる言葉ない?君たちが運動会で50メートル走やるとき、きっとスターターの先生はもう一つ君たちに言葉をかけてるはずなんだ』
『それは位置についてだよ。みんなが走るとき先生は、位置について、よーい、ドン!って言ってないかな?サッカーにもあるんだよ。位置についてって言葉が』


もちろん最初は子供達も理解してません。


『もう一度聞くよ。君たちはもう良い体の向きを知ってるよね?位置についてで良い体の向きを作れればもっと効率的にプレーができるようになる』
『つまり“位置について“の時点で良い体の向きができていれば、“よーい“の時点では自分の進みたい方向にボールを運べることができるんだ。スペインではそれをControl Orientado(コントロールオリエンタード)って言うんだ』


◎サッカーはフライングして良い

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『位置についてで良い体の向きを作り、よーいの時点で自分の進みたい方向にボールを運べることができれば、みんなよりも前からドン!することができる。つまりみんなよりも前でスタートが切れるんだよ。運動会でそれをしたらフライングになるけど、サッカーにはフライングがないんだ』
『まとめるとね、サッカーではボールを止めちゃダメだし、ボールは蹴っちゃダメなんだ。だから走れば良い。位置について、よーい、ドン!って』


僕は『止める・蹴る』について教える前にまず

『良い体の向き』を教えてあげる必要があると思います。

なぜなら全ては“良い体の向きを作れるかどうか“で決まってしまうから。


◎ボールを蹴れない日本人

2020年3月下旬に僕がスペインから帰国し

僕が小学生の時に所属していたチームの6年生の卒団式にOBとして参加した時の話です。

びっくりしたのが“ボールを遠くに蹴れない子“がたくさんいたこと。


◎環境に問題がある

“日本にはボールを思いっきり蹴れる場所が少ない“

公園はボール遊ぶ禁止 グランドの無料開放が少ない 学校の校庭での練習

選手が純粋にボールを蹴れる場所が少ないのが原因の一つにあると思います。

スペインの場合、街の至る所に人工芝のサッカーコートがあって

練習をしてない時は子供たちがボール蹴って遊んでる光景をよく見かけます。

環境の差は確実にあります。


◎練習内容にも問題

日本のジュニア年代だと特に

“コーンドリブル“ “リフティング“ “1vs1“ “ポゼッション“

狭いスペースでできるトレーニングが多いようにも感じます。

その背景にはグランドがないという部分もあるかもしれないけど、純粋にボールを蹴る回数が少ない。

僕が提案したいのは仮に大きいグランドがなくてもゴールがあれば思いっきりボールを蹴ることはできるということ。

そうなった時に“シュート練習“は大切にした方がいいです。

ゴールに強くシュートを打つ。

その繰り返しでボールを強く蹴るトレーニングにもなると思います。


◎自分が指導者なら

『蹴れないなら蹴れるように練習しよう』という考えもありますが

『蹴れないなら蹴れないなりのプレーをしよう』そっちの考え方も大事かなと。

僕が指導者だったとしたらこうプレーさせるかもしれないです。

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2ー3ー2でプレーします。

中盤で幅を取る選手がいて前線の2枚は常に深さを取る選手。

GK + CB + MFでひし形を作る事で高さを3つ作ります。

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GK→CBへショートパス。


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CBは相手の中盤の選手に向かってドリブル。

2vs1を作りサイドへパス。

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サイドにパスが出た瞬間にFWは相手の背後にDFの間から背後を狙う。

これでボールを持ちながらハーフウェーラインを超える。


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このように2トップでプレスに来る可能性もあると思います。

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サイドで受けた選手は相手のDFに向かってドリブル。

今度はFWと一緒に2vs1を作ります。

FWは深さを取る選手です。

常にサイドにボールが入ったら相手の背後を狙います。

中盤で足下でボールを受けようとしてはダメです。


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なぜならサイドから中盤を経由して逆サイドに展開しようとしたときに

FWの選手が降りてきてしまうと中盤にスペースができません。

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スペースのあるサイドにボール変えて。

再び相手DFに向かってドリブルして2vs1を作る。

サイドに入った瞬間にFWは相手の背後を取る。


僕ならこうやってオーガナイズすると思います。


◎指導者はどちらかはやらないといけない

“こんな戦術的なことはこの年代じゃできないよ“

って思う方もいるかもしれません。

その場合はロングボールを蹴れるように指導するしかありません。

どちらかは必ず指導してあげてほしいです。

じゃないと子供達が成長できないですから。

『蹴れない子を蹴れるようにする』『蹴れないなら蹴れないなりの戦い方を教える』

どちらかです。


◎運ぶ

ここからは『運ぶ』について話していきます。

さっきの戦術解説で『運ぶ』というシーンがたくさんありましたが

『運ぶ』技術はとても重要です。


◎ドリブルには2種類ある

ドリブルには大きく分けて2種類あります。

“突破するドリブル“ “運ぶドリブル“

スペイン語では“レガテ“ “コンドゥクシオン“と言います。


◎運ぶドリブルにも種類がある

運ぶドリブルにも3種類に分けて僕は考えています。

⓵相手と相手の間へ運ぶ

⓶相手に向かって運ぶ

⓷スペースに運ぶ


この3つの運ぶ種類を教えるために実際に僕が高校生に指導してた際に行った練習メニューを紹介します。

【3vs2→3vs2】

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ゾーンを2つに分けます。

ゾーン1をドリブルでのライン突破しゾーン2に入ります。

ゾーン1から2人の選手が攻撃参加。

ゾーン2でも3vs2をします。

最後はミニゴールに決めるというメニュー。


『切り替え』の要素を入れたかったら守備側にもミニゴールを置きます。

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一度ゾーン2に侵入した選手はゾーン1に守備には戻れない。

奪われた瞬間に素早く奪い返せないとオフェンス側は数的不利(1vs2)の状況が

ゾーン1で生まれてしまいます。


このメニューを使って運ぶドリブルについて3種類解説します。


◎相手と相手の間に向かって運ぶ

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2枚のDFの間に向かってドリブルすることによって外側にスペースを作ります。


◎相手に向かって運ぶ

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相手に向かって運ぶことでDFを固定し2vs1を作ります。

固定することをスペイン語で“フィハール“と言います。


◎スペースに運ぶ

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スペースに運ぶことで相手を引きつけて逆サイドにスペースを作ります。

CBの選手はこの運ぶ技術はマストで習得したい技術です。


これら3つの運ぶドリブルは絶対に覚えてください。

この先もっと戦術的な解説が入ってくる時に必ず出てきます。


そしてここまでが“技術編“になります。

トレーニング論ではなく、技術に対する考え方をメインにお話ししてきました。

サッカー選手にとって“技術“はとても重要です。

技術が高ければ高いほど有利になることは間違いないです。



原理原則編


『スペース=時間』

サッカーとはこれだけです。

それ以上でもそれ以下でもないありません。

この言葉を正しく理解することができればサッカーで起きるほとんどの問題は解決されます。

なぜならこれはサッカーの“原理原則”だからです。


◎何で意味もなくボールに寄っていくの?

僕が2019年夏に母校で高校生の指導者をしていた時の話です。

中学3年生相手に練習試合で1−0で勝ったものの

自分の中では全く納得できる試合内容でなかったので次の日に選手たちに聞きました。

“何で意味もなくボールに寄っていくの?“

“何で狭いスペースでサッカーしようとするの?“


ここで僕が選手たちに伝えてこと。

“スペースとは時間であり、時間とは考える時間である“


◎4vs1のポゼッションに全てが詰まってる


『スペース=時間』という概念の説明を選手達にわかりやすくします。


『1辺が4歩のグリッドを作ったからまずそのグリッドで4vs1をしよう』


ボールを1回失う度に1歩ずつグリッドを広げます。

『じゃあまたグリッドを1歩広げようか』


それを5回くらい繰り返した後に僕が次にしたことがこれ。

『じゃあマーカー回収しようか。次はこの反面のグランド全部使って4vs1してごらん』

ここが答えです。

『1辺が4歩のグリッドで最初に4vs1した時と、最後反面のグランド全部使った時と、どっちがボールが回りましたか?』

スペースが広ければ広いほどボールを失う確率は減ります。


◎なんちゃってポゼッションサッカー

『君たちはパスを繋ぐことはできるけど効果的じゃない』
『相手を動かすって言葉を聞いたことあるよね?じゃあ最初に1辺が4歩のグリッドで4vs1した時と、反面のグランドで4vs1した時と、どっちがDFの走る距離は長くなった?』

誰がどうみてもスペースが広ければ広いほど相手の走る距離が長くなることが分かりますよね。

『君たちはグランド全部使ってサッカーすればいいのに、ボールに近づいて、わざわざ狭いスペースでサッカーをしようとしてる。だから相手も動かない。なんちゃってポゼッションサッカーはもうやめよう』

これが団子サッカーが生まれる理由でもあると思います。


◎守備ができる選手とは?

なんとなく『スペース=時間』という概念が分かってきましたか?

今度は守備の側面から『スペース=時間』という概念を見ていきましょう。

『じゃあ守備ができる選手ってどういうことだと思う?同じ選手が4vs1の守備をしたのに、グリッドが大きくなるにつれてボールが奪えなくなったよね』

問題は『スペースの大きさ』です。

何で守備はコンパクトにするかというと一人ひとりの守るスペースの大きさは小さくするためです。

よく指導者が“1vs1でそれぞれが負けなければ試合に勝てる“と言います。

これは半分正解で半分間違いです。

なぜならどれだけ小さいスペースの大きさで1vs1をするかは

11人のチームでどれだけコンパクトに守備ができるかで決まるからです。


◎走行距離が長いという誤解

『じゃあ君たちは1試合で13キロ走った選手と10キロしか走ってない選手がいたら、どっちがいい選手だと思う?』

13キロ走ってる選手の方が頑張ってるからいい選手?

確かにチェルシーのカンテの運動量が多いという切り取り方をよくします。

ただその切り取り方が断片的すぎます。


チームとしてコンパクトに守備をしていれば一人ひとりの走る距離は短くて済みます。

じゃあ1試合の走行距離が長いということになんの意味があるのか。

その走行距離の内容がコンパクトを保つために走った距離なのか。

だだ単に1人が広大なスペースを守ることで走った距離なのか。

走行距離だけを切り取って評価するのはあまりにも意味がないことだと思います。

◎何度も言うよ

サッカーの基準は『スペース』です。

サッカーの基準が『ボール』になった瞬間にもう成立しなくなる。

だから何度でも何回でも言います。

『スペース=時間』これだけ。

ここが理解できるまではまだ先に読み進めないでください。


守備編

守備編に入ります。

DFラインの高さを基準に3つの局面に分けて考えていきます。

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⓵ハイプレス

⓶ブロックを作る

⓷リトリート

1つずつ説明していきます。


◎ハイプレス

僕がスペインに来て2シーズン目に所属していたチームのハイプレスを例に解説していきます。

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(このシーズンはゴールキックでペナルティエリア内でパスを受けることができません)

相手のゴールキック対して守備の目的は“ロングボールを蹴らせること“です。

戦術的なポイントはSBが相手のウィングとSBの中間ポジションを取り、一人で二人マークすることです。

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相手GKがSBにロングボールを蹴った瞬間にSBがプレスに出る。

最終ラインの形が CB MD CB SBの形になります。

このハイプレスの戦術はSBのタスクが非常に高いです。


◎ハイプレスの目的

ハイプレスの目的は“ボールを奪いに行く“ことです。

一番重要なポイントが“ボールを奪いきれなければファウルで止める“ということです。

先ほどの画像の赤丸を見てください。

あの位置にボールを運ばれたらファウルで止める。

それがこのチームのハイプレスでの約束事。


◎蹴りを入れろ

ハイプレスの練習中に監督がよく言っていた言葉があります。

『相手のすねに蹴りを入れろ』

要するに相手に抜かれたらすねに蹴りを入れてファウルをしなさいという意味。

練習中は本当に格闘です。

足は傷だらけだし、ビブスはボロボロ、選手同士の喧嘩もしょっちゅうあります。

ある日のハイプレスの練習中の出来事です。

SBの僕がボールを受けてインサイドにボールを運んで相手を抜いた瞬間に

僕の足の甲を思いっきり踏まれて倒されました。

その選手が僕に言った言葉が『サッカーってこういうもんだから』。

これがスペインサッカーのリアルです。


◎ファウルに対する考え方の違い

“ファウル=いけないもの“ではなく“ファウルとはサッカーのルールにあるもの“

ファウル一つでリスクが減るならファウルをする。

イエローカード一枚で失点が防げるならイエローカードをもらう。

レッドカードで試合に勝てるならレッドカードをもらう。

この先の話でも頻繁に出てきますがファウルに対する価値観の違いを僕はよく感じています。

ハイプレスという戦術の中にあるファウルで止めるという技術。

すごく大事な要素だと思います。


◎ブロックを作る

今回も僕が2シーズン目に所属していたチームの

E.D.Moratalaz戦で実際に行われた戦術を例に説明していきます。

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2ー4ー1ー3の形でビルドアップする相手に対して

4ー1ー4ー1でブロックを作り守る構図です。

FWが相手のCBのプレーエリアを限定しながらプレスをかけ

サイドハーフが相手SBを捕まえてSBが相手サイドハーフを捕まえるのが基本的なオーガナイズ。


*ポイントがSBの守備の3つのタスク

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相手SH:中に絞った時はマーク 自分のゾーンを越えてまでついていかない
相手SB:CBからSBへのロングボールへの対応(オーバーラップ時)
相手MD:味方へのコーチング パスコースを消させる(中央を閉じる)

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ロングボールの対応も赤矢印のようにボールに寄せるのではなく

黒矢印のように一度深さをとってから寄せる。

理由は守備の原則が“相手⇨ボール⇨自分⇨ゴール“だからです。


ここまでが戦術的な解説になります。


◎ブロックを作る目的

中盤のラインでブロックを作る目的は“相手を前進させないこと“です。

よく“積極的な守備“とか“ボールを奪いに行く守備“と言いますがそれはハイプレスの時です。

ボールの移動中にきちんとボールホルダーに寄せて縦パスを入れさせない。

常にボールは外まわしで前進させないことが目的です。



◎リトリート

今回はラージョvsレアル戦で我々ラージョが準備した戦術を例に説明していきます。

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4−3−3で攻めるレアルに対して4−2−3−1で守るラージョという構図です。

まず最初の前提が“11人全員がCBの前まで下がること“です。

次に“縦パスを消してボールを外へ誘導すること“です。

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相手のSBとSHに対して

我々のSB+SH+ボランチの3人で3vs2を作る。

*この時にトップ下の選手がボランチのスペースを埋める。

*片方のボランチは半分より絞らない。

この2つが重要なポイント。

理由はレアルの両SHが速いので逆サイドでも同じように3vs2を作るために片方のボランチは絞りすぎない。

代わりにトップ下の選手がスペースを埋める。

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相手のクロスに対してはそれぞれのゾーンを埋める。


ここまでが戦術的な解説です。


◎リトリートの目的

リトリートの目的は“ゴールを守る“です。

ゴールを守る上でCBはとても重要なポジションです。

“ボールを追いかける必要なんてない。君がボールを追いかけなくてもボールは必ずゴールに向かってくる。いち速くゴール前に戻りそのボールを跳ね返す準備をしなさい“

僕がCBの選手に伝えたいアドバイスです。


◎ゾーンの守り方

ペナルティエリア内では守らなければならないゾーンが3つあります。

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⓵ニアポスト:近いサイドのCB

⓶ペナルティマーク:遠いサイドのCB

⓷ファーポスト:逆SB


*ゾーンを守るということ

『ミニゴールを使ったトレーニングをしているとき、まずどこを守りますか?ボールですか?ゴールですか?』

ゴールを塞ぎに行きませんか?

『ニアポスト ペナルティマーク ファーポストにそれぞれミニゴールが置かれているのと一緒』

これがそれぞれのゾーンを守るということです。


◎ボールを奪わなくていい場所

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この赤で囲われたエリアではボールを奪うことが最優先ではありません。

⓵時間を稼ぐ 遅らせる
⓶前進させない 
⓷クロスをブロックする
⓸ボールを奪う

大事なのは“ゴールを守ること“です。

ペナルティエリア内のゾーンを埋めるための時間を稼ぐこと。

ゾーンを埋める選手達が良い体の向きを保つためにボールホルダーを前進させないこと。

クロスを上げさせない。

この3つの条件をクリアした上でボールを奪いに行く。

特にSBの選手は理解した方がいいポイントです。


◎目的のまとめ

ハイプレス:ボールを奪いに行く 奪えなければファウルで止める
ブロックを作る:前進させない
リトリート:ゴールを守る

説明時に例に出した戦術は数ある戦術の一つです。

それぞれの場面での目的を理解することが大事です。

それを踏まえて皆さんも戦術を考えてみてください。


◎横のスライドは存在しない

よく“横のスライド“という表現を聞きますがサッカーには存在しません。

1つずつ見ていきましょう。

【FW編】

これは2019年夏に高校生を指導していて実際に起きたプレーです。

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横のスライド☝️

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斜め後ろにスライド☝️

中盤へのパスコースを消すことができます。


【MF編】

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横のスライド☝️

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斜め後ろにスライド☝️

縦パスのコースを制限できます。

スペイン語だと“Media luna (三日月)“と言います。


【DF編】

サイドチェンジされた時が分かりやすいです。

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横のスライド☝️

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斜め後ろにスライド☝️


*なぜ斜め後ろにスライドになるのか

守備の原則は“相手⇨ボール⇨自分⇨ゴール“です。

それはボールホルダーにプレッシャーをかけるDFだけでなく、それをサポートする味方も同じだということです。

つまり

相手⇨ボール⇨味方(プレッシャーをかけてる人)⇨ゴール+自分のマーク“

1回横のスライドをしてみてください。

ボールと自分のマークの両方を見るのは難しいことが分かります。

ボールと自分のマークそして自分とゴールを結ぶためには“斜め後ろにスライド“することになるんです。


◎5バックは本当に守備的なのか(5−3−2)

スペースはどこにあるのか。

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基本的に5バックの場合は2種類のプレスが考えられます。

【中盤を3枚でスライド】

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この場合次に生まれるスペースは逆サイドになります。

ピッチの横幅68メートルを3人でカバーすることになります。


【DFライン5枚でスライド】

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こちらの場合次に生まれるスペースはWBの背後です。


“スペースを使って新たなスペースを作る“という繰り返しです。


◎ウィングバックはサイドバックより走る距離が長い

ペナルティエリア内で守るべき3つのゾーン

“ニアポスト“ “ペナルティーマーク“ “ファーポスト“

WBとSBの守り場所は“ファーポスト“です。

それを踏まえて次の2つの画像を見てください。

【WBからファーポストまでの距離】

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【SBからファーポストまでの距離】

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画像を見て分かる通りWBの方がファーポストまで走る距離が長いです。


◎アンカーの役割

2つの画像を見て分かる通り

5バックの場合の場合はエリア内3つのゾーンを埋めているのに対して

4バックの場合は2つのゾーンしか埋められていないのが分かると思います。

ここで僕がポイントとするのが“アンカー“というポジションです。

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“CBとSBの間のスペースはアンカーがカバーする“

これは僕が2シーズン目にプレーしていたチームの約束事でした。

次の問題は“アンカーとWBの走る距離の長さ“というよりも

“ボールを基準に守備を考えるのか“

“ゴールを基準に守備を考えるのか“です。

前者の場合は

裏に出てきたボールに対して素早くプレッシャーに行きやすい5バック。

後者の場合は

素早くゴール前の3つのゾーンを守れる4バック+アンカー。


僕は“ゴールを基準に守備を考える“ので後者タイプです。


◎守備は層をたくさん作る

“層(ブロック)が多い方が守備は強くなる“

どういう意味かというと

5−3−2の守備ブロックよりも4−1−4−1の守備ブロックの方が層が一枚多い。

そのためより強固な守備組織になるという考え方です。


◎セットプレー

3分の1のゴールはセットプレーで生まれるというくらいセットプレーは現代サッカーではとても重要なプレーです。

守備目線でどのように“ライン設定“をしたらいいのか考察していきます。

“サイドからのフリーキック(Falta lateral)の場合“

基準は『キッカーの利き足』です。

【右サイド キッカー:右利き】

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【右サイド キッカー:左利き】

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◎ラインが上がった理由

“右サイド:右利き“の場合

ボールの軌道は攻撃側の走るコースに向かってクロスが上がってくるため

攻撃側の方がヘディングはしやすいです。

守備側にとっては正面でクリアしようとすると

自分から逃げていくようなボールの軌道になります。

つまりボール方向に体を向けようとすると

体の向きは横向きになるので前に跳ね返すことは難しくなります。

ここでラインを上げすぎてしまうと

クロスに対して走る向きが半身ではなく

攻撃側のように自陣ゴールに向かって走ることになってしまいます。


“右サイド:左利き“の場合

ボールの軌道は攻撃側の走る背中側からクロスが上がってきます。

皆さんは背中側から来るボールを強くヘディングできますか?

守備側にとってみるとボールは自分に向かって来るためヘディングはしやすくなります。

それはキーパーにとっても同じです。

つまりラインを下げすぎると

“弱いヘディングであってもゴールなる可能性がある“

“キーパーが前に出るスペースがなくなる“

という2つの問題があるため少しラインを高く設定するのです。


◎あえて深くライン設定する

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ラインをあらかじめ深く設定することで

ボールに対して正面でヘディングできるようにします。

先程も言ったように

体の向きが半身になったり、下がりながらのヘディングはなくなるメリットがあります。

が、デメリットとしてはよりゴールに近い位置でヘディングシュートをされる可能性があります。

ただこういう守り方があるということも覚えといて損はないです。


◎マンツーマンとゾーンのメリット・デメリット

大きく分けてマークの種類は2つ。

“マンツーマン““ゾーン“か。

それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

【マンツーマン】

・メリット

⓵誰が誰をマークするかはっきりしている

⓶一人ひとりに責任感が生まれる

⓷1vs1で負けなければ失点はしない

・デメリット

⓵1vs1 で負ければ失点の確率は上がる

⓶ブロックやトリックプレーでマークがずれやすい


【ゾーン】

・メリット

⓵一人ひとりの守るエリアがはっきりしてる

⓶ブロックされてマークが外れることはない(エリアを守ってるから)

・デメリット

⓵選手と選手の間でヘディングされた時にフリーで打たれる

⓶もしくはどちらがボールに行くのかの判断が必要

⓷ショートコーナーでボールを動かされた時にゾーンが崩れる


◎CBの賢いプレー

現代サッカーでは“ハーフスペース“と呼ばれる位置から

CBとSBの間を攻撃するスタイルがよく見られます。

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それらの攻撃に対してCBのちょっとした賢いプレーでどのように守るか。

2種類ご紹介します。


◎深さを取る

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SBがボールに対してプレッシャーに出ると同時に近くのCBは“深さ“を取ります。

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その理由は、

SBの裏のスペースに走る相手選手に対してCBの方が走る距離を短くするためです。

つまりフライングをして

スルーパスが出ても先にボールに追いつけるように準備をするということです。


仮に相手が先にボールに触ったとしても

“相手の体の向きがサイドラインに向くようにアプローチをかける”

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これができればワンタッチでクロスを上げられる確率はほぼなくなります。

そこで味方が戻ってくる時間を稼ぐことができます。


◎オフサイドを利用する

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CBが深さをとったこの時点でのオフサイドラインは深さを取ったCBが基準になります。

つまりこのCBがオフサイドラインを決めることができます。

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相手が裏を狙ったタイミングを見てオフサイドラインを上げます。

この場合スルーパスが通ったとしてもオフサイドになります。


◎守備はチームで行うもの

これらプレーを選択する上でボールホルダーの状況が基準になります。

ボールホルダーのプレーの選択肢を制限していることが前提の話です。

そのためにはチームとして守備をする必要があります。

『どれだけチームとしてコンパクトに守備ができるか』

結局のところ一人ひとりの守るスペースの大きさが

狭ければ狭いほど守りやすいし、広ければ広いほどいくら能力があったとしても1人で守り切ることはできません。

守備も『スペース=時間』です。


◎苦しい時間帯を救うのはFWの役割


サッカーを1試合通して見ていると“ゲームの流れ“があって

どんなチームにも“苦しい時間帯“があります。

たとえバルセロナであってもレアル・マドリードであっても。

サッカーを見ていても、プレーしていても“ゲームの流れを読む“ということは非常に大事です。

この苦しい時間帯におけるFWの役割はとても大きい。


◎DFラインの高さをみろ

苦しい時間帯の特徴は

・DFラインが低い(押し込まれてしまう)

・クリアのセカンドボールが回収できない

・DFラインが押し上がらない

・プレーそのものが切れない

他にもいくつかありますが

ポイントは“DFラインの高さ”を見ると個人的に分かりやすいと思います。

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こういう状況になるとどうしてもFWは孤立してしまうことが多い。


◎FWの3つの役割

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⓵DFに体をぶつけること

すごくシンプルで、簡単だけど出来ない選手が多い。

僕の勝手な日本人のイメージは体の接触を避ける印象が強くて

ボールが来てもすぐワンタッチでターンしようとして失ってしまう。

何でDFに体をぶつけることが大事なのかというと

簡単に相手にヘディングさせない、相手ボールにさせない。

相手のヘディングがずれてマイボールのスローインになるだけで大きな仕事です。


⓶時間を稼ぐこと

ターンをしないでっていうことを声を大きくして言いたい。

スペイン語でもよく『Quédatela (キープしろ)』ってよく指示が飛ぶけど同じこと。

ここでいう時間を稼ぐの時間とはDFラインを上げるための時間。

苦しい時間帯の見分け方で“DFラインの高さ“という話をしたけどまさにそれが理由です。


⓷ファウルをもらうこと

何でDFに体をぶつけなさいと言うのか。

何でターンせずにキープしなさいと言うのか。

全ては“ファウルをもらうため“です。

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プレーも切れる、時間も作れる、DFラインも上がる

この1プレーでどれだけチームが助かることか。


今僕が言ったこの3つが一番上手いのがスアレスです。


で、ここまでが守備編になります。


攻撃編

攻撃編は大きく分けて説明していきます。

⓵幅と深さ

⓶ビルドアップ(ボールを前進させる)

⓷ゴールを奪う


◎7人制サッカー

スペインではBenjamin (U-10)までは7人制サッカーです。

(地域によって7人制の年代は異なる場合があるそうです)

特徴的なのはグランドの形です。

ペナルティエリア手前に“オフサイドライン“というものがあります。

このラインの手前でボールを受けてもオフサイドにはなりません。

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ある日、ルベンと一緒に

レアル ヘタフェ レガネス ラージョの4チームで行われて7人制と大会を見に行きました。

その帰り道の車の中でルベンと話した内容を紹介します。


◎7人制サッカーの鍵

僕:『7人制サッカーの鍵は何?深さ?』
ルベン:『深さはグランドを大きく使うために大事だね。俺が7人制サッカーを教えていた時は基本的に1-3-2-1でプレーしていた』
ルベン:『両SBが幅を取りFWには”絶対にオフサイドラインより落ちてボールを受けに来るな”って言ってたんだ』
ルベン:『それともう一つ大事なことが”自陣でボールを失わないこと”。グランドが狭いから直接失点に繋がる。そして”相手陣地に入ったら必ずシュートで終わること”』
僕:『でも自陣でボールを失わないためにロングボールを放り込むのは違うでしょ?』
ルベン:『もちろん違う。多くのチームは1トップもしくは2トップでプレーする。後ろに3枚いるから必ず数的優位が作れるんだ。そこで最初のラインを突破できれば大体は相手陣地に侵入することができる』
僕:『なるほど』
ルベン:『でも実際7人制サッカーは11人制になかなか繋げて考えるのは難しいけどね』


◎深さをとってプレスの逃げ道を作る

“7人制のオフサイドライン=11人制のハーフウェーライン“

ルベンはビルドアップをするときによく

1-4-2-3-1から1-3-5-2に変えるです。(ビルドアップ編で詳しく話します。)

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よくFWに対してこう指示します。

『降りてくるな。お前らは走る選手だ。DFラインにプレスがかかっている時は常にDesmaruqe ruptura (相手のDFラインの背後に走る)しなさい』

それは7人制サッカーのFWに対して言っていたことと同じ。

『オフサイドライン (ハーフウェーライン)から降りてくるな』


◎1−3−5−2を好む理由

僕:なんで1−3−5−2を好むの?

って直接聞いたことがあります。

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理由⓵

・DFラインの背後を狙う選手が2トップにすることで2人いる

理由⓶

・裏をとるFW『深さ』 ピッチワイドにとるWB『幅』のバランスがいい

理由⓷

・中央には3人のMFがいることで数的優位もしくは数的同数を作ることができる

理由⓸

・最初の相手のプレスのラインに対しては必ず数的優位を作らないといけない

・後ろを3枚にすることで数的優位を作る

理由⓹

・仮にボールを失ったとしても中央には3人のDF+2ボランチの5枚いる。


と教えてくれました。


◎背後を狙う重要性

“幅の広さは変えられないけど、深さの長さは変えられる“

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サッカーには“オフサイド“というルールがあります。

この画像の場合、赤枠で囲まれたエリアでしかプレーできません。

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ウィングの選手が相手の背後を取り、相手DFラインは押し下げられました。

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そうすることでプレーできる赤枠の範囲が広がりました。

ピッチをより広く使うためには“深さ“がとても重要です。

なぜなら“幅の広さは変えられないけど、深さの長さは変えられる“からです。


◎結局またスペース=時間

原理原則編で“スペース=時間“について説明しました。

より大きなスペースを持ってプレーするためには“幅と深さ“をきちんと理解する必要があります。

まずここを理解した上で次の“ビルドアップ(ボールを前進させる)“の解説に進んでください。



◎ビルドアップ

ビルドアップを考えていく上で4つのポイントがあります。

⓵スペースの共有

⓶相手の最初のプレスに対して数的優位を作る

⓷中盤で数的優位を作る

⓸外→外の攻撃を持つこと


順に説明していきます。


◎スペースの共有

スペースの共有にも4つのポイントがあります。

⓵スペース=時間 幅と深さを理解する

⓶システムに応じて生まれやすいスペースを理解すること

⓷どうやってスペースを作るのか

⓸誰がそのスペースを使うのか


◎スペース=時間 幅と深さを理解する

これは“スペース=時間“の講義に使用した資料です。

総復習になるので、既に理解していると思う方は飛ばしてください。

これから3つ問題を出します。

紙とペンを用意してください。

【問題⓵】

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『A.B.Cそれぞれのグリッドの大きさで同じ選手が4vs1のロンドをした場合、一番ボールが回ったグリッドはどれでしょう?』


【問題⓶】

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『A.B.Cそれぞれのグリッドの大きさで同じ選手が4vs1のロンドをした場合、一番DFが速くボールを奪えたグリッドはどれでしょう?』


【問題⓷】

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『A.B.Cそれぞれのグリッドの大きさで同じ選手が4vs1のロンドをした場合、一番DFの走る距離が長かったグリッドはどれでしょう?』


3つの問題の答えは出ましたか?

それでは答え合わせに行きましょう。


【解答⓵:C】

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『スペースが大きくなればなるほどボールを失う確率は低くなります』


【解答⓶:A】

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『スペースが小さければ小さいほどDFのボールを奪うまでの速さは速くなります』


【解答⓷:C】

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『スペースが大きくなればなるほどDFの走る距離は長くなります』


ここまでは大丈夫ですよね。

では残り2問。


【問題⓸】

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『A.B.Cそれぞれのグリッドの大きさで同じ選手が4vs1のロンドをした場合、どう4vs1を描きますか?』


【問題⓹】

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『サッカーコート一面で4vs1のロンドをする場合、どう4vs1を描きますか?』


実際にノートに答えを書いてみてください。


【解答⓸】

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『4辺にオフェンスの選手がいて中央にDFがいる』


【解答⓹】

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『4辺にオフェンスの選手がいて中央にDFがいる』

この4人がサッカーにおける“幅と深さ“を表しています。


◎システムに応じて生まれやすいスペースを理解すること

【4−4−2】

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基本的にはサイドです。

しっかりと幅を取り相手が開いてくると縦パスのコースが空いてきます。


【4−2−3−1】

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ポイントはアンカーの選手が相手のトップ下を“Fijar(固定)“することです。

それによりCBがボールを運ぶスペースを与えてサイドにスペースを作ります。


【4−1−4−1】

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“アンカーの両脇のスペース“

このスペースでいかにしてボールを受けて前を向けるか。


【4−3−3】

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“SBにどうやってボールを運ぶのか“

中→外でボールを前進していくこと。

ポイントはサイドハーフの選手が相手のSBを“Fijar(固定)“すること。

それにより相手SBは味方SBにボールが渡った時もプレスに出て行くことができません。


【5−3−2】

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ポイントはSBのポジショニングです。

詳しいことは後ほどビルドアップの例を出してきちんと説明します。


このようにシステムに応じて生まれやすいスペースがあります。

これはあくまでも僕の見方です。

参考にできるところはしてもらい、自分の中でも一度整理してみて欲しいです。


◎偽SBに意味はない

“偽SB“という言葉を聞いたことある人は少なくないはず。

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SBが内に絞りウィングの選手にスペースを与える。

バイエルン時代のペップが攻撃時にSBのラームとアラバを中盤に配置し

ウィングのロッペンとリベリーにスペースを与えたように。

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アンカーの両脇のスペースをSBが使う場面も“偽SB“の特徴の一つ。

日本でも“偽SB“という言葉が流行ったが、果たしてこの言葉に意味があるのか。


◎どうやってスペースを作るのか 誰がそのスペースを使うのか

こちらの画像を見てください。

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先ほどの“偽SB“の形と同じです。

が、今度はSBが高い位置を取りウィングが中に絞っています。

そしてSBが使っていたスペースは今度はインサイドハーフの選手が使っています。

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こちらの画像も同じです。

SBが高い位置を取りウィングが中に絞り

SBが使っていたスペースは今度はインサイドハーフの選手が使っています。


大事なのは

・どうやってスペースを作るのか

・誰がそのスペースを使うのか

です。

スペースを使った選手がSBだったから“偽SB“と呼ばれるようになっただけであり

そのスペースをインサイドハーフの選手が使ったっていいんです。

だからこそ“偽SB“という言葉の一人歩きは危険です。


◎常にどこにスペースがあるのか

“ハーフスペース“ “5レーン理論“などの言葉を聞いたことはあると思います。

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ピッチを5レーンに区切ってサイドから2つ目のレーンのことを“ハーフスペース“と言います。

ここに選手がいることにより様々な効果があります。

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SBがボールホルダーに食い付けば内側から走ることができる。

今度SBが内側の選手をマークしようとするとサイドにスペースが生まれます。

ただ勘違いしてはいけないことは

“ハーフスペースに必ずスペースがあるとは限らない“

ということです。

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このように相手のスライドが速ければそこにスペースがない場合があります。

なので常に“どこにスペースがあるのか“を意識してプレーすることが大切です。


ちなみに僕がスペインにいて“ハーフスペース“という言葉は聞いたことありません。

『相手CBとSBの間を攻撃しなさい。破りなさい』とか。

『相手CB,SB,ボランチ,サイドハーフの四角形の真ん中にいなさい』とか。

そういった表現を使ってる場合が多いです。


◎1vs1の質はスペースの大きさで決まる

“それぞれが1vs1で負けなければ試合には勝てる“

という言葉を聞いたことのある人もしくは言った経験がある人はどれくらいいますか?

では皆さんにここで問題です。

【問題⓺】

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『前者と後者、どちらの1vs1の方がオフェンス側が有利だと思いますか?』

答えは“前者“ですよね。

なぜかというと前者の方がスペースが大きいからです。

同じ1vs1をしていても

スペースが大きければオフェンス側が有利になり

スペースが小さければディフェンス側が有利になる。


“それぞれが1vs1で負けなければ試合には勝てる“

これは半分正解で半分不正解です。

なぜなら“どれだけ大きいスペースを作るか“ “どれだけスペースを小さくするか“は個人ではなくチームで行うものだからです。


◎走行距離の問題

余談ですがここで最後の問題です。

【問題⓻】

『1試合10キロしか走らなかった選手と13キロ走った選手とではどちらが良い選手だと思いますか?』

答えは“走った内容による“です。

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もう既にスペースが大きければ大きいほどDFの走る距離が長くなることは理解しました。

走った内容とは2つです。

⓵Cのグリッドの大きさで1人の選手が走り回った距離

⓶CのグリッドをチームとしてAのグリッドにするために1人の選手が走った距離

*オフェンス目線で言えば逆のことが言えます。

つまり走った内容を見ずに走行距離だけで判断してはいけません。


◎ヘタフェvsアトレティコ・マドリード

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ヘタフェvsアトレティコ・マドリードの試合の分析を例にします。

ヘタフェは4−3−3でハイプレスの時には両インテリオールがCBと相手のアンカーを捕まえるという形になります。(今回はこの形は意味ないです)

この場合アンカーの両脇にスペースがあります。

最初にできるスペースを共有することがまずビルドアップを考える上で大事です。

僕の分析を元にラージョのスタッフと話す内容もどこにスペースがあるのかの共有です。

絶対に間違えてはいけないのが

『ハーフスペースが大事だからここにインテリオールの選手を配置しよう』

『サイドバックが中に絞って偽SBにしよう』

のように自分たちのやりたいことからビルドアップを考えること。

戦術って自分たちが何をしたいかではなく

相手に対して自分たちが何をすべきかです。

相手を知るために分析があるのです。


◎スペースの共有

スペースの共有で大事な4つのポイント。

⓵スペース=時間 幅と深さを理解する

⓶システムに応じて生まれやすいスペースを理解すること

⓷どうやってスペースを作るのか

⓸誰がそのスペースを使うのか


◎最初のプレスに対して数的優位を作る

ビルドアップを考える上での4つのポイントの⓶です。

【相手が1トップの場合】

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【相手が2トップの場合】

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“最初のプレスに対して数的優位を作る=FWの枚数に対して一枚多くする“

という解釈の方が分かりやすいかもしれません。

この考え方は特別新しいモノではありません。

考えないといけないポイントが

“何で数的優位を作る必要があるの?“ということです。

僕の答えは

『運ぶドリブルという選択肢を作るため』

“数的優位を作ってボールを動かしながらパスを繋いで前進する“っていうことも考えられます。

もう少し振り下げていくとこう考えることができます。

数的同数でもパスという選択肢は存在する中で、数的優位を作らないと運ぶドリブルという選択肢って生まれない。数的同数の場合は突破するドリブルが求められてしまう。

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数的優位だからこそ“運ぶドリブル“でプレスを超えることができます。


◎中盤で数的優位を作る

ラージョ(赤)vsアトレティコ・マドリード(青)のリーグ戦で実際に我々が行った戦術を例に話していきます。

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4−4−2で守るアトレティコ。

まず最初のプレスに対して数的優位を作った上で

次に中盤でも数的優位(3vs2)を作ります。

戦術的な話しを加えるとここで大事なのは2トップが相手CBをきちんと固定し

中盤の選手に対してプレッシャーに行かせないようにすること。


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もう一つのオプションとして

3vs2でも上手く前進できない時はFWの選手が落ちて中盤で4vs2を作ること。

ざっくり中盤で数的優位を作るということはこういうことです。


◎外→外の攻撃を持つ

まず中盤で数的優位を作る目的をはっきりさせていきます。

先ほどのアトレティコ戦を例にします。

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“目的=サイドにスペースを作る“です。

相手は中盤で数的優位を作られたらサイドの選手は絞って中盤を助けます。

そうするとサイドにスペースが生まれる。

これはサッカーの原理原則です。

それを踏まえて外→外の攻撃を持っていることが大事だということです。

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中盤がコンパクトになった中で

図のように外→外回しで攻撃する型を持っておくこと。

その上で“外→外の攻撃を持っておく目的“を明確にします。

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“目的=縦パスを入れるため“

外→外を相手(特にサイドハーフの選手)が警戒してくると中盤にスペースが再び生まれてきます。

中盤で数的優位を作っておいた本当の意味はここです。

結局はこの“中なの?外からなの?“っていうやり合いです。

その基準は一番最初に戻って“スペースの共有“でしかないです。


◎ビルドアップでの4つのポイント

⓵スペースの共有

⓶相手の最初のプレスに対して数的優位を作る

⓷中盤で数的優位を作る

⓸外→外の攻撃を持つこと

“自分たちが何をしたいかではなく相手がいて自分たちは何をすべきか“


◎ボールを前進させるための原理原則

ビルドアップの4つのポイントを理解した上で

次に“ボールを前進させるための原理原則“を見ていきましょう。

原則とは“ボールを前進させるためには高さが3つ以上必要である“です。


◎ルベンからのお告げ

当時まだラージョのスタッフとして契約する前。

6vs6+6(フリーマン)のポゼッションのトレーニングをしていたルベンは

2,3分トレーニングした後に一度止めて修正をかけました。

その後ボールの循環もプレースピードも見違えるように変わり

気になったので本人に直接聞いてみました。

するとこう返ってきました。

『La colocación de los jugadores tiene que estar orientada a la ubicación del balón, tienen que ocupar diferentes zonas y respetar las alturas para que pueda haber progresión en el juego,si no, no se avanza』


◎Respetar las alturas とは

日本語に直訳すると“高さを尊重する“です。

この言葉を完璧に理解したのがそれから数週間経った後

U-10のトレーニングで4vs2のロンドを見てた時です。

ふと思ったんです。

『なんで正方形よりもひし形の方がボールが回るんだろう』と。

ここからは全てが一瞬でつながります。


◎高さを変える意味

ここから詳しく説明していきます。

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わかりやすく1-4-3-3を例に話します。

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現在GKからFWまで全部で高さが7段あります。

高さを変えるメリットが“限りなく横パスを減らすこと“です。

図で見てわかるように高さが変われば横パスにならないわけです。

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なぜ横パスを減らす必要があるかというと

横パスは斜めのパスに比べて体の向きが作りづらい。

要するにボールを受けた時に視野が狭くなってしまうからです。


◎同じ高さに3人以上いてはいけない

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3人でビルドアップを組み立てる時を例にして説明していきます。

図を見てください。

3人が同じ高さにいる場合

右CBがボールを持っている時は左CBはサポートできないんです。

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中央CBが1段高さを変えてあげるだけで

左CBは右CBのサポートができます。

そのため同じ高さに3人以上のプレイヤーはいらないというわけです。


◎ボールを前進させるには高さが3つ以上必要

ここで“なぜ正方形よりもひし形の方がボールが回るのか“という問いの答えです。

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よくあるビルドアップの時の4vs2の状況です。

正方形の場合高さが2段しかできませんが、ひし形の場合は高さが3段できます。

ここが答え。

ボールを前進させるためには3段以上の高さが必要です。


◎3点高さの違う三角形

“三角形を作りなさい“

よく聞いたことのあるフレーズです。

ただどんな形の三角形を作るのかまで考えていきたい。

そこで基本的なビルドアップの対応の形を例にして説明します。

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4vs2→4vs3に変わることはよくあります。

この時にサイドバック+インテリオール+ウィングの3人で

3点の高さが違う三角形ができます。

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4-2-3-1の守備ブロックで守られた場合では

センターバック+サイドバック+インテリオールの3人で

3点の高さが違う三角形ができます。

ここで大事なのは

“なぜ3点の高さが違う三角形を作るのか“ということ。

まずはボールを前進させるためには高さが3段以上必要であるということは先ほど話しました。

それと同時に3人目の動きと関係があり

高さが同じな場合パスは横パスになってしまう。

横パスの場合は受け手が視野の確保が難しいということに加えて

サッカー経験者ならわかると思いますが180°のダイレクトパスは難しい。

だから3点の高さの違う三角形を作る必要があるんです。


◎アンカーとSBの高さを逆にする

5-3-2の守備ブロックで守られた時に

僕が考えるのが“アンカーとSBの高さを逆にする“ということ。

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この場合SBがボールを持った時には2通りの守備のスライドの仕方が考えられます。

“DFラインの5枚でスライドするのか“もしくは“MF3枚でスライドするのか“

なぜ高さを逆にするのかというと“相手のスライドの距離を長くする“ためです。

要するに相手をより走らせたいわけです。

そのためにはSBは相手よりも離れていた方が相手は走る距離が長くなる。

なんでもかんでもSBを高い位置に置けばいいわけではない。

これが理由です。


◎まとめ

この原理原則をまとめます。

・選手間の高さについて意識する
・横パスをできるだけ減らす
・同じ高さに3人以上いてはいけない
・高さは3段以上必要(正方形よりひし形)
・3点の高さが違う三角形
・アンカーとSBの高さを逆にしてみる

ビルドアップもボールが前進しなくては意味がありません。


◎5バックの攻略の仕方

ここで先ほど5−3−2の話が出てきたので

僕の考える5バック攻略法を紹介します。

ポイントは“横幅最大限に走らせること“です


◎SBのポジショニング

先ほども言いましたが相手のスライドの距離を長くするためにはSBのポジショニングが重要です。

スペースがあるからと言ってなんでもかんでも高い位置を取ってはいけません。

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◎スライドの出方を見る

スライドは大きく分けて2種類です。

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ここも先ほど話したので大丈夫かと思います。


◎WBの裏のスペース

深さを取るためにはWBの選手が飛び出した時にできる背後のスペースが狙い目。

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タッチラインまでボールを運んだ時の次の目的地は“逆SB“です。

この時の相手を横幅最大限に走らせることができます。

いかにしてWBを走らせて相手の体力を削るか。

試合60分~70分以降に相手の足を止めること。


◎クロスはファーポスト

“WBはSBよりファーポストまでの走る距離が長い“

これは守備編で解説したことです。

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つまりクロスを上げる場所は“ファーポスト“です。

ボールを動かして相手のWBを走らせて体力を削る。

そうすることでより“ファーポストのスペース“が空いてきます。


◎セカンドボールが落ちる場所

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これは僕の感覚の話です。

“ペナルティアーク逆側の赤丸のスペース“

このスペースは空きやすい。

ここにセカンドボールが落ちるためには

クロスはファーサイドを狙った方がいい。

やっぱり中盤の3枚の内1人でもボールサイドにずれると

どうしてもあの赤丸のスペースは埋めきれない。


◎じっくりと戦う

“横幅最大限に走らせること“

ボールを持ちながら常にスペースを探して相手を走らせて体力を奪う。

対5バックは持久戦です。


◎良いサッカーとは本当にショートパスをつなぐことなのか

今まではどうやってボールを失わずにビルドアップをしてボールを前進させるかを考えてきました。

ですがここからは真逆です。

これは僕がスペイン7部リーグでプレーしていた時の話です。(2019/20)

カテゴリーのレベル、チームのレベルが正直とても低く

到底ビルドアップでボールを失わずに前進させるなんてことができるような選手たちもいませんでした。

そんな中で気づいたことがあります。


◎どうせロングボールを蹴るなら

このカテゴリーはレベルが低いので

自陣からビルドアップをしようとすると失って失点することが多い。

つまりボールを持てば持つほど負ける可能性が高くなるというそのようなレベルです。

でもその中で僕が気づいたことが“ロングボールを効果的に使える方法“です。


対角のサイドバックに向けてロングボールを蹴る

僕がいたチームを例にします。

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このカテゴリーでもスペースさえあれば4vs2のボール回しはできます。

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問題は自分たちのアンカーに対して相手のボランチがプレスをかけた時。

このプレスをかいくぐれるレベルのCBとアンカーは残念ながらいない。

ってことでこの時点でリスク回避のロングボールを蹴るんですよ。

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CBが持った瞬間に当然相手は近いサイドを埋めますよね。

“逆サイドの選手は捨てる“

これがセオリーです。

この時に逆サイドのSBがフリーになります。

が、ここで自分たちでボールを繋いで逆サイドまでボールを運ぶことは当然できません。

ここで大事なのは“対角のSBに向けてロングボールを蹴ること“です。


◎セカンドボールが落ちる場所を設定する

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対角のSBに向かってロングボールを蹴るということ。

同サイドにロングボールを蹴ったところで相手は待ち構えています。

ここで大事なのは

“セカンドボールをどこに落とすか設定する“

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赤丸のスペースにセカンドボールを落とすように設定してあげます。

自分たちでボールを繋がなくても相手がパスしてくれればいいんです。

だいたい相手SBは体ひねってサイドラインに向かってクリアしようとします。

でも体をひねっている分そんなに強くクリアできないんですよね。

なので赤丸で囲っているエリアにだいたいボールは落ちます。

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仮に相手SBが体の正面でクリアしたらラッキーです。

キーパーとDFラインにボールが落ちたら超チャンス。


“どうせロングボールを蹴るならセカンドボールが落ちるとこまで設定してオーガナイズしましょう“

これが僕の考え方です。


◎“ボールを失う“という言葉には2つの意味がある

皆さんはボールを失い方について考えたことはありますか?

失い方には2種類あります。

・ボールを失ってなおかつプレーが切れない

・ボールを失うことでプレーが切れる


◎ボールを失ってなおかつプレーが切れない

よくあるパターンを例にします。

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CBがスペースがあるのでドリブルで運びます。

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相手がそのドリブルに対してプレスをかけてきます。

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運んだことによりスペースを失ったCBは慌てて縦パスを入れます。

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インターセプトされたあげく自分の背後のスペースを使われ失点。

これが“ボールを失ってなおかつプレーが切れない“失い方です。


◎ボールを失うことでプレーが切れる

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CBがボールを運び相手がプレスをかけてくるところまでは先ほどと同じです。

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ここでサイドラインを超えるロングボールを蹴り相手のスローインになります

(これは極端な例です)

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プレーが切れている時間で守備ブロックを作り直します。


どちらもボールを失う、つまり相手ボールになる。

ただ前者と後者では圧倒的に状況が違います。


◎もしプレーの切れない失い方をしてしまったら

今までの説明を聞くと

・ボールを失うことでプレーが切れる

この失い方のほうがリスクが少ないなと感じてる方が多いと思います。

ただもしプレーの切れない失い方をした場合にプレーを切る方法が1つあります。

”ファウル”これがプレーを切る方法です。

ファウルでピンチを未然に防ぐこと。

ファウルの使い方が良いと“賢い選手“という評価を受けるのもスペインでプレーして感じています。


◎ボールの失い方を決めてあげる

“いつ・どこで・どのようにボールを失うのか“

サッカー90分間プレーしてたら相手のプレスに捕まることはいくらだってあります。

その時にチームとして慌てないようにするために

“ボールの失い方を決めてあげること“

ボールの失い方を決めてあげれば

切り替えの始まる位置・セカンドボールを拾う位置をおのずと限定して考えられる。

・ボールを失ってなおかつプレーが切れない

・ボールを失うことでプレーが切れる

この2つの失うという意味を理解するとまたサッカーの見方が変わってくると思います。


◎判断と選択の違い

2019年12月19日 Twitterで投稿した内容です。

『相手を見て判断する』
『相手を見て選択する』
2つの言葉を比較した時に後者の方が圧倒的にプレースピードが上がる。

ジャンケンで相手がグー出してるのにそれを見て何だそうか考えてから判断しますか?って話。
グーに勝つのがパーだと闘う前に知ってたら後は相手見て選択するだけじゃないですか?

敢えて難しく説明すると
判断:物事の真偽・善悪などを見極めそれについて自分の考えを定めること
選択:多くのものの中から目的に叶うものを選ぶこと

個人としてもチームとしても
”この状況のときにはこうやってプレーする”
っていうのを手札として持っておいて
後は相手を見てどのカードを出すのか

と投稿しました。


◎SBの13個の選択

ここからは完全に余談です。

僕自身がSBでプレーしていたこともあって

どういったプレーの選択肢を持っていたのかを紹介したいと思います。

①赤線で区切ったエリア内でボールを受けたら仕掛けてクロスで終わる

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②逆サイドのクロスに対してセカンドを拾える位置+ファーポストに入れる

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③相手陣地で受けた場合はFWをSBの裏に走らせる→ペナルティエリア内へ走る

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④SBがCBのスペースを埋めた場合は足下でサポートする

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⑤ビルドアップ時は相手のMFとDFラインの間にポジショニング→ボールを受け相手SBに向かってボールを運ぶ(固定する)→2vs1を作る

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⑥ワンツーで自分が走る

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⑦CBからのロングボールor縦パスを受けた中盤の選手からスルーパスを受ける

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⑧相手SHが自分を気にして下がったら足元で受ける

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⑨相手SBが自分に釣り出されたらFWが裏に抜ける

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⑩右サイドから中盤のMFへ横パスが入った瞬間にダイアゴナルラン

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⑪ドリブルで中に侵入した場合は横パスから相手の背後へ2列目から抜けるorサイドチェンジ

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*中に運んでからの縦パスを自分では入れない→失ったらカウンター

⑫中盤で数的優位を作る アンカーの脇のスペース

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⑬相手SBとCBの間のスペース

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僕はこの13個の選択肢の中で相手を見て“選択“しています。

この選択肢の中に答えがない問題に出会い

新しい答えを探す過程が“サッカーの楽しさ“であり

そしてその答えが“成長“です。


◎SBはペルムータが命

スペイン語には“カバー“という言葉を2つの言葉に分けます。

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赤矢印のカバーの動きが“Cobertura コベルトゥーラ“

青矢印のカバーの動きが“Permuta ペルムータ“

ペルムータを知らないSBは致命的です。

相手の背中を追いかけるのは守備ではありません。

守備の原則は

『相手→ボール(→味方)→自分→ゴール』


◎スライディングはすべきじゃない!?

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スピードのあるSHと対峙するとき

自分よりも1、2歩縦に運ばれるor走り負けて

クロスを上げられそうになる状況はよくあります。

これをスライディングで止めようとしてはいけません。

なぜなら切り返されたときにより危険な状況になります。

もしくは

股の下を通ってマイナスのクロスが上がってしまいます。

マイナスへのクロス ペナルティーマークへのクロスのコースを完全に切ること。

クロスの軌道を黒矢印に限定することが大事。


◎ゴールを奪う

ここまで“⓵幅と深さ“ “⓶ビルドアップ“という2つのテーマで話してきました。

攻撃編最後の“⓷ゴールを奪う“というテーマに入っていきます。

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(僕のメモです)

結論を先に言うと“ゴールを決めたければボールをタッチラインに運べ“です。

解説していきます。


◎点を取るために必要なこと

“ゴールを奪うために必要なことって何だろうか?“

答えは『シュートを打つこと』です。

ここが意外と忘れられがちな部分で

ここを踏まえずに戦術がどうこう言っても意味がありません。


◎どこからどうやってシュートを打つのか

“どこからシュートを打てば良いのだろうか?“

シュート打たないとゴールは入らないけど、さすがにキーパーがいきなりシュートを打ってもゴールは入らない。

『できるだけゴールに近い位置からシュートを打った方がいい』


“どうやってシュートを打てば良いのだろうか?“

もう少し深掘りしてみたら

『できるだけフリーな状態でシュートを打った方がいい』


この時点での結論は

『できるだけゴールに近い場所でフリーマンを作ってそいつにシュートを打たせた方がゴールの確率は上がる』


◎フリーの定義

・どうやってゴールの近くにボールを運ぶのか

・どうやってフリーマンを作るのか

一度前者は置いといて後者の部分から考えることにします。


今回の話の中でのフリーの定義は『DFの視界にいない選手』ということにして考えていきます。

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ライン間でボールを受けた選手をイメージしてください。

相手のMFの選手たちを基準にするとボールを受けた選手は背中にいて視野に入ってないので“フリー“ということになります。

ただ相手のDFの選手たちから見てみるとボールを受けた選手視野にいるので“フリーではない“ということになります。

ここからスーパーミドルを決めれたらそれに越したことはないけど

まだゴールから遠いので確率的には低そうです。

となるとDFラインを攻略しないいけません。

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DFラインを攻略するためにウィングの選手を使います。

そうするとDFの体の向きが変わります。

今度はクロスを受けるFWに注目してください。

手前のCBを基準にするとFWは背中にいるので“フリー“ということになります。

でも奥のCBから見てみると正面にFWがいるので“フリーではない“ということになります。

手前のCBを攻略すれば“フリーマンを作りそいつにシュートを打たせる“という問題が解決されます。

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タッチラインにボールを運びDFの体の向きが自分たちのゴール方向に向いた瞬間に“完全なフリー“が生まれます。

最初にライン間で受けた選手もタッチラインまでボールを運ぶことによってDFラインが下がり

よりゴールに近い位置でミドルシュートを打つことができます。


フリーマンを作るためには『DFの体の向きを変える必要がある』ということがここで分かりました。

そしてDFの体の向きを変えるには『タッチラインにボールを運ぶこと』が大事だという結論になります。


“どうやってゴールの近くにボールを運ぶのか“

『タッチラインを経由してボールを運ぶ』


◎目的と手段

“タッチラインを経由してゴールに近づけばいい“ということであって

“タッチラインにボールを運んでクロスを上げろ“と言ってるわけではありません。



この記事で書いた『イニエスタとネイマールの関係性』と同じ説明になります。

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タッチラインに運ぶことで一度DFはマークを見失う→バックパスに対してラインを上げた時にDFの背後にはスペースが生まれる→マークが外れ2列目からスペースに侵入する

のように攻撃のバリエーションは多種多様に考えられます。

大事なのは『何でタッチラインにボールを運ぶのかを理解していること』です。

それはDFの体の向きを変えフリーマンを作るためです。

目的はゴールを取ることであって僕の話はそのための手段です。


◎CBとSBの間を攻撃する

“どうやってボールをゴールの近くまで運ぶのか“

僕の考えるポイントは“CBとSBの間をどう攻撃するのか“です。

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そこから逆算してビルドアップを考えていくと色々な形が考えられると思います。

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(ラージョのビルドアップの型の一つ)


◎なぜCBとSBの間を攻撃するのか

“CBを引っ張り出す“

これに加えて

“CBとSBの間を攻撃すれば相手SBと戦わない“

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*CBを引っ張り出す=CBと最初から勝負できる


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CBとSBの間を攻撃できない場合相手SBと戦わないといけなくなります。

だから裏を返せば守備側が内に絞るのはそのためです。

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何で守備側のSBのペルムータが大事になるかというと

仮に自分の裏のスペースを使われたとしても、もう一度守備をするためだということ。


◎ゴール前はスピードと迫力

ただ最後にゴールを決めるためには

“ゴールに向かって走る選手がどれだけいるのか“だと思います。

そこの“スピード“と“迫力“。

結局ボールの矢印がゴールに向かない限りゴールは生まれません。

だからこそ、自分たちがゴールに向かってどれだけアクションを起こせるかが点を取るための鍵だと思います。


◎Jリーグにはパウサがない

フェルナンドトーレスとジョーの対談で

(日本語翻訳も付いているので是非見てみてください)

Jリーグについてこう語っていました。

『彼らはボール扱いがうまい。だけどフットボールは別だからね。彼らは常に攻めて攻めて攻めたがる。3−0でも攻め続けるから少し落ち着こうよと』


パウサとはスペイン語で“小休止“という意味です。


◎パウサを学ぶ上での最高の教材

2019/2/28 国王杯 バルセロナvsレアル・マドリード バルセロナの2点目のシーン

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始まりは67分のレアルのコーナーキック。

1−0でバルセロナが勝っています。

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ここでバルセロナのカウンターが始まります。

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ポイントはここでのスアレスのプレーの選択です。

Jリーグであればこの位置で受けたらドリブルで仕掛けるかもしれません。

ただスアレスが選択したプレーは“バックパス“。

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ここでブスケツが選択したプレーも“バックパス“。

せっかくカウンターでゴール前までボールを運んだのにも関わらず2本も“バックパス“を選択しました。

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ただ次の瞬間レアルのDFラインと中盤の間に広大なスペースが生まれました。

レアルの選手たちはコーナーキックから自陣のペナルティエリアまで全力で戻った後2本の“バックパス“によってもう一度DFラインを押し上げないといけません。

が、押し上げることができず広大なスペースが生まれてしまったのです。

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ブスケツにパスが入ったところに

遅れてセルヒオ・ラモスが飛び出してることがわかると思います。

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ここでデンベレがCBとSBの間を攻撃します。

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最終時にはヴァランのオウンゴールという形になりましたが

最後ゴールに向かって走った選手はバックパスを選択したスアレスです。


◎パウサのないプレミアリーグ

2018/19シーズン CL決勝の1シーンです。

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1−0でリヴァプールが勝っている74分。

左SBのロバートソンがインターセプトしたところからカウンターが始まります。

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ここでサラーが選択したプレーは“クロス“

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セカンドボールを拾ったトッテナムが今度はカウンターを仕掛けます。

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“パウサ“がなかったことで

リヴァプールのDFラインが上がる前にボールを失ったため

逆にトッテナムにスペースを与えてしまいます。

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インターセプトからここまで22秒間。

つまり22秒間でピッチを約1往復したような感じです。

これがプレミアリーグらしいと言われれば確かにそうだなと思う部分でもありますが。。。


◎ゴールに向かうだけが攻撃じゃない

時間帯やゲームの流れやスコアによって攻撃側のプレーの選択というのは変わります。

一見ゴールから遠ざかる“バックパス“であっても

チームに落ち着きを与え、相手を動かしてより大きなスペースを作る。

そのスペースを使って再びゴールに向かう。

チームとしてゲームをコントロールすることが大事になる。


という感じで攻撃編では3つのポイントに分けて話してきました。

⓵幅と深さ

⓶ビルドアップ(ボールを前進させる)

⓷ゴールを奪う



育成編

ここからは“育成編“に入ります。

僕は“育成の指導“にものすごく興味があります。

ラージョ・バジェカーノという育成の名門で学んだことを書きつつ

僕の育成の考え方について話していきます。


◎14歳までの育成で勝負あり!?

“技術“ “戦術“ “フィジカル“

の3つの観点からラージョ・バジェカーノの育成の実態を紹介。

今回の内容は全て

僕とルベン(カンテラU-16以下統括兼U-16監督)の車中での話。


◎技術

僕:『技術の側面において育成年代ではどのように個にフォーカスしてるの?』
ルベン:『Infantil (U-14)までは毎回のトレーニングで30分間は個人技術の向上のための時間を作るよう各カテゴリーの監督に指示している』
僕:『技術って言っても例えば何?』
ルベン:『両足できちんとボールコントロール、パス、ドリブルが出来るようになること。体の向きや顔を上げてプレーすること。とかかな』
僕:『でもそれらの技術はよりサッカーに近い状況でやるんでしょ?日本ではマーカーを並べてドリブルしたりとかするんだけど』
ルベン:『違う。Analiticoだ』
僕:『Analiticoってどういう意味?』
ルベン:『Analiticoというのは要するに相手をおかずに技術に特化してトレーニングをするということだ』
僕:『じゃあInfantil (U-14)より上のカテゴリーになるとどうなるの?』
ルベン:『よりサッカーに近い状況下で判断して技術を選択するようにトレーニングしていくんだ』
ルベン:『考えてみて。俺たちはほぼInfantilのような技術のトレーニングはしてないだろ』
僕:『確かに。サッカーにおける技術はInfantil (U-14)までには完成されてないといけないんだね』
ルベン:『そういうこと』


◎戦術

僕:『何歳から戦術というものを教えるべきだと思う?』
ルベン:『戦術と言っても例えば?』
僕:『週末の対戦相手に向けてどのように戦うのかとか』
ルベン:『Infantil (U-14)まではそういった形の戦術のトレーニングはほとんどしない。もちろんレアルとかと対戦する時は少しは戦い方というのをチームで確認するかもしれないけど』
ルベン:『でも例えばスライドに関して。ボールが右サイドにあるのに左SHの子が外に開いてるのはおかしいよね。もしくは味方がボールホルダーにプレッシャーをかけていたら残りの選手は絞って縦パスを入れさせないだとか。そういう基本となるところは教えていかないといけないと思う』
ルベン:『俺が去年Alevin (U-12)の子たちを指導してた時にカップ戦でバルセロナと対戦したんだ。彼らの両SBは足が速かったから俺たちはSHに足の速い選手を置いたんだ。でもこういうのは戦術ではない』


僕:『日本だとなかなか戦術を教えるということをしないんだ』
ルベン:『俺もクリニックに来た日本人や中国人を見てきたけど、彼らはサッカーを知らない』
ルベン:『でも昔ある日本のチームが来たけど、そのチームはすごくよかった。サッカーだったんだ』
僕:『でも技術がなければ戦術は表現できないと思うんだけど』
ルベン:『その通り』
僕:『要するにサッカーにおいての基本的な技術と戦術のベースはInfantil (U-14)までに落とし込んで、そこから上のカテゴリーに進むにつれてより複雑な戦術を表現できる準備をしてるわけね』
ルベン:『そういうこと』


◎フィジカル

僕:『こないだ聞いたんだけどInfantil (U-14)までは体幹トレーニングとかやらせてないんでしょ?』
ルベン:『そうだよ。動きの中で体幹を意識させたりジャンプとか動作の基本を教えるように言っているんだ』
僕:『なんで?』
ルベン:『まだ筋力をつける段階の年代じゃない。それよりもコーディネーションとか自分の体を自分で動かせるようになることが大事なんだ』
僕:『だからInfantil B(U-13)の練習では毎回のトレーニングの最初にコーディネーションを入れてるんだね』
ルベン:『そういうこと』
僕:『Cadete (U-16)のトレーニングでも重りはいつも使わないよね?』
ルベン:『この年代になったら重りを使い始めていいと俺は思ってる。でもラージョのジムを使えるのはJuvenil (U-17-U-19)になってからなんだ』


◎サッカー選手としての基礎

ラージョの選手たちはU-14までに

サッカー選手としての“技術“ “戦術“ “フィジカル“の3つの要素の基礎を叩き込まれてる。

もし足りてない選手がいればその子はもうラージョにはいないだろう。

日本サッカーが見なきゃいけないのは

『Jリーグ』でもなければ『ラ・リーガ』『ブンデス』『プレミア』『セリエA』でもない。

世界との差はU-14から開き始めてる。


◎U-16

では僕のいるU-16の選手たちはどれくらいの戦術を求められているのか。

レアル戦に向けて準備したものを元に紹介していきます。


◎守備

守備を3つのフェーズに分けて考えていきます。

【ハイプレス】

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目的:ロングボールを蹴らせること

トップ下の選手が片方のCBを捕まえて2vs2を作る。

もし相手がビルドアップをしてきたとしても2vs2は変えない。

つまりチャレンジ&カバーの関係で

相手のアンカーの選手を2人でケアするのではなくそれぞれCBを捕まえる。


【中盤でのブロック】

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目的:相手を前進させない

相手のCBとGKのパス交換は問題ない。

好きにやらせていい。

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FWへの要求:時間をかけさせること プレスの方向づけをすること

相手の左CBが右利きだから彼がボールを持った時に彼の後ろからプレスをかける。

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SHへの要求:絶対にボールを奪いに行くな ボールを下げさせたら勝ちだ

ルベン:『1stディフェンダーでボールを奪うのはほぼ不可能。ましてはレアルの選手たちに1人でボールを奪いに行って奪えるほど簡単じゃない。時が来るまで絶対にボールは奪いに行くな』


【リトリート】

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目的:ゴールを守ること

絶対にCBの前に11人がいること。

コンパクトにして外回しに誘導すること。

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相手のSBとSHに対して

自分たちのSB+SH+ボランチの3人で必ず数的優位の3vs2を作る。

“その時にトップ下の選手がボランチのスペースを埋める“

“片方のボランチは半分より絞らない“

とにかくレアルの両SHが速いので逆サイドでも

同じように3vs2を作るためにもボランチは絞りすぎない。

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とにかく大事なのはゴールを守ること。

最後に守るのはゴール。

クロスに対してきちんとゾーンの埋めること。


守備はこの3つのフェーズに分けてどのように戦うかを確認。


◎攻撃

ミーティングで確認したことはボールの前進の仕方。

ビルドアップです。

【ゴールキックからのビルドアップ】

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ゴールキックからボールを前進させる時は

“1-4-2-3-1“から“1-3-5-2“に可変します。

両SBは高い位置へ→ボランチが落ちる→トップ下がボランチのスペースに落ちる

→右SHがトップ下に→左SHとFWで2トップに。

*2トップで相手のCBを固定させて中央で数的優位を作りながら

ボールを前進させようということです。


【プレー中に起こるビルドアップ】

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形は1-3-5-2で同じ。

左SB+CBで後ろの3枚を形成。

それに応じてそれぞれが図のような形でポジションを取る。

目的も同じで中盤で数的優位を作りながら

ボールを前進させていこうということです。


◎トランジッション 切り替え

【守から攻】

1-4-2-3-1の状態でボールを奪った時は

その形のままカウンターアタックを仕掛けること。

1-3-5-2には変えてカウンターはしない。

高い位置を取る両SBの裏のスペースを起点にすること。


【攻から守】

相手陣地で失った場合はそのままプレスをかけて素早くボールを回収すること。

自陣で失った場合はまず守備ブロックを素早く形成すること。

前線の5枚で攻めきれる能力はあるから

後ろの5枚は常にカウンターをケアしながら攻撃参加していくこと。


U-16の選手たちがレアル戦に向けて要求された戦術はこんな感じです。

実際に試合後に僕が分析した動画を見て

どれだけチームとして表現できているのか確認してみてください。



◎スペインの本当の強さは育成にある

僕は日本代表とスペイン代表の差は“育成“にあると思う。

日本代表を変えようと思っても“育成“が変わらなければ難しい。

今こそ長い目で見て“育成“に力を注ぐべき。


◎チーム数が圧倒的に違う

スペインと日本では圧倒的に『チーム数』が違います。

◎Aficionado (大人のカテゴリー)

プリメーラ・ディビシオン(1部)

セグンダ・ディビシオンA(2部)

LFPによって組織される全国リーグ。

セグンダ・ディビシオンB(3部相当)

テルセーラ・ディビシオン(4部相当)

スペインサッカー連盟(RFEF)によって組織される地域別リーグ。

ここまでのカテゴリーで400チーム以上。

それに加えて

5部以下のリーグは19地域のサッカー協会によって

組織される地域別リーグがあります。


◎ユース (Juvenil )

1部 デビシオン・デ・オノール(日本の場合 プレミアリーグ)

2部 ナショナル

3部 アウトノミカ

4部 プレフェレンテ

5部 プリメーラ・フベニール

6部 セグンダ・フベニール

* 1部 デビシオン・デ・オノールだけでも7グループあります

以下の年代も同様にカテゴリー分けされています。

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スペインサッカーの特徴の一つに

1つのクラブがジュニアからトップチームまでのカテゴリーを持っています。

要するにトップチームの数だけ育成チームがあるということです。


◎リーグ戦文化

日本は“トーナメント文化“でスペインは“リーグ戦文化“です。

この違いが何を生むかというと“公式戦の数“です。

スペインではジュニア年代でも毎年30試合近くのリーグ戦が毎週末にあります。

育成年代において最大の成長の場は“公式戦“です。

その場数や経験の差はかなりあると思います。


◎全員が競争の中にいる

選手たちも試合に出場するためにはチーム内の競争に勝たなくてはいけません。

毎週末に試合があるということは毎日の練習が勝負になるということです。

そして監督も毎試合が勝負です。

結果がでなければクビになります。

『チーム』『選手』『監督』

それぞれの立場で毎日激しい競争の中でサッカーをしています。


◎カンテラの選手たち

カンテラ(下部組織)と呼ばれるチームに所属している選手たちの競争力は高いです。

ラージョもその一つですが、選手たちは毎年契約更新があり、

来シーズンもこのクラブに居れるかは結果が全てです。


これはルベンから聞いた話です。

『街クラブの子たちは親が月謝を払ってプレーしてる。ただカンテラの子たちはチームに1円も払ってないチームがほとんど。ユニフォームからチームの用品全てが支給される。だから例え自分の息子が試合に出れなくても親は文句は言ってこない』

『レアルのようなチームは世界からエリートが集まってくる。毎週のようにトライアウトに世界各国から来る。レアルが強い理由は最も競争力が高いチームだから』


◎土台の大きさが違う

スペインサッカーと日本サッカーの違いは

”チーム数” ”選手数” ”試合数”

要するに“土台の大きさ“にあると思います。

でも多くの人は三角形の頂点しか見ていないかもしれません。

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底辺✖️高さ➗2


スペインサッカーの方が『土台(底辺)』が大きので頂点の面積が日本よりも大きくなります。

もちろん日本のチームよりも弱いチームや日本人よりもレベルの低いスペイン人選手はいます。

でも土台を作る彼らなしではこのピラミットは成立しないのです。

ここがスペインサッカーと日本サッカーの差だと思います。


◎育成が変わらなければ何も変わらない

“土台(底辺)の面積“を大きくすることが

日本サッカーが成長するためには重要だと思います。

『土台』とは『育成』


先ほどの三角形の写真を見て分かる通り

頂点の面積よりも差よりも“土台(底辺)“の差の方が大きいのがわかると思います。

『育成が変わらなければ日本サッカーは変わらない』


◎選手が自分で考えるということ

僕が2019年夏に母校を指導した時に意識したこと。

“考え方を教えること“

僕は口酸っぱく『スペース』という言葉を繰り返し選手に伝えてました。

“サッカーとはスペース=時間だ!“

“どうやってスペースを作り、誰がスペースを使うか“

ある試合で僕の考えが選手に伝わったなと感じる瞬間がありました。


◎ダブルボランチはボールを引き出しづらい

“スペース“が関係しています。

【アンカー+インテリオール】

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アンカーの両脇には“スペース“が存在しています。

【ダブルボランチ】

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アンカーの両脇にあった“スペース“は最初から埋められてしまいます。


◎頻繁に起きた不具合

“ボランチの選手が前を向けない“

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CBからボールを受けようとしても、SBからボールを受けようとしても前を向くことが難しい。

理由は“スペース“に既に選手が居るから。

“スペース”って一瞬でなくなってしまうんです。

だからこそ”スペースに現れる”必要があるんです。


◎大事なのは考え方を教えること

僕はハーフタイムに困ってるボランチの選手を捕まえて

“どうやってスペースを作るのか“1つアイディアを提案しました。

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『CBとSBの間で受けてみたら? そしたら体の向きも前向けるよね』

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『仮に自分にマーク付いてきたらスペースが作れるよね。縦パスに対して3人目でボールを受けても前向きでプレーできるよね』


◎選手が自分で考えるということ

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ここで後半にボランチの選手が選んだプレーは

“CBの間に落ちて3枚でビルドアップしながら自分のいたスペースを空ける SBに入った瞬間に自分の空けたスペースを使って前向きでボールを受ける“

これが選手が自分で考えてプレーするということだと思います。


“自分たちで考えなさい“

と指導者が言ったら終わりです。

指導者は“サッカーの見方 考え方“を教えられないといけない。

今回僕が選手に教えたことは

“スペース=時間“

“どうやってスペースを作るのか“

“誰がそのスペースを使うのか“

それを伝えた上で“あとはピッチ上で自分で観て判断しなさい“と。

指導者がサッカーの考え方を教えてあげられなければ選手は自分で考えるようにはならない。

解き方の知らない計算問題が解けないのと同じです。


◎なぜスペイン人は自分でサッカーを考えることができるのか

『スペイン人の選手は自分の考えをしっかり持っているイメージがありますが、スペインの育成で大切にしてることはありますか?』

という質問を頂いたことがあります。

答えは明白で小さい頃からサッカーの考え方や見方を教わっているからです。

問題の解き方を知ってるからこそ、自分で問題を解くことができるわけです。


◎できるだけ早い年代からサッカーを教えること

僕は日本のジュニア年代における技術との向き合い方は素晴らしいと思ってます。

スペインの同年代の子と比べても遜色ない技術を持ってる子がたくさんいると思います。

だからこそサッカーを教えてあげること。

サッカーってこういうスポーツだよって。

スペース=時間ってこういうことだよって。

幅と深さってこういう目的があるんだよって。

この本はそのために役に立ってもらえればとても嬉しいです。


◎僕の分析の仕方

ここで最後の余談です。

アナリストとして僕の試合の分析の仕方を紹介します。

大きく分けて8項目あります。

僕が実際にヘタフェU-16の分析映像の解説も踏まえて進めていきます。



⓵システムの確認

“基本システム“ “攻撃時のシステム“ “守備時のシステム“

スペースの共有の話でもありましたが

システムを知ることで生まれやすいスペースを把握できます。


◎ヘタフェU−16

基本システム 4−1−4−1   
攻撃時のシステム 4-3-3  
守備時のシステム 4-1-4-1



⓶攻撃

【ビルドアップ】

・ゴールキックからのビルドアップ

・プレー中に起きるビルドアップ

“どこにどうスペースを作り誰がそのスペースを使うのか“


◎ヘタフェU-16

⓵1−4−1−2−3のままビルドアップ
⓶右SBが中に絞り中央で数的優位を作る 外にスペースを作る
⓷アンカーが落ちて後ろを3枚にする
⓸キーパーからSBへ直接のロングボール


【ファイナルサード】

・フィニッシュの形やパターン。


◎ヘタフェU−16

FWの9番の背後への動きに対してのコンビネーション



⓷守備

【ハイプレスのかけ方】

・相手のゴールキックに対してどのように守るのか

→どこにスペースが生まれやすいのか


◎ヘタフェU-16

⓵CB2枚に対して1トップとどちらかのインサイドハーフが出て2vs2を作る
⓶アンカーに対してはもう一人のインサイドハーフが捕まえる

→アンカーの両脇にスペースが生まれやすい



【ブロックの作り方】

・どのようにプレスをかけるのか

・どこからプレスがかかるのか

→どこにスペースが生まれやすいのか


◎ヘタフェU-16

⓵CBがボールを持った時はインサイドハーフがプレスに出る
⓶サイドが中に絞り外側に誘導する

→アンカーの両脇のスペースに斜めにパスが入りやすい


⓸トランジッション 守→攻

・カウンターの起点になる場所(スペース)選手の共有


◎ヘタフェU-16

⓵9番のFWがSB裏のスペースに走って起点になる


⓹トランジッション 攻→守

・失った瞬間にどこにスペースがあるのか


◎ヘタフェU-16

SB裏のスペース 特に右SB


⓺セットプレー

・コーナー オフェンス

→キッカーの蹴る前の動き(手をあげるなど)+合わせる選手の動き(ブロックするなど)

ターゲットになる選手


・コーナー ディフェンス

→ゾーンなのかマンツーマンなのか


・サイドからのフリーキックも攻守同じ


◎ヘタフェU-16

コーナー:オフェンス 片手だけあげる 両手あげる ブロックあり
コーナー:ディフェンス ゾーン

※サイドからのフリーキックも同じ



⓻個人の選手のストロングポイントとウィークポイント

・チームの中で誰が要注意なのか

・チームの中でウィークポイントとなる選手


◎ヘタフェU-16

ストロングポイント:FWの9番 常に攻撃の起点であり、要注意選手
ウィークポイント:DFの4番 ビルドアップに難あり ミスが多い


⓼交代選手によってチームが変化するのか

・システムの変化や流れの変化


◎ヘタフェU-16

途中から背の高いFWが入る
SBに変えてウィングの選手が入り3バックになりサイドから背の高いFW目掛けてクロスが多くなる


大きくこの8つの項目に分けて分析してます。

僕の分析の基準となるのは全て“スペース“です。



未来編

最後は未来編です。

これからのサッカーはどうなっていくのか

どうなっていくべきなのか。

僕の意見を話したいと思います。

そして最後に少しだけ僕の未来についてもお話しします。


◎言語化とは

現代サッカーを説明するときに頻繁に出てくる言葉として

“5レーン理論“ “ハーフスペース“ “偽〜“という言葉があります。

スペイン語から日本に入ってきた言葉だと

“コントロールオリエンタード“ “コンドゥクシオン“など。

僕が日本の友達から教えてもらった言葉でいうと

“ドライブ“ “ポケット“などがあります。

様々なプレーが言語化によって誰もが理解できる共通言語になっている。


◎海外サッカーの用語を言語化する難しさ

僕がスペイン語のサッカー用語を日本語に訳すことは“言語化ではなく翻訳“です。

そして一番難しいのは日本のサッカー用語にない言葉を“言語化“すること。

代表的な例だと

“コベルトゥーラとペルムータの違い“

日本語の場合どちらも“カバー“という表現になってしまうが

スペイン語では2つの言葉でカバーの種類を“言語化“している。

海外のサッカー用語を“言語化“する難しさはここにある。


◎言語化が終わった時日本はどこにいるのか

“スペインサッカー=華麗なパスサッカー“というイメージがあると思う。

スペイン代表やバルセロナのようなサッカー。

ただこれは大きな間違い。


これは僕とルベンとの車の中での会話です。

僕:『サッカー選手で一番大事な要素は何?』
ルベン:『闘える選手だ。闘える選手はそれがたとえどんなカテゴリーでプレーしていたとしても、フットボーラーだ』


スペインで評価される選手は

競り合いで体ぶつけられる選手だとか

五分五分のボールに突っ込んでマイボールにできる選手だとか

ファウルでプレーを止められる選手だとか

“闘える選手“ “勝負にこだわれる選手“のように僕は感じています。


多くの人が見ているバルセロナやレアルマドリードの選手たちの華麗なプレーは

“闘える選手“が集まった上でのテクニックであり戦術です。

なので日本が“言語化“を終わらせて

世界のサッカーの現象を100%真似っこができたとしても

僕はまだ世界には追いつけないと思ってます。


◎言語化の落とし穴

言語化とは誰もが理解している共通言語です。

誰もが理解できてるものではない限りそれは言語化とは呼びません。


ある方に“どのように選手に伝えるか“という質問を受けた時の話です。

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その方はチームとして“ASSIST ZONE“と呼ばれる場所を“青“という言葉を使ってチームとして言語化をしているということでした。

そこで質問としては

“青取れ“ということを選手に言い過ぎて、ゴール前のペナルティアークでボールを受けた選手がシュートではなくそこから再び青ゾーンにパスを出してしまった。ゴール前なんだからシュートを打てって言ったんだけど…。

僕の解答は

“青取れ“という指示の目的が青ゾーンにボールを運ぶことになってしまっている以上、選手たちは青ゾーンにボールを運ぼうとするのは当たり前だよね。

“ハーフスペース“ “ポケット“などの言葉も伝え方を間違えると

このような現象が絶対に起こってしまう気がします。


その後に僕は逆に質問をしました。

なんで青ゾーンにボールを運ぶ必要があるの?

彼はこう答えてくれました。

味方のウィングがボールを持って相手SBがプレッシャーに行くと相手CBとSBの距離が広がる。その時にインサイドハーフがその間から裏に抜けるとチャンスになりやすい


◎選手は正解を求めてない

指導者をしていて

“なんでこんなことができないの?“ “なんでこれが分からないの?“って思ったことありませんか?

それって自分の中の“正解“を選手に押し付けてるだけなのかもしれません。

でも選手は“なんでそんなことできるの?“ “なんでそうなるの?“って思ってるはずです。

その時に“正解“を言うことに意味があるのかって話です。

選手が知りたいのは“正解“ではなく“なぜか“です。

“なぜその正解に辿り着くのかというプロセス“です。


◎僕が送ったアドバイス

なんでその言葉をそのまま選手に伝えないの?今の説明の方が分かりやすと思うよ。

言語化の落とし穴ってここです。

なんでもかんでも言語化すればいいわけではありません。

“ASSIST ZONE“だろうが“ハーフスペース“だろうが“ポケット“だろうがどうでもよくて

“なんでそうなるかという理由“を説明をしてあげないことには言語化されているとは言えない。

伝えるべきことを短く横文字にすることよりも

伝えるべきことをちゃんと説明して理解させることの方が大切です。


◎言語化最大の失敗

言語化の失敗の最たる例がハリルホジッチが言った“デュエル“だと思ってます。

僕の推測ですが

“デュエル“という言葉を使う前にその意味をハリルホジッチは説明してたはずです。

だけど僕たち日本人は

“デュエル=日本語に訳すと決闘→球際の強さ“

と勝手に自分たちで意味を決めてしまったが故に大きな誤解を生んでしまった。

“縦に速いサッカー→カウンター→ロングボール“も同じことかもしれない。

やっぱり言葉って勝手に一人歩きしちゃうからしっかりと伝えることを伝えないといけないと思います。


◎言語化の先にある未来

言語化の先にある未来は『文化』

例えば

Jリーグとラ・リーガの試合ではスタジアムが盛り上がるプレーが違うのような肌感覚の違い。

僕の言語化能力の問題もありながら、言葉では表現できない領域っていうのがサッカーにはある。

僕が言いたいのはスペインサッカーの文化を真似するということではなく

世界のサッカーの言語化が終わった後には

日本サッカーの文化を作っていく必要があるということ。

真似っこでは世界に追いついた頃には世界はもっと先に進んでしまっている。

“自分たちで作り出す“という領域に行かないと

世界に追いついて追い越すというところまでたどり着くのは厳しい。

『言語化の先にある未来は文化』

これが僕の結論です。


◎正解に溢れた現代にすべきこと

正解に溢れた現代に今の僕が思うこと。


“正解を探す作業“はもう終わった。

これからは

“正解を自分で解き直す作業“が大事になってくる。


“正解までのプロセス“というよりも“正解から自分でプロセスを作る“。


今こそ自分の頭で考えないといけなくなりました。


◎僕の未来

これからの僕は何をするのか。

スペインで指導者ライセンスの勉強をしながら

もう少しスペインでサッカーの勉強をしようと思ってます。

そして僕はスペインで学んだことを日本の子供たちに還元していきたいです。

やっぱり“育成“ですね。

将来的にJリーグの監督になりたいとかヨーロッパで監督になりたいという思いは今の僕にはないです。

育成年代の指導者の方が興味があります。

日本から世界で活躍する選手を育てること以上に

サッカーが好きな子で溢れる日本にしたいです。

『サッカーってめちゃくちゃ面白いんだよ』ってことを伝えること。

頑張りたいと思います。



【あとがき】

2019年5月29日 22歳の誕生日。

何か新しいチャレンジをしたいということでSNSを通じて自分のサッカー観を発信することを決めてからちょうど一年。

22歳の一年間を振り返ると

ぼんやりとしていた指導者という姿がよりはっきりと見えるようになった一年だったと思います。

サッカーを考えるときも“プレーヤー目線“だけでなく“指導者目線“で考えることが多くなった。

僕自身にとってまたこの一年でサッカーというスポーツの楽しさが増しました。

小学2年生から始めたサッカーも今年で15年目。

同世代は今年の春から社会人になりましたが、僕は今も昔と変わらず“サッカー小僧“のままです。

なので、どこかのグランドでお会いできることを楽しみにしています。


今回は”指導者ライセンスを持たない僕の指導法“ということでサッカーの考え方や見方をまとめました。

少しでもサッカーを楽しむヒントになれば嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。


ではまたー。

                       




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